【完結】悪役令息の従者に転職しました

  *  ゆるゆ

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おまけのお話

おはよう




「トゥヤ、朝だよー!」

 ぽふ!

 タックルしてくる身体を寝ぼけたまぶたで透夜は抱きとめる。

「……おあよー、空」

 元気でよろしい。

 ……しかし寝たのはさっきなんだなー。
 隠密団の皆じゃなかったら、腹のうえに全体重かけて乗られたら吐くと思うんだなー。

「おはよー、トゥヤ!」

 空がうれしそうに赤い頬で笑うから、もごもご言いかけた呟きが、唇のなかでしゅわしゅわ消える。
 透夜のおなかのうえで空色の髪を揺らす空を、ロロァのちっちゃな手が押しのけた。


「とーや、僕におはようは?」

 拗ねたみたいなふくれた頬が、朝から尊いです、ロロァさま──!

 うっとりした透夜はとろけて笑う。


「おはようございます、わがきみ」

 当たり前みたいに、ふうわり腕をのばして抱きしめる。
 ふわふわ揺れるロロァの前髪が、透夜の頬をくすぐった。

 ちゅ

 おでこにくちびるを降らせたら、真っ赤な頬でロロァが笑ってくれる。


「えへへ」

 きゅう

 抱きついてくるロロァは、今日も天使です。




 ボロボロだった農家の倉庫は、皆の修繕の腕があがるたび、どんどん立派になってきたよ!

 隙間風がなくなってきた。
 めちゃくちゃうれしい。

 精霊さんたちのおかげで、かまどでは大きなお鍋がくつくつ煮えて、いい匂いを振りまいた。

 ロロァを腕にかかえて、空を背中にのっけたまま起きた透夜に、声が降る。

「トゥヤ殿、皆にお教えする要綱を作ってみましたのじゃ。目を通してくれますかの」
「トゥヤ、お鍋煮えた! ごはん!」
「魔法使いのおじちゃんが、きもちわるいってー!」
「帝都の貧民が、ご飯めぐんでほしいって!」
「トゥヤ、見張り交代してー、ごはんー!」
「町の巡回、誰が行く?」
「トゥヤ!」
「トゥヤー!」

 両手両足にくっついてきた皆をぶらさげて、透夜が笑う。

「俺はひとりなんだから、じゅんばん!」

「えー!」

 ふくれる皆も、天使だ。


「おお、山吹、腕をあげたな! なんか今日の美味い!」

 手を叩く透夜に、照れくさそうに山吹が胸を張る。

「えへへ、お店のおじちゃんがね、この香草使ったらいつもと違う味になっておいしいって教えてくれたの。ご飯にもお金使えるようになったから、ちょっと奮発してみた。おこらない?」

「まさか! いつも料理してくれてありがとな!」

「う、うん!」

 山吹の髪を揺らして、真っ赤な頬で笑ってくれる。天使だ。

「孤児とか、行くとこない魔法使いのおじちゃんとか、空から降ってきて帰るとこない闇衣のおじちゃんとかが皆一緒に暮らしてるってのが広まっててさ、なんかいっぱい来るんだよ、飯をくれって」

 眉をさげる空に、透夜はうーんと首を捻った。

「よし、ご飯隊をつくるぞ。隊長、山吹!」

「え、えぇ、ぼ、僕!? 隠密団でも弱くて、あんまり役に立てないのに……」

「何言ってんだ、山吹は一番料理上手いだろ。食事は士気に大いに関わる。山吹がしてるのは重要任務なんだぞ!」

 山吹の背をぽんぽんする透夜に、皆が頷く。

「トゥヤご飯もおいしかったけど、ヤマブキごはん、さいこー!」

 空が、紅蓮が、常葉が笑う。

「あ、ありがとう」

 真っ赤な山吹がとびきり可愛い。


「とーや、浮気、だめだから……!」

 きゅう

 抱きついてくれるロロァが、天使だ。






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