86 / 88
しゃいこー?
チタの講義は、とても分かりやすかった。
生徒が僕とムニャしかいないからかもしれないけれど、僕が、ちょっと『わかりゃなぃかも』首をかしげると、すぐに分かりやすく言い直してくれる。
教えてくれたのは、人体のこと、主な病気の症状と薬草のことだけじゃない。
薬草をどうやって乾燥させて薬にするのか。
薬草ごとに、使ってもいい上限の重量が決められていて、それを決して越えないこと。
単体では薬になっても、組みあわさると毒になる薬草があるので、細心の注意を払うこと。
それぞれの薬草の量は規定内でも、あわせた量が多くなると、毒になってしまうので、薬の総重量は規定を決して越えないこと。
薬草の調合の仕方、ちいさな布に包む方法、薬草の量り方、天秤の使い方。
「ふにゃ!」
頭が燃えちゃう!
あわあわする僕の隣で、薄い木の板に、ていねいに文字を書きつけていたムニャは微笑んだ。
「言われたことは一応ぜんぶ覚えたと思うけれど、書いておいたから、いつでも見直せるよ」
「むーちゃん、いっかぃ、きぃたら、おぼえちゃうの?」
「だいたいは」
はにかむようにムニャが笑う。
「しゅごぃ!」
僕と一緒に講士のチタまで拍手してくれた。
「座学は今日でお終いです。明日は実践してみましょう。薬をつくってみましょうね」
「あい!」
元気にお返事した僕を、チタとムニャの手がなでなでしてくれた。
薬士になる。
決めたことも、なりたいと思ったことも、嘘じゃない。
でも、めちゃくちゃ、お勉強だよ……!
「た、たぃへん……!」
……ほんとに、僕にできるかな。
心配になっちゃうくらい、覚えることでいっぱいだよ……!
「……ふにゃ」
一生懸命書いた、薄い木の板を見直すたびに『こんなに覚えられるのかな……?』くらくらしちゃう……!
へしゃげそうな僕の頭を、ムニャの手がやさしくなでてくれる。
「僕は細かい使用量を覚えたり、効能を覚えたり、こういうのは得意みたい」
頭が燃えちゃった僕を抱っこして、ムニャが微笑む。
「僕が、ぽての辞書になる。
わからないことがあったら、いつでも聞いてもらえるように、がんばるよ」
「だ、だめ……! ぼくも、がんばゆ……!」
ちっちゃな手をにぎる僕の顔をのぞきこんだムニャが、ささやいた。
「僕は、細かいことが苦手なんだ。薬草を天秤で量ったり、薬をちいさな布に包んだり、そういうのは向いていない。
でも、ぽては、とっても上手でしょう?」
僕は首をかしげる。
「そ、かな?」
「とっても。僕は、覚えるのが得意。ぽては、手先が器用。
得意なことで活躍して、苦手なところを補えばいいんだよ」
得意なところで、がんばる。
苦手なところは、たすけてもらう。
「……いぃの……?」
「もちろん!」
ムニャが、笑ってくれる。
「ぽてと、僕は、得意なところと苦手なところが反対だなんて、最高のふたりだよ!」
「しゃぃこー!」
燃えるほっぺで飛びあがる僕を、抱っこしてくれるムニャの頬が、ふうわり紅い。
「ふたりで、補いあって、最高のふたりになろう!」
「あい!」
ふたりで。
それは、ひとりきりで、がんばるより。
ずっと、ずっと、どきどきするのです。
────────────────
ずっと読んでくださる方、お気に入りや、いいねや、エールで応援してくださる方、いつもほんとうにありがとうございます!
自作の絵を動かすならいいのかなと思って表紙にした絵で動画をつくりました!(笑)
ちっちゃい感じなら、きがるに描けるので、あまりにお気に入りが減ったりポイントが激減しなければ、ちょこちょこ表紙をお描きできるかもしれません?
お話も楽しんでいただけるといいなと思って、ぽて と むーちゃんと一緒に、がんばりますー!
あなたにおすすめの小説
辺境伯というのを御存知だろうか?
希臘楽園
ファンタジー
婚約破棄に失敗して辺境に左遷された王太子の更生を待つ、無口・抜刀派の辺境伯令嬢レイラと、苦笑いしながら剣を止め続ける補佐役・伯爵令嬢ロザーナ。公侯爵令嬢たちも加わり、左遷王太子の近況をネタに笑い転げる、王宮ゆるコメディ。AIに書かせてみた第15弾!
お兄様の指輪が壊れたら、溺愛が始まりまして
みこと。
恋愛
お兄様は女王陛下からいただいた指輪を、ずっと大切にしている。
きっと苦しい片恋をなさっているお兄様。
私はただ、お兄様の家に引き取られただけの存在。血の繋がってない妹。
だから、早々に屋敷を出なくては。私がお兄様の恋路を邪魔するわけにはいかないの。私の想いは、ずっと秘めて生きていく──。
なのに、ある日、お兄様の指輪が壊れて?
全7話、ご都合主義のハピエンです! 楽しんでいただけると嬉しいです!
※「小説家になろう」様にも掲載しています。
巻き込まれ召喚された賢者は追放メンツでパーティー組んで旅をする。
彩世幻夜
ファンタジー
2019年ファンタジー小説大賞 190位!
読者の皆様、ありがとうございました!
