僕の、しあわせ辺境暮らし

  *  ゆるゆ

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あゆくよ!




 きらきらの緑のひかりに、ぱちぱち拍手しちゃう僕の隣で、ムニャが微笑む。

「しまおうね」

 僕の手から、やさしく緑にきらめく熱さまし草を取ってくれた。
 ムニャの指がひらめいて、ムニャの影に薬草が消えてゆく。

「むーちゃん、しゅごぃ!」

「荷物が持てるのは、いいことかもしれないね」

 くすぐったそうに笑ってくれた。



 倒れた大樹の命をもらって芽吹いたのだろう、熱さまし草が、あちこちに生えている。

 ひと株から、ひと房だけ。
 お祈りしてから、そうっと摘む。

 植物は、傷つけられると、びっくりして、持てる力を尽くして、がんばって生えてくれる。

 もっといっぱい生えて、傷つけられても、生きてゆけるように。

 つよく、つよく、たくましく。

 香り高く、薬効も高く。
 どんどん成長してくれる。


 それは、きっと、人間もいっしょだ。

 傷つけられたから、僕は、痛みを知ってる。
 くるしみを、知ってる。


 だから、むーちゃんに、とびきり、やさしくしたい。


 抱っこして欲しかったから。

 むーちゃんを、抱きしめてあげたい。


 ほめて欲しかったから。

 むーちゃんを、ほめてあげたい。


 なでなでして欲しかったから。

 むーちゃんを、なでなでしてあげたい。


 僕がしてほしかったこと、ぜんぶ、ぜんぶ、むーちゃんに、あげたい。



「むーちゃん、ありがとぅ」

 ちいさな頭をなでなでしたら、ムニャが、こそばゆそうに笑ってくれる。

「ぽて、すごい!」

「むーちゃんが、しゅごぃ、の!」

 ふたりで抱っこして、ふたりで笑う。


 今まで想像するしかなかった、しあわせに、つつまれる。



「ちょこっとだけ、ごめんなしゃい。ありがとぅね」

 僕が傷つけたことが、もっと元気になる弾みとなるように、祈りながら、ちいさな指をのばす。

 きらきら輝く、熱さまし草に、うっとりするようにムニャが微笑む。

「ぽての指、緑のひかりね」

 首をかしげた僕は、自分の手を見つめた。

「……? ここの、くさ、ぴかぴか、なのかも!」

「すごいね!」

「うん! みんな、ありがとぅ!」

 ムニャと一緒に、手をふった。




「じゃあ街で、お買い物だね!」

 元気なムニャが抱っこしてくれようとするのに、首をふる。

「くるとき、むーちゃん、あゆいて、くれた、から、みち、できた!
 ぼく、あゆく、よ!」

「つまんない」

 唇をとがらせる、むーちゃんは、今日もとっても可愛いです。


「ぼく、ぼくね、むーちゃんと、おてて、つないで、あゆくの、だいしゅき」

 もじもじムニャを見あげたら、笑ってくれる。


「僕も、ぽてと手をつないで歩くの、だいすき」

 ぎゅう。

 僕の手をにぎってくれる。



 ふたりで手をつないで、ふたりで歩く。

 昨日ムニャがつくってくれた道が、細く、細く、けれど確かに、ちゃあんと残って、僕とムニャを導いてくれた。


 さくさく、雪を踏む足が重たくなって、座りこみたくなるのを、ふるふる首をふって、がまんする。

 ゆっくり、ゆっくり、僕のちいさな足にあわせて歩いてくれるムニャが微笑んでくれたら、どこまでもゆける気がする。


 ナヒカの街の門が見えたら、へたりこみそうになって、笑った。

「がんばったね、ぽて」

 ムニャが頭をなでてくれる。

「むーちゃんも! ぼく、あし、おそぃ、のに、ありがとぅ」

 手をのばしたら、ムニャが、かがんでくれる。
 ちいさな頭をなでなでして、ふわふわ熱い頬で笑ったら、高いところから笑顔が降ってきた。


「おお、今日も来たのか」

 顔なじみになった衛士さんが、声をかけてくれる。

「おはよ、ござましゅ」
「おはようございます」

 ムニャと一緒にあいさつしたら、槍をかかげて笑ってくれた。

「もうすぐ昼の鐘だよ」

「いらっしゃい」

「ようこそ、ナヒカへ!」

 きらめく槍の向こう、そびえる街壁の向こうに、にぎやかな街が広がった。







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