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きっかけ
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あれは一年前のこと。
私は知る人ぞ知る、穴場の縁結びに御利益があるという神社の拝殿で祈っていた。
(私は河上翠といいます。お願いします!どうか私が結婚出来るように良縁を結んでください。贅沢は言いません。
身長は180㎝以上で顔は俳優の△△似、年収は最低でも一千万以上で料理が出来て歌がうまくて包容力があって、いつも笑顔で私の話を聞いてくれるような優しい人。それだけでいいのでお願いします。)
私がこんなに必死に頼み込んでいるのには訳があった。
ある日会社でエレベーターを待っていた時に奴は現れた。私を見上げて馬鹿にしたように鼻で笑う。
「あら河上さん、おはよう。今日も相変わらず女を捨ててるのね。ダメよ、いくら男みたいだからってそんな適当な恰好しちゃ」
「あ~ら、守山さん。そちらは相変わらずの厚化粧ね。ダメよ、肌を労らないと。負担を掛け過ぎて一気に老けるわよ」
にらみ合ったお互いの目から火花が散る。
私と守山夏蓮は同期入社だ。
中高とバレー部だった体育会系の私と、お嬢様気質で甘えた表情を使い分け男を転がす守山はまさに水と油。初めて会った時から気が合わないことはお互いに直ぐに分かった。
案の定、新人研修の時意見の違いから言い争いになった。それからは会えば嫌みの応酬になっている。周囲からはライバルのように見られているのは、誠に遺憾だ。
コイツと一緒にいるとストレスしか溜まらないから早く離れたいのに、エレベーターから降りても今日はなぜか付いてきてずっと話しかけてきた。
左手を大げさに動かしたり、顔に当てたりしている。その度に指に付けた指輪を見せつけるようにして。嫌でも私の目に入るようにしてくる。私の目線に気付いたのか守山は嫌な笑みを浮かべた。
「ふふふ、気づいちゃった?私結婚することになったの」
「ふ~ん。あんたみたいなのに捕まるなんて相手の男もよっぽど見る目がないのね」
「なんですって!?……ふん、まあいいわ。何を言われたって負け犬の遠吠えでしかないんですもの」
私の言葉に眉を吊り上げるも、一瞬で余裕の笑みを浮かべてくる。
「彼ったらね、私のことが大好きなのよ。この前だって、ちょっと風邪っぽいって言っただけで体にいい料理を作ってくれたのよ」
思い出し笑いでにやけながら話す守山にムカついた私は、後で後悔する言葉を言っていた。
「私ならあんたなんかより、よっぽどいい男を捕まえられるわよ」
「あら、そう。まあ期待しないで待ってるわ。じゃあね」
馬鹿にしたようにそういうと守山は去っていった。
(あいつに見下されるのは許せない!絶対にあいつよりいい男と結婚してやるんだから!)
それからは、合コンに行ったり婚活パーティーに行ったりしたがこれだという男には出会えなかった。友人から紹介してもらった人とも会ったが、だんだんと期間が空き自然消滅してしまった。
普段はカジュアルな恰好で居酒屋に行くのに、ワンピースにヒールを履いてお洒落なレストランやカフェに向かう日々が続いた。慣れないことをして気力、体力共に消耗しただけで結果が出なかった私は最後の神頼みという訳で神社に来たのだった。
(どうかお願いします。素敵な男性との出会いを……!)
更に気合を込めて祈る。なんだか今ならオーラを放てそうだ。
そうしてしばらく祈っていると異変が起こった。
私は知る人ぞ知る、穴場の縁結びに御利益があるという神社の拝殿で祈っていた。
(私は河上翠といいます。お願いします!どうか私が結婚出来るように良縁を結んでください。贅沢は言いません。
身長は180㎝以上で顔は俳優の△△似、年収は最低でも一千万以上で料理が出来て歌がうまくて包容力があって、いつも笑顔で私の話を聞いてくれるような優しい人。それだけでいいのでお願いします。)
私がこんなに必死に頼み込んでいるのには訳があった。
ある日会社でエレベーターを待っていた時に奴は現れた。私を見上げて馬鹿にしたように鼻で笑う。
「あら河上さん、おはよう。今日も相変わらず女を捨ててるのね。ダメよ、いくら男みたいだからってそんな適当な恰好しちゃ」
「あ~ら、守山さん。そちらは相変わらずの厚化粧ね。ダメよ、肌を労らないと。負担を掛け過ぎて一気に老けるわよ」
にらみ合ったお互いの目から火花が散る。
私と守山夏蓮は同期入社だ。
中高とバレー部だった体育会系の私と、お嬢様気質で甘えた表情を使い分け男を転がす守山はまさに水と油。初めて会った時から気が合わないことはお互いに直ぐに分かった。
案の定、新人研修の時意見の違いから言い争いになった。それからは会えば嫌みの応酬になっている。周囲からはライバルのように見られているのは、誠に遺憾だ。
コイツと一緒にいるとストレスしか溜まらないから早く離れたいのに、エレベーターから降りても今日はなぜか付いてきてずっと話しかけてきた。
左手を大げさに動かしたり、顔に当てたりしている。その度に指に付けた指輪を見せつけるようにして。嫌でも私の目に入るようにしてくる。私の目線に気付いたのか守山は嫌な笑みを浮かべた。
「ふふふ、気づいちゃった?私結婚することになったの」
「ふ~ん。あんたみたいなのに捕まるなんて相手の男もよっぽど見る目がないのね」
「なんですって!?……ふん、まあいいわ。何を言われたって負け犬の遠吠えでしかないんですもの」
私の言葉に眉を吊り上げるも、一瞬で余裕の笑みを浮かべてくる。
「彼ったらね、私のことが大好きなのよ。この前だって、ちょっと風邪っぽいって言っただけで体にいい料理を作ってくれたのよ」
思い出し笑いでにやけながら話す守山にムカついた私は、後で後悔する言葉を言っていた。
「私ならあんたなんかより、よっぽどいい男を捕まえられるわよ」
「あら、そう。まあ期待しないで待ってるわ。じゃあね」
馬鹿にしたようにそういうと守山は去っていった。
(あいつに見下されるのは許せない!絶対にあいつよりいい男と結婚してやるんだから!)
それからは、合コンに行ったり婚活パーティーに行ったりしたがこれだという男には出会えなかった。友人から紹介してもらった人とも会ったが、だんだんと期間が空き自然消滅してしまった。
普段はカジュアルな恰好で居酒屋に行くのに、ワンピースにヒールを履いてお洒落なレストランやカフェに向かう日々が続いた。慣れないことをして気力、体力共に消耗しただけで結果が出なかった私は最後の神頼みという訳で神社に来たのだった。
(どうかお願いします。素敵な男性との出会いを……!)
更に気合を込めて祈る。なんだか今ならオーラを放てそうだ。
そうしてしばらく祈っていると異変が起こった。
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