天使の愚痴

桐原まどか

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天使の愚痴

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―我々はサービス業じゃないんですよ。毎日毎日、死神から引き渡される魂たちを〈正しく〉導く為にいるんです。なのに!
―最近の魂たちときたら、自分の立場を弁えてない!そりゃね、天国へ行かせろ、とかなら、昔っからありましたよ?最近は違うんです。
「生まれ変わるなら、お金持ちでお願い。美貌もね」…そんな選択権、我々天使にはありません!
振り分け先の神様に直接交渉して欲しい。それを伝えると、「えー、めんどくさい。代わりにやって?」
…自分の運命をなんだと思ってるんだ?そんな事で生きていけると思ってるのか!!?
―失礼。つい、白熱してしまいました。
とにかくね、最近の魂たちは、他者には〈自己責任〉を声高に叫ぶくせに、こと自分の事になると〈他責思考〉になるんですよ。「私は悪くない!!」
トーストにベッタリ塗られたジャムみたいにまとわりついてくるんですよ。鬱陶しい。

天使は、ふぅ、と息を吐いた。
―やぁ、愚痴を聴いてくださってありがとうございました。
あなたのような〈聴き役〉がいてくださって、助かってますよ。
本当にありがとう。

天使は何度も礼を言い、去っていった。
次の天使が愚痴を聴いて貰えるのを待っている。
―やれやれ、でも、生きてた頃に比べりゃ、ラクだぜ…。
天使たちの愚痴を日々聴いている、この魂。前世は某コールセンターのクレーム処理係だったのだ。
だから、天使たちの愚痴など、可愛らしいものだった。
―これで徳を積んで、来世は幸せを掴むぜ…。
こっそりとほくそ笑むのだった…。
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