【完結】非モテアラサーですが、あやかしには溺愛されるようです

  *  ゆるゆ

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傍にいたい

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「陵がやさしくしてくれたの、すごく、すごくうれしかった。
 冷たくて酷いことする人間より、やさしいあやかしのほうが、ずっとずっと傍にいたい!」


 見開かれた白銀の瞳が、揺れる。


「――陵の傍に、いたい。
 白銀の皆が、陵が、ゆるしてくれるなら」


 白銀の瞳が、歪んだ。


「……俺は、あやかしだから。
 俺としたら、結芽まで、人間じゃなくなる。
 生まれてくる子も、あやかしだ。
 結芽は、人の世界を捨てることに――!」

 ふるえる陵の背を、抱きしめる。


「車とバスと電車で何時間か頑張ったら、人の世界にゆけるよ。
 ……自分が、あやかしになるっていうのは……まだ、あの、ちょっとよく解らないけど。
 陵と一緒なら、怖くない」

 ぎゅ、と陵の手を握る。


「あの、私が人間じゃなくなっちゃったら、陵は、他の女の子に触らないとだめになっちゃう?」

 目を瞬いた陵は首を振った。


「対になって、結ばれたら、ふたりでずっと生きてゆける。……らしい。
 最近あまりないから、よく解らないんだけど」

 ぽそぽそ呟く耳の紅い陵の手を、ぎゅうぎゅう握る。


「あやかしになるとかより、陵が他のおひめさまといちゃいちゃしまくるなんて厭だ!!
 なので、陵の傍にいたいです!」

 まるくなった白銀の瞳で、ぽかんと陵が、私を見つめる。


「……え、あの……え……?
 あやかしになるより、俺が他のひめに触るほうがいやなの?」

 こくこく頷いた私は、引き攣った。


「……う。
 あの、心狭い?
 だって、こんなにとろけるくらい甘やかしてくれるとか、おひめさま抱っことか、髪を洗ってくれるのとか……ふぇえ、やだよう、陵!」

 ぎゅうう、と抱きついたら、真ん丸になった白銀の瞳がゆるんで、吹きだして笑う。


「あ――も――、結芽、かわい――!
 大すき!」

 ぎゅう、と抱きしめられる。

 燃える頬で、陵を見あげる。


「……陵が、大すき」

 ささやいたら、白銀の瞳に涙が滲んだ。


「……ありがとう、結芽」

 あたたかな腕が、縋るように抱きしめてくれる。


「愛してる」

 ささやきが、唇に重なった。


 ふわふわの感触に、眩暈がする。

 ずっと、ずっと、ひとりぽっちで、何にもないことが恥ずかしくてたまらなかったけど。

 ぜんぶ、陵がはじめてなら、泣きたいくらい、うれしい。



「……結芽」

 やさしく髪を撫でて、頬を撫でて、抱き寄せて。

 重なる唇が、あまく、あまく蕩けて、頭の芯が溶ける香りが強くなる。

 身体の芯まで熱く痺れて、ぱちりと白銀の光が舞いあがる。



「……ああ、結芽は、ほんとうのおひめさまだ」

 うっとり囁いてくれる陵に、首を傾げる。



「すべての哀しみを、よろこびとしあわせに変える、おひめさま。
 我らを導き、我らを癒す、陰のあやかしのおひめさま」

 ちゅ、と陵の唇が、私の唇にふれる。



「白銀の長の、対となるおひめさま」

 重なる唇から、繋がる指から、白銀の光があふれゆく。



 自分が自分じゃなくなるみたいで、怖いのに。
 陵と一緒なら、どんなことでも乗り越えられる気がして。


 ぎゅうぎゅう、あたたかな手を握る。

 私の手を握り返して、陵は透きとおる白銀の瞳で笑ってくれた。






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