僕の、しあわせ辺境暮らし

  *  ゆるゆ

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はじまり!




 むーちゃんに抱っこされて、とろける笑みのこぼれる僕に、チタも笑顔だ。

「たしかに、ふたりでひとりは、いいかもしれないね。ぽては、ちいさいから。患者さんが、ふざけてると勘違いして、激おこになったり、叫んだりしたら大変だ」

 真っ青になったムニャが、僕を守るように前に出てくれる。

「ぼ、ぼくも、むーちゃん、まもゆ!」

 ちいさな両手を広げる僕に、ムニャも、チタも、ふにゃふにゃしてる。かわいい。

「……こほん。えと、ムニャなら、その点は全く心配なさそうだね。きゃーきゃー言われそうだけれど」

 肩を揺らしてチタが笑う。

「……あの、頭衣をかぶっても、いいですか」

 ほっかむりみたいに、お顔をすっぽり覆う布を、仕立屋さんのゴナが、くっつけてくれたんだよ!

『おお、薬士になるんだな、すっげー!
 よっし、薬士っぽい感じに仕立ててやるよ!』

 胸を叩いてくれたゴナが、ムニャと僕の服に頭にかぶる布を縫ってくれた。

 かぶると、魔法使いムニャ!
 魔法使い、ぽて!

 おそろいなんだよ!

「えへへ。ぼくも、かぶゆの。おそろぃ……!」

 むーちゃんと手をつないで、笑ったら、チタが笑みくずれた。

 目深にかぶると、ムニャの凛々しくて、かっこいーお顔が見えなくなる。

「うーん、実習生は、なるべく顔を見せてって言われるんだけど──ちょっと待ってね」

 チタが薬士組合の受けつけの後ろにある扉を開ける。
 えらい人に相談に行ってくれたみたいだ。

 しばらくすると扉の向こうから、おひげのおじちゃんが顔を出して、ムニャのお顔と、ちっちゃい僕を確認して、うなずいた。

 戻ってきたチタが、笑ってくれる。

「かぶっていいって! かぶらないほうが、大変になりそうだから」

 にこにこ笑うチタと、扉の向こうのおじさんが、こくこくしてる。


 ほっかむりみたいな、頭衣をかぶった僕は、緊張でコチコチだ。
 はげますように、チタが僕のちいさな背を、やさしく、たたいた。

「じゃあ、深呼吸!
 間違っても、僕がいるから。
 初めてなんだから、間違えるのが、当たり前だよ。
 どんどん間違って、どんどん覚える気もちで、やってみよー!」

「あ、あい……!」

 ぷるぷるの手をにぎる。

 まだコチコチしちゃう僕の緊張をほぐすように、僕を抱っこしたムニャが、微笑んでくれた。



 チタが薬士組合の扉に

『薬士実習生による、薬の調合あり〼
 ゆっくり調合、薬士の監督あり。薬代、半額』

 かかげてくれる。

「おお!」

「今日はあるのか!」

「やった!」

 道行く人の歓声が聞こえた。


 おかねがないけれど、病気で苦しい人は、薬士実習生がやって来る日を心待ちにして、毎朝、薬士同盟の扉を確認に来ているのかもしれない。

 あんまり僕が緊張すると、むーちゃんも、どきどきしちゃうと思うから。
 コチコチを押しこめて、笑う。

「いっしょに、がんばろーね!」

 いつもより、ちょっと、ひんやりしている気がするムニャの手を、ぎゅっとにぎる。

 ムニャが僕の手を、ぎゅっと、にぎりかえしてくれる。


「いっしょなら、できる」

 夜の瞳をきらめかせて、笑ってくれた。








 ────────────────


 ずっと読んでくださって、ありがとうございます!
 いいねやエールやご感想で応援してくださる方、お忙しいなか、大切なお時間をつくって読んでくださる、あなたさまに、感謝の気もちでいっぱいです。

 新しいお話、はじめてみました!
 今度は明るいお話です!(笑)

 もちろん、ぽて と むーちゃんも完結を目指して更新するので、もしよかったら一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです。

 明日から、ぽて と むーちゃんの薬士見習い、でびゅーです!(笑)



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