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さわると、わかる?
しおりを挟む「あ、あぁああ――! 陵、ずるいぞ!!」
私が気を失うより早く麦が叫んで、菫の瞳がうるうるした。
「ぼ、僕だって……!」
いやいやいや!
それはまだ早いんじゃないかな!?
ぎゅうって抱きついてくれるのは凄くうれしいけど、あの、皆、サービス過多じゃない?
こんなにお客にサービスしてたら皆、勘違いされちゃうよ!
「私なんかにこんなによくしてくれて、ありがとう。
もう充分だから、気にしないでね」
うれしくて涙目になりがら告げたら、皆の目が吊りあがった。
「はァア――!?」
え、いや、何で皆でキレるの!?
いつも穏やかな微笑みを湛えている絢までキレてるんですけど!
すごくやさしい顔が、すんごく怖くなってる……!
「俺、なんかっていう言葉、最高にきらい」
ぎゅ、と陵が私の手を握ってくれる。
「結芽は、がんばってきたんだろ。
ずっとひとりで頑張ってきた結芽を、悪く言うな!」
私のことなのに、自分のことみたいに叫んでくれる陵の目が真剣で、泣きたくなるくらいやさしくて、ほんのり潤んでる。
その気持ちはとてもうれしいのですが……!
「……ずっとひとりでって……どう見てもぼっち全開で、ずうっとひとりきりでいたようにしか見えないっていうこと?」
見るからにぼっち。
切ない……!
「ぜ、全然違う!!」
吃驚したように目を見開いた陵がぶんぶん首を振ってくれるけど、しょんぼり落ちた肩は戻らない。
「あ~ぁ~あ~~!」
「陵、やらかした――!」
「今のは失言だね」
麦と菫と絢がため息をついて、陵が項垂れる。
「ほんとにごめん!
そんなつもりは全然なくて……!
……俺らはさわると……その人のことがちょっとだけ解るっていうか……」
「さわる?」
ぎゅ、と陵が指を絡めて握ってくれる。
「これで、結芽がずっと頑張ってきたのが、解る」
「え、あの、私、あんまり頑張れてないかもしれないけど……それ、もしかして超能力なの?」
ちょっとどきどきしながら聞いたら、陵は遠い目になって、菫と麦と絢はため息をついた。
「おひめさまには、自分で言いなね」
「……絢」
「ったく、陵、だらしねーなー!」
「……麦」
「おひめさまを哀しませるなんて、傍仕え失格だよ!」
「……菫の言うとおりだ。
結芽、ごめん」
「う、ううん!
……あ、あの……陵が叱ってくれたの……うれしかった」
繋がる陵の指を握って、囁いた。
『なんか』は、いつも、私が言われてきたことだから。
『日崎なんかに期待した俺らがだめだったよ』
『日崎なんかにやらせて、大丈夫か?』
『日崎さんなんかに、こんな仕事できる訳ないじゃん』
頑張ったって、だめな私は、いつも嘲笑われてきたから。
『ひどい』
言い返せなかった。
『やめてください』
怖くて言えなかった。
投げつけられる『なんか』は、どんどん私のなかに降り積もり
『私なんか、どうせだめだ』
私まで、そう思うようになった。
なのに、陵が叱ってくれた。
「……ありがとう、陵」
ぎゅ、と陵の手を握る。
ぎゅう、と強い力で、陵が握り返してくれた。
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