【完結】ずっと、だいすきです

  *  ゆるゆ

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はじめての

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「……僕、8歳のセバと同じ身長なんだね……」

 果てしなく落ち込みそうなエィラを、セバはあわてて励ました。

「きっとエィラも、まだまだ伸びると思うよ!」

「……そうだといいな……」

 微笑みが力ない。

「……ごめん、言ってないこと、ばかりで」

 うつむくセバに、エィラは首を振ってくれた。

「勝手に同い年だと思った僕こそごめんね。
 お相子で、謝るのはこれでお終い!」

 星の瞳で、笑ってくれる。

 やさしくて、明るくて、可愛くて、頭もいい。

 ゲォルグの隣に並ぶのは、こういう人なのかもしれない。……思うだけで、胸が痛い。

「セバ?」

 振りかえってくれるゲォルグに、微笑んだ。

「私はこちらで控えておりますので、何かございましたら、いつでもお呼びください」

 うやうやしく頭をさげる。

 帝立学院に通う学生である以前に、セバはゲォルグの従僕だ。
 従僕としてふさわしくなれるように帝立学院に通うのであって、従僕としての務めを疎かにするなど、ありえない。

 後方に下がろうとしたセバの腕を、ゲォルグが掴んだ。

「……隣でいい」

「…………え……?」

「ともに学ぶ、学生だから」

 ゲォルグの耳が、ほんのり赤い。

 掴んでくれた腕も、頬も、心も、熱くてあまい痛みに、しびれてく。



「じゃあ僕も、ゲオちゃんの隣ね」

 セバがゲォルグの右隣に、ノザが左隣に腰かける。

「僕もセバの隣、いいかな?」

「勿論」

 うなずいたセバは、エィラをほんのすこし見あげる。

「……俺と、仲良く、してくれる、の……?」

「もちろん! よろしくね、セバ。
 友達なんだから、年の差とか、なしだから。対等だよ!」

 肩を抱いて、笑ってくれた。

「……ともだち」

 はじめて、できた。

「ありがとう、エィラ」

 ふわふわ赤い頬で、エィラが笑う。

「末永くよろしくね、セバ」

「……それは伴侶のあいさつじゃないのか?」

 ノザが突っこんで、照れた頬でエィラは笑った。

「だって、伴侶は別れるかもですけれど、友達はずうっと続くといいなって。
 はじめまして、ノザ・ロァルドさま。エィラと申します」

 丁寧に頭をさげるエィラに、ノザは首を振る。

「同じ学生なんだから、気にするな。ゲオちゃんも、そうだよな?」

「ああ。……セバのよき友になってくれたら、うれしい」

 はにかむようにゲォルグが笑う。

「はい──!」

 真っ赤になったエィラが、とろけて笑った。



 ……喜ばしいことのはずなのに、胸が軋んだ。

 なんて、心が狭い。

 エィラが笑うたび、可愛く見えるたび、苦しくなってしまうだなんて。

 なんて、浅ましい。

 自分は、ゲォルグさまの従僕だ。
 ゲォルグさまの隣に立つ者ではない。

 わかっているのに、どうして心は、熱くしびれてゆくのだろう。


「やあ、そろっているかな」

 教諭が入ってくると、皆が姿勢を正した。

「帝立学院に入学、おめでとう。諸君は、最も才ある者としてドディア帝国に認められた。諸君の才を発揮すべく、我らは真剣に諸君と向きあう。諸君も、真摯に学んでほしい。ではこれより、授業を始める」

 壇上にあがった教諭の声を聞きながら、セバはそっとゲォルグを見あげる。


 ……あるじが隣にいるのに勉強なんて、できるのだろうか。

 落第なんて、ジェディス家の従僕としても、ゲォルグの従僕としても、絶対だめだ。

 引きしめる唇が、となりのゲォルグの香りに、ふにゃりとゆるむ。

 となりのゲォルグの気配に、教諭の言葉が遠くなる。



 あなたの隣で勉強なんて、とてもとても、無理そうです。






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