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できた!
しおりを挟む鼻の頭が真っ赤になってると思う。
「できた!」
菫と麦と一緒に、3つ並んだ雪だるまの前で跳びあがる。
雪だるまの目には漆黒の石、菫色の石、麦色の石が、きらきらしてる。
鼻の人参とみかんが楽し気に天を指し、頭には赤、黄、青のバケツが飾られた。
雪だるまの足元には、南天の紅い瞳と常盤緑の葉の耳の雪うさぎが、愛らしく並んでいる。
「かわいー!」
跳びあがる私と一緒に、きっとおそろいの赤い鼻で笑って、菫と麦も跳んでくれる。
『アラサーだよ、年齢考えて』とかいう理性の声は聞こえません!
「結芽のが一番かわいい」
うむうむ陵が頷いて、絢が榛の瞳をやわらかに細めて笑ってくれた。
「撮ってもいい?」
「雪だるまなら。
俺たちはだめ」
唇の前にひとさし指を立てた陵がにこりと笑って、しょんぼりした私は頷いた。
「……わかった」
「結芽と一緒に映りたくないとか、そういうのじゃないから!」
あわてたように叫ぶ陵に、絢も頷く。
「ごめんね、僕たちはちょっと写真はだめで」
「はい、こちらこそごめんなさい」
こんなに輝かしいかんばせが公開されたら、お客さんが殺到して大変なことになるのは理解できる。
「おひめさま、僕が撮ってあげるよ」
元気づけるように大きな菫の瞳で笑ってくれる。
「あ、ありがとう」
3つ並んだ雪だるまと雪うさぎの前で、菫に写真を撮ってもらった。
雪と山茶花に囲まれて照れくさそうに笑う私は、今まででいちばんしあわせそうだった。
「冷えただろう、温泉浸かる?」
肩についた雪を払いながら微笑んでくれる陵に、どきどきしながら頷いた。
「う、うん。
えと、あの……皆も使うお風呂、だよ、ね?」
考えるだけで発火しそうだ!
あわあわの私に、きょとんとした陵が喉を鳴らして笑う。
「いや、離れには風呂がついてる。露天もあるから、そっちにする?」
「わあ! 露天風呂!」
跳びあがったら、絢がくすくす笑った。
「お気に召したようで何よりです、おひめさま。
雪見風呂ですよ。
お酒をお召しになると危険なので、お茶菓子をお持ちしましょう」
「わぁあ!」
年甲斐もなくはしゃいでしまう私を見つめる皆の瞳が、とろけそうにやさしいから。
どんな私も、ゆるされている気がして。
どんな私も、受けとめてもらえる気がして。
うれしくて。
寒いのに、あったかくて。
心が、とくとく音をたてる。
「あの、皆、ありがとう」
ぺこりと頭をさげたら、目をまるくした皆が首を振る。
「こんな雪深い山奥にいらしてくださったおひめさまに、御礼を申しあげるのは此方です」
長い指を胸にあてて、絢が微笑んでくれる。
「おひめさまが来てくれて、すごく、すごく、うれしいの」
ぽわぽわ菫の髪を揺らして、紅い頬で笑ってくれる。
「ひめが来てくれたら、俺ら皆、元気になるんだぜ!」
麦の瞳を輝かせて、手を握ってくれる。
その瞳にも、頬にも、言葉にも、取り繕った表向きのサービスの装いはなかった。
お金を払っているからしてくれるサービスの域を、遥かに超えてる。
だって真冬のオフシーズンだから、旅館の料金はリーズナブルだった。
ほんとうのやさしい心で迎えてくれるから。
極上の癒しなんだ。
「ほんとうに癒されてるのは、俺らなんだ」
微笑む陵に、首を振る。
「こんなに癒されたの、はじめて。
こんなに受け容れてもらえたの、はじめて。
泣いちゃうくらい、うれしい。
……ありがとう」
言葉にしたら、ほんとに涙が滲んだ。
ふわりと陵が、抱きしめてくれる。
「もっともっと癒して、甘やかしてあげる。
一緒に温泉入ろう、結芽」
極上のかんばせが、微笑んだ。
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