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優しさなんかじゃなくて
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それから森下とは何度か会って、話をして、何度か、寝た。
それでも、心に出来た隙間は埋まらない。
ただ、森下の側にいるのはとても楽だった。自分を愛していない。元教え子と言う、それだけの関係が、とても楽だ。
だけど、分からない。
「ズルいなぁ、俺はダメなのに、森下はいいの?」
就職が決まり、帰ってきた地元で飲んでいた日野は、隣に座った人の気配にも気づけず、目を見開いて隣を見た。
「こうや、さん……」
「はろー?俺だよ?」
あはは、と笑うこの人は神出鬼没だと本気で思う。
それに、森下に抱かれたことさえ、把握されているのは少し怖いぐらいだ。
新手のストーカーではないか。
「ずっとねぇ、待っててあげようと思ったんだけどねぇー?」
そういつも通りに笑う光夜がうすら寒い。
どうしてそこまで執着されているのか、さっぱり分からないけれど、これ以上森下と関わるのも危険だろうと判断できる。
「そう、ですか……」
「うん。でもダメだねぇ、ダメダメだ」
何が、とは聞かない。
怖い、と素直に思うのに逃げようと気持ちは動かない。
酒が入っているからか、それとも光夜が嫌いではないからか。
「いつまで逃げたって、何処まで行ったって、君は俺のものだよ?」
「……っ」
そっと伸びてきた手。その手から逃れることができない。
「どう、して……」
「どうしてだろうねぇ?俺がね、声をかけた子はねみんな拒まなかったんだ。君は声をかける前に俺を拒絶して、その内に入れてもくれなかった」
それがさも嬉しかったと言わんばかりに笑う。
日野はそんなことで?と目を見開く。
「その時から、ずっと手に入れようと思ってたんだ。氷純の邪魔が入ったり、それがなくなったと思えば、君はここから居なくなっちゃうし。帰ってきたと思ったら、森下になんて捕まってるしねぇ……」
ギラギラしているその目は怒っているようにも見える。
いつも笑っている光夜は、いつでもその目の奥が笑っていない。
「だっ、て、光夜さんは、結婚してる……」
「あは、今更それ言っちゃう?氷純だって、俺と寝てたのに?」
うぐっ、と言葉に詰まる。
そうだ、そうだったとため息を吐いた。
「俺の奥さんはねぇ、子供は産んでくれるし、パーティとかにも一緒に参加してくれるけど、俺の事一切愛してないからねぇ」
アッハッハッハ!と愉快そうに光夜は笑う。
「俺もねぇ、あの人のことは尊重するけど、愛してはいないんだぁ」
「じゃあ、何で……」
「お家の事情ってやつね~。結婚して俺の子供は産んでくれるし、お相手も俺の子供を産んでくれたんだぁ」
「……お相手?」
「そ、奥さんの恋人さーん。可愛い人だよ~?子供たちも第二の母として慕ってるしねぇ」
愛人が、堂々と家の中にいる、という空間に顔を顰めた。
だが、それを光夜は気にしていないし、むしろ子供まで産んでもらっているという。
と言うか、母親?と首を傾げたところで、なるほど。と納得した。
「俺はどっちでもいいんだけど、人格破綻者とか言われちゃってるね、奥さんに」
何となくわかる気がする。
何処か、光夜はおかしい気がして。
でも、それが普通にも思えてくるのだろうか?
「だからね、気にしなくていいよ?」
「だ、けど……」
じゃあ、と笑い、手を引かれた。
「本当は心も欲しいけど、まずは体だけ俺のものにならない?」
「えっ?い、いやいやいやいや、おっ、俺にだって選ぶ権利ぐらいあるじゃん?」
光夜が嫌いなわけじゃない。けれど、どうしても自分の体を預ける気にはなれない。
怖い、と思う。
光夜の考えていることが、理解できない。
その目が、思考が、理解できなくて怖い。
「酷いなぁ、どうして俺はダメなんだろうね?」
「だ、って……」
でもね、と笑う。
光夜が更に恐ろしくて。
動けなくて、笑う光夜に絡め取られる。
逃げられなくなりそうで、慌てて逃げようとしてももう遅い。
気が付けば、ベッドの上。
丁寧に体を滑っていった指、いつの間にか入っていた光夜のもの。
ぼろぼろと涙は零れながら、口からは意味のない言葉たちがあふれ漏れていく。
「んー、やっぱり可愛いね、君は」
「あっ……、や、なっ、なに?んんっ!」
「んーん、なんでも。ほら、ここ好きでしょ?」
ぐりっ、と光夜のモノで抉られるそこは、日野の弱い場所で、そこを触られるたびにひどい声を出して鳴いている。
うつ伏せの体を後ろから貫く光夜は楽しそうに腰を振っている。
「俺のものに、早くなってね」
