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彼シャツは危険です
しおりを挟む主が天使すぎて、可愛すぎてつらい。
どんだけホワイトな職場なんだ──!
感激によろけた透夜は、思わず拝んでしまう主に
『違うんですよ、変態じゃないですよ、敬愛ですよ』
ささやくように膝をついて、微笑む。
「とーや、立っちして」
赤い頬で、恥ずかしそうに透夜の手を取って立たせてくれるロロァが、天使すぎる。
ロロァが毎日治癒魔法を使って透夜のお腹を回復させてくれるので、はみ出た内臓もだいぶ元気になってきたみたいだ。よかった。
おんぼろの邸内を探ってみたが、見事なまでに金目のものはなかった。
売れそうなのは、透夜の腹をブッ刺した燭台くらいだ。ムダに巨大でいかめしい。忌々しいから売り払おう。
ものすごく古臭い衣が積まれてあったのの中からロロァが着れそうなものを見つくろう。
白いシャツを着せたら、ワンピースみたいになって、めちゃくちゃかわいー。
彼シャツかよ。
思って、もだえた。
「ぐは──!」
突然仰け反って倒れてぴくぴくするだなんて、不審者どころか、変態全開だ──!
あばばばば!
やばいやばいやばい!
今世の俺は、スパダリなはず──!
変態とか違うから!
絶対、絶対ちがうから!!!
泣きそうになった。
「とーや?」
突然錯乱する従者に、ロロァが心配そうにしてくれる。
ここで不審じゃなく心配なところが、ロロァの天使なところだ。
「な、何でもありません、わがきみ」
キリっとしておいた。
せっかくロロァがぴかぴかの悪役令息あらため、ぴかぴか天使になったので、次の方針を決めておきたい。
ロロァの前に膝をついた透夜は、ロロァの藍の瞳をのぞきこむ。
「わがきみは、ご家族に未練はありますか」
「みれん?」
「お母上や、お父上、弟君を慕うお気持ちは、ありますか」
ロロァの瞳が、さまよう。
うつむいたロロァは、首を振った。
「……こわぃ」
ふるえる小さな肩を、抱きしめる。
「ロロァさまが、虐待する親を慕う子どもじゃなくて、よかった」
おでこをくっつけた透夜は、微笑む。
「では国を出ましょう、わがきみ」
「……え?」
きょとんとするロロァに、透夜は胸を張る。
「この国はBLゲームの世界です。強制力なんてものが働き、わがきみは危険に陥るかもしれません。
俺がいかにスパダリ(希望)とはいえ、ひとりでは限界があります。よって、最善の手段は、この家を、この国を捨てることです!」
『BLゲームマスターの意味なくね?』とか聞こえない!
『せっかく虐待の記録を残したんだから、王族に直訴してギビェ家の闇を暴けばストーリーが変わるんじゃ?』とかも聞こえない!
BLゲームマスターだからこそ言おう!
オンラインで転生ものを山ほど読んだからこそ言おう!
強制力を甘く見たら、しぬ。
ゲーム世界の悪役令息なんて、むかつく言動と行動で思う存分むかついてもらってから、派手なざまぁですっきりしていただきましょうの、お話のスパイス兼清涼剤だ。
お話を盛りあげるためには必要不可欠だが、主人公のためには必要性ゼロ。
しかもこのゲームでは、ロロァは必ず悲惨な死を迎える。
そんな国に、いられるかァア──!
というわけで、出奔です。
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