IF~もし未知の能力を持った異世界人が来たらあなたはどうしますか?~

そらしろ

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1章 チューニング

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健司を三人でこってり絞るのは後にして、まずこの力の使い方をマスターすることに時間を費やすことが決定した。

健司曰く、


「意外とコツさえ掴んじゃえば後はなんとかなる。けどそのコツを掴むまでが大変だった」


うん。まず説明になっていない。
健司はあれか?感覚派なのか?
もう少し詳しく聞かねばわからん。


「それじゃわからんって。何をどうしたらいいか初めから説明してくれよ」

「うーん。こうなっ説明しようとすると頭で思い描いてるイメージと言葉がうまく表現できないって感じなんだよ!しょうがないだろ!取り敢えずあのべっぴんさんが出した塊を出してみるからちょっと待ってろよ」


というなり、目を瞑って片方の手を額に、もう片方の手を胸の前に出してしばらく。


「ふぅ……こんな感じに手のひらに出してみた!」


手の平に黒い石の塊がそこにあった。
形は球体になっているが、大きさはヴィクティムの作ったものとほぼ同じくらいだろう。
でだ、それをどうやったか知りたい!


「ねぇ?それをやって見せてくれたのはわかるけどどうやったの?」


真里さん、皆を代表して……できる子や。この子できる子なんや。
一人であらぬ方向に頷いているけど別におかしな目では見られていないはず。
よし。大丈夫だ。


「えっとまず、自分の体全体をイメージするだろ。その後、その中に金属っぽいのをイメージして、それが自分の意思で動かせると思って」


なるほど、頭の中でイメージを作るってことか?もしくは目で見てイメージするのか?さっきよりは分かりやすくなった分俺も見よう見まねでやってみる。
手を額に当てて、胸の前でもう片方の手を出すだろ。
それで頭で体全体をイメージしたらその中に金属が流れてるイメージね。
オーケイ。
なんとなくわかってきた。
これが俺の意思で動かせるのね。
金属は液体なのか?気体だと熱すぎるからやっぱり液体だよな。
水銀をイメージしたらいいのか?
そしたら体には毒だよな?
アレ?苦しくなってきた。
待て待て。出来ないし苦しいぞ。
一旦辞めだ辞めっ。
コレは毒じゃない、毒じゃない。体には害がない。無害無害。
ふぅ。呼吸が少し楽になってきた。
目を開けてみる。


「ふっふーