CRYSTHL―クリスタル―

気紛屋 月影

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進撃と迎撃。

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 ”絶”の進軍が始まった。

 空の歪みから現れたのは、戦艦。
 「”絶”あっち”転”こっちじゃ、歪みのある場所は違うのか!」
 「そうとしか考えられないだろ!」
 「あっちが攻めて来るんじゃない! こっちが有利になるような条件は控えるはずよッ!」
 ギャー、ギャー、怒鳴り合うように会話する数人の男女。
 そうしている間にも、歪みからは戦艦がいくつも姿を現す。それは――、大地に着地することなく空に浮かんだまま、そこに存在した。
 「ゲームみてぇ」「ゲームってよりファンタジーだな」
 呆然と眺めていると、戦艦の砲口が下を向いた。「あ」と、誰かが言った。
 その直後――、砲弾の雨という雨が降って来た。
 「『うわぁあああああ‼』」
 しかし、それは学校を中心としたドーム型の結界によって阻まれた。
 「ッ、これは……」
 黒蒼は思い出す。この結界は、特殊能力の符術。どういった代物までは明かされなかったものだ。
 「これは、これなら安心だ」
 独り言ちて、射撃型の部隊に合図を送る。

 「放てぇぇぇ――‼」

 ”転”のオタク達が放つ魔法の攻撃。それは”絶”の砲弾や、魔法の砲弾と相殺されるが効果は今一つ。
 「皆、準備は良い?」
 校庭に集う接近部隊。
 その筆頭には、黒蒼と乱銀。
 それぞれに合った武器を手に、校門に向かう。門から先は、結界外。自衛が出来なければあるのは死だけ。
 それでも、接近で戦うことを決めた生徒は凛としたままだ。
 「ん、待て!」
 結界外に出ようとした時、嫌な予感を感じて足を止めた。
 「黒蒼君? どうした――」
 の、と、不思議に思った生徒が言い切る前に、目の前に姿を現した異形を黒蒼は切り捨てた。
 「来たぞ!」
 「何処から出て来たんだよ、コイツ等!」
 「上だ! 上から、あの戦艦から降りて来たんだ!」
 その言葉を合図かのように、何体、何十体といった異形の化け物が戦艦から飛び降りて来る。
 
 どぉおおおおんッ

 凄まじい衝撃。地面に巨大なクレーターが出来る。
 緊張に背負った大剣の柄を黒蒼は握り締め、いつでも振るえるように構えた。
 プギィイイイィ――‼
 「ッオークぅッ⁉」
 「に、合成獣キメラぁッ⁉」
 「ははッ、さすが異世界」
 「言ってる場合か! 構えろ‼」
 怒鳴り、怒鳴り返しながら黒蒼に遅れて武器を構える。
 「さぁ……戦闘、開始だ」
 強く地面を蹴って黒蒼は走り出す。自分の身長よりも大きい異形を大剣ブレイドで豪快に迷うことなく切り伏せて行く。
 「ッ黒蒼だけに行かせるな!」
 「続け、続けぇえええ‼」
 我に返った者が吠える。黒蒼の背を追い、次々と結界外に生徒は飛び出していく。
 「風よ纏え!」「炎よ唸れ!」
 「『ファイヤー・ブロークン‼』」
 風と炎の合体魔法が合成獣に炸裂する! 「グルァアアアアアアッ‼」絶命の声が轟く。

 「一人で戦おうとするな!」
 「複数人で協力して、確実に息の根を止めろ!」
 「『おうッ‼』」

 学校外に出た生徒達は一様に頷き合い、それぞれ別方向に散った。
 

 「ッ、はぁッ!」
 ザンッ、と数十体の異形を黒蒼は切り伏せる。
 異形が流す血飛沫は人間のものとはまるで違った。赤色のものもあるが、青や緑といった”転”ではありえない色。つくづく異世界の軍団と戦っているのだと実感した。
 『黒蒼、俺を使え』
 「ッ月虎!」
 脳内に響いた月虎の声に従うまま、拳銃を構えた。