薄れていく記憶の中、そっとキスをする光夜を初めて優しいと思ったのかもしれない。
それでも、心に出来た隙間は埋まらない。
ただ、森下の側にいるのはとても楽だった。自分を愛していない。元教え子と言う、それだけの関係が、とても楽だ。
だけど、分からない。
「ズルいなぁ、俺はダメなのに、森下はいいの?」
就職が決まり、帰ってきた地元で飲んでいた日野は、隣に座った人の気配にも気づけず、目を見開いて隣を見た。
「こうや、さん……」
「はろー?俺だよ?」
あはは、と笑うこの人は神出鬼没だと本気で思う。
それに、森下に抱かれたことさえ、把握されているのは少し怖いぐらいだ。
新手のストーカーではないか。
「ずっとねぇ、待っててあげようと思ったんだけどねぇー?」
そういつも通りに笑う光夜がうすら寒い。
どうしてそこまで執着されているのか、さっぱり分からないけれど、これ以上森下と関わるのも危険だろうと判断できる。
「そう、ですか……」
「うん。でもダメだねぇ、ダメダメだ」
何が、とは聞かない。
怖い、と素直に思うのに逃げようと気持ちは動かない。
酒が入っているからか、それとも光夜が嫌いではないからか。
「いつまで逃げたって、何処まで行ったって、君は俺のものだよ?」
「……っ」
そっと伸びてきた手。その手から逃れることができない。
「どう、して……」
「どうしてだろうねぇ?俺がね、声をかけた子はねみんな拒まなかったんだ。君は声をかける前に俺を拒絶して、その内に入れてもくれなかった」
それがさも嬉しかったと言わんばかりに笑う。
日野はそんなことで?と目を見開く。
「その時から、ずっと手に入れようと思ってたんだ。氷純の邪魔が入ったり、それがなくなったと思えば、君はここから居なくなっちゃうし。帰ってきたと思ったら、森下になんて捕まってるしねぇ……」
ギラギラしているその目は怒っているようにも見える。
いつも笑っている光夜は、いつでもその目の奥が笑っていない。
「だっ、て、光夜さんは、結婚してる……」
「あは、今更それ言っちゃう?氷純だって、俺と寝てたのに?」
うぐっ、と言葉に詰まる。
そうだ、そうだったとため息を吐いた。
「俺の奥さんはねぇ、子供は産んでくれるし、パーティとかにも一緒に参加してくれるけど、俺の事一切愛してないからねぇ」
アッハッハッハ!と愉快そうに光夜は笑う。
「俺もねぇ、あの人のことは尊重するけど、愛してはいないんだぁ」
「じゃあ、何で……」
「お家の事情ってやつね~。結婚して俺の子供は産んでくれるし、お相手も俺の子供を産んでくれたんだぁ」
「……お相手?」
「そ、奥さんの恋人さーん。可愛い人だよ~?子供たちも第二の母として慕ってるしねぇ」
愛人が、堂々と家の中にいる、という空間に顔を顰めた。
だが、それを光夜は気にしていないし、むしろ子供まで産んでもらっているという。
と言うか、母親?と首を傾げたところで、なるほど。と納得した。
「俺はどっちでもいいんだけど、人格破綻者とか言われちゃってるね、奥さんに」
何となくわかる気がする。
何処か、光夜はおかしい気がして。
でも、それが普通にも思えてくるのだろうか?
「だからね、気にしなくていいよ?」
「だ、けど……」
じゃあ、と笑い、手を引かれた。
「本当は心も欲しいけど、まずは体だけ俺のものにならない?」
「えっ?い、いやいやいやいや、おっ、俺にだって選ぶ権利ぐらいあるじゃん?」
光夜が嫌いなわけじゃない。けれど、どうしても自分の体を預ける気にはなれない。
怖い、と思う。
光夜の考えていることが、理解できない。
その目が、思考が、理解できなくて怖い。
「酷いなぁ、どうして俺はダメなんだろうね?」
「だ、って……」
でもね、と笑う。
光夜が更に恐ろしくて。
動けなくて、笑う光夜に絡め取られる。
逃げられなくなりそうで、慌てて逃げようとしてももう遅い。
気が付けば、ベッドの上。
丁寧に体を滑っていった指、いつの間にか入っていた光夜のもの。
ぼろぼろと涙は零れながら、口からは意味のない言葉たちがあふれ漏れていく。
「んー、やっぱり可愛いね、君は」
「あっ……、や、なっ、なに?んんっ!」
「んーん、なんでも。ほら、ここ好きでしょ?」
ぐりっ、と光夜のモノで抉られるそこは、日野の弱い場所で、そこを触られるたびにひどい声を出して鳴いている。
うつ伏せの体を後ろから貫く光夜は楽しそうに腰を振っている。
「俺のものに、早くなってね」
薄れていく記憶の中、そっとキスをする光夜を初めて優しいと思ったのかもしれない。
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