婚約破棄され家から追放された悪役令嬢が実は優秀な槍斧使いだったり。
実力不足と勇者パーティーを追放された魔物使いだったり。
鑑定で無職判定され村を追放された村人の少年が優秀な剣士だったり。
巻き込まれ召喚され捨てられたヒカルはそんな追放メンツとひょんな事からパーティー組み、チート街道まっしぐら。まずはお約束通りざまあを目指しましょう!
※4/30(火) 本編完結。
※6/7(金) 外伝完結。
※9/1(日)番外編 完結
小説大賞参加中
悪役令嬢に転生したので、ゲームを無視して自由に生きる。私にしか使えない植物を操る魔法で、食べ物の心配は無いのでスローライフを満喫します。
向原 行人
ファンタジー
死にかけた拍子に前世の記憶が蘇り……どハマりしていた恋愛ゲーム『ときめきメイト』の世界に居ると気付く。
それだけならまだしも、私の名前がルーシーって、思いっきり悪役令嬢じゃない!
しかもルーシーは魔法学園卒業後に、誰とも結ばれる事なく、辺境に飛ばされて孤独な上に苦労する事が分かっている。
……あ、だったら、辺境に飛ばされた後、苦労せずに生きていけるスキルを学園に居る内に習得しておけば良いじゃない。
魔法学園で起こる恋愛イベントを全て無視して、生きていく為のスキルを習得して……と思ったら、いきなりゲームに無かった魔法が使えるようになってしまった。
木から木へと瞬間移動出来るようになったので、学園に通いながら、辺境に飛ばされた後のスローライフの練習をしていたんだけど……自由なスローライフが楽し過ぎるっ!
※第○話:主人公視点
挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点
となります。
『「女は黙って従え」と婚約破棄されたので、実家の軍隊を率いて王都を包囲しますわ』
放浪人
恋愛
「戦場の銀薔薇」の異名を持つ天才的な軍略家、ヴィクトリア・フォン・ローゼンベルク公爵令嬢。彼女は、王国最強と謳われる東部辺境領主の一人娘として、故郷と民を深く愛していた。
しかし、政略結婚の婚約者である第一王子アルフォンスは、彼女の才能と気高さを妬み、夜会の席で公然と侮辱する。
「女は黙って従え」
その一言と共に婚約指輪を奪われたヴィクトリアは、もはや偽りの淑女を演じることをやめた。彼女は、腐敗しきった王家と国を内側から変革するため、たった一人で戦うことを決意する。
故郷ローゼンベルクへと帰還したヴィクトリアは、父であるゲルハルト公爵と、彼女を女神と崇める領民たちの絶大な支持を得て、ついに反旗を翻した。その圧倒的なカリスマ性と軍略の才は、瞬く間に領地を一つの強固な軍事国家へと変貌させ、周りの辺境諸侯をも巻き込んでいく。
一方、王都では聡明な第二王子エリオットが、兄と宰相の暴走を憂い、水面下でヴィクトリアに協力する。二人の間には、国の未来を憂う同志としての固い絆が芽生え、やがてそれは淡い恋心へと変わっていく。
【完結】旦那様、どうぞ王女様とお幸せに!~転生妻は離婚してもふもふライフをエンジョイしようと思います~
魯恒凛
恋愛
地味で気弱なクラリスは夫とは結婚して二年経つのにいまだに触れられることもなく、会話もない。伯爵夫人とは思えないほど使用人たちにいびられ冷遇される日々。魔獣騎士として人気の高い夫と国民の妹として愛される王女の仲を引き裂いたとして、巷では悪女クラリスへの風当たりがきついのだ。
ある日前世の記憶が甦ったクラリスは悟る。若いクラリスにこんな状況はもったいない。白い結婚を理由に円満離婚をして、夫には王女と幸せになってもらおうと決意する。そして、離婚後は田舎でもふもふカフェを開こうと……!
そのためにこっそり仕事を始めたものの、ひょんなことから夫と友達に!?
「好きな相手とどうやったらうまくいくか教えてほしい」
初恋だった夫。胸が痛むけど、お互いの幸せのために王女との仲を応援することに。
でもなんだか様子がおかしくて……?
不器用で一途な夫と前世の記憶が甦ったサバサバ妻の、すれ違い両片思いのラブコメディ。
※5/19〜5/21 HOTランキング1位!たくさんの方にお読みいただきありがとうございます
※他サイトでも公開しています。
【無断転載・AI利用禁止 / No Unauthorized Use or AI Training】
本作品の無断転載・複製・AI学習利用を禁じます。
Unauthorized reproduction or use for AI training is strictly prohibited.
© 魯恒凛 / RoKourin
繋がれた絆はどこまでも
mahiro
BL
生存率の低いベイリー家。
そんな家に生まれたライトは、次期当主はお前であるのだと父親である国王は言った。
ただし、それは公表せず表では双子の弟であるメイソンが次期当主であるのだと公表するのだという。
当主交代となるそのとき、正式にライトが当主であるのだと公表するのだとか。
それまでは国を離れ、当主となるべく教育を受けてくるようにと指示をされ、国を出ることになったライト。
次期当主が発表される数週間前、ライトはお忍びで国を訪れ、屋敷を訪れた。
そこは昔と大きく異なり、明るく温かな空気が流れていた。
その事に疑問を抱きつつも中へ中へと突き進めば、メイソンと従者であるイザヤが突然抱き合ったのだ。
それを見たライトは、ある決意をし……?