 「月虎破弾げっこはだん‼」

 自分の一部となった、または生まれ持った生命エネルギーを糧に打ち続けることが出来るそれは、いとも簡単に異形の戦士達を粉々に打ち砕いた。
 「死にたければ掛かって来い」
 右手にブレイド。左手には月虎。ブン、と、大剣を振るえば空気を斬る音がする。
 「俺達を楽に蹂躙できると思うなよ」
 若干楽し気に言葉紡ぐ黒蒼は、狂気を滲ませた瞳で敵を見据えた。

一方、乱銀は――、
 「双剣、炎と共に我を包め!」
 ”絶”で生きた時間と全く同じ姿を晒しながら、乱銀は襲い掛かる戦士達を斬り捨てて行った。
 炎を双剣と自身の手足に纏った彼女の姿はまさに、獲物を狩る赤き虎。
 「ガルゥウアァアアッ‼」
 「――、……はぁあああああッ‼」
 襲い掛かる合成獣の鋭い爪。アクロバティックな動きで回避し、乱銀は双剣をクロスさせ力で合成獣を圧し切る。
 「骨の髄まで、焼き尽くされなさい」
 ぽつ、と呟く。瞬間――、
 「ギャォオォオオオオオオオオッ‼」
 断末魔の叫びを上げて、合成獣は炎に巻かれた。ドタン、バタン、ドタン、と暴れまくる所為で周囲の建物はめちゃくちゃにされる。
 「暴れるなぁあああああッ!」
 怒りの雄叫びを上げて更に攻撃を加える生徒が居た。
 「私の、思い出の場所に何てことすんのよ!」
 「まだだ、燃やし尽くせ!」
 「打て、打て打て打て‼」
 火炎瓶を投げ、魔法レーザーガンで撃ちまくる。「『せーのぉッ』」という掛け声と共に風を巻き起こし、うじゃうじゃいる化け物達に向かって炎の塊と化した合成獣を送り込む。
 風によって動きを制限され、巻き込まれて火は燃え移る。ドンッ、と何処かで爆発するような音が響いた。
 
 
 学校外に出た生徒による猛攻撃。その戦いは五分五分。
 「外は接近部隊に任せて!」「私達はサポートよ!」
 校庭に残った生徒はパパっと準備する。――後にも先にもない、特別魔法合唱団の特有武器を!
 「さぁ、ミュージック……」
 「スタートッ!」
 そう、楽器だ。
 「聴きやがれ、学園一音痴!」
 「原田はらだ奏太朗そうたろうの破壊力抜群な歌声を‼」
 顔面蒼白で既に泣きそうな表情の男子生徒。女子生徒も顔色は良くなかったが、やけくそ気味にドラムを叩いたことで、”絶”にとっても”転”の学生達にとっても地獄と言う名のサポート攻撃が始まったのであった。
 序盤、伴奏。
 「じゃ、行きまーす」
 マイクのコードを接続し終わった。音楽は、軽快なメロディーを奏でている。
 学園一音痴な男子生徒こと原田奏太朗は、即席のステージに上がり、大きく息を吸った。

 「陣を描け!」
 「早く早く早くッ」
 特別魔法合唱団の攻撃をより敵に、また破壊力抜群な歌声の被害を抑えるために魔法陣を描く。
 「よーし! 後は私達ね!」
 魔法陣を描き終わった直後に、符術を使ってスピーカーに。ピロピロピロと誰かの着信音が響いた。『学校の敷地全体にスピーカー符を配置したよ!』魔法陣と連動するように作られた符。
 破壊準備は整った。

 ”絶”よ、悶え苦しむが良い!
 破壊力を持った歌声によって――‼

 「……? なんで、俺を囲むようにして陣が描いてあるんだ?」
 首を傾げる原田。味方に被害が及ばないように作られた、ある意味賢明な措置に、破壊力抜群な歌声を知る者は拍手喝采を送ったのであった。


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