【完結】ずっと、だいすきです

  *  ゆるゆ

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やばい?

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 一日ゲォルグの隣で授業を聞いてみたセバが理解したのは、9割9分、ゲォルグのことしか考えられないということだった。

 メナの教えのとおり、ひとりがきゃーきゃーして、ひとりが頑張る、をしているのに『きゃーきゃー♡』が9割9分の脳の容量を持っていってしまう。

 しかし『あるじの隣では全く勉強ができないので、離れて座らせてください』なんて、口が裂けても言いたくない。

 もう二度とないかもしれない『あるじの隣に座る』機会を潰したくない。

 ゲォルグさまの従僕が、落第して退学するなんて、ありえない。

 何とかしようとしたセバが編みだしたのは、その日の講義を完全に頭に叩きこんでから聞き、1分の脳で教諭の言っていることを把握することだった。

「落第できないから、家のこと、あまり手伝えないかもしれない。本気でごめん」

 従僕仲間のソゾとコゴに頭をさげたら、笑ってくれた。

「そのつもりで、あるじは俺たちを雇ったんだろ」

「俺も馬のことしか見てないから気にするな!」

 仲間ができたみたいに、うれしげにソゾが肩を叩いてくれる。

「いやソゾは掃除くらいしてくれよ、頼むから!」

 コゴが泣いてる。



 セバが授業中、ゲォルグにぽーっとしてるのは、誰からも分かるらしい。

 ほとんど教諭を見ずに、ゲォルグを見ているからかもしれない。

 ゲォルグが、ほんのちょっと喉に手をやったり、咳払いをしたりすると

「ゲォルグさま、どうぞ」

 さっと水筒から水を汲んでお渡しする。

 ゲォルグが教諭の話を書きとめるのをじっと見ていて、紙が終わりそうになると

「どうぞ、ゲォルグさま」

 さっと差しだす。

 ちょっと暑いかなとか、空気が淀んでいるときには、さっと窓を開けにゆき、額に汗が滲んだら、さっと白布でお拭きし、上着を脱ぐのをお手伝いする。

 全く微塵も授業を聞いていないのが、誰の目にもバレバレだ。

「なんだあのちっちゃいの」

「従僕したいんなら、帝立学院に来るなよ」

「うざ」

 生徒たちに舌打ちされるだけじゃなかった。

「入学試験が首席だったからと言って、勉強しないとすぐに落ちるんだぞ! セバくん、今の議題について、きみの考えを述べてみたまえ!」

 ついに教諭にキレられました。
 さっと立ちあがったセバは、唇を開く。

「水質汚染が伝染病を引き起こすことがあるという例として、ロナ川流域に発生する伝染病について取りあげておられましたが、水質汚染が原因であるとするロドフ卿の主張は確かにもっともらしく聞こえますが、ロナ川の上流に廃水を垂れ流す施設はなく、人口密度も低く生態系にも問題のないことから実証に乏しいと言わざるを得ません。南方のヤート国では蚊によって発症する病が伝染病として誤認されていた実例があり、伝染病を引き起こす水質汚染として例にあげるに相応しくないかと──」

 教室にいた全員が、固まった。

「……………………例としてあげるに、ふさわしくなかった。……すまなかった」

 うなだれた教諭に、教室がしんとする。


「……あいつ、やべえ……」

「なんだあのちっちゃいの」

「ゲォルグさま命なだけじゃねえのかよ」

 皆が、化け物を見る目になってる。

「……その、セバ、授業は真面目に聞くように」

 引きつりながらゲォルグが告げる。

『1分で聞いてます』
 などという口ごたえを、あるじには決してしないのです!

「はい、ゲォルグさま」

 うやうやしく頭をさげるセバに

「やるなあ、セバ!」

 ノザが笑って

「すごいよ、セバ!」

 エィラが拍手してくれました。やさしい。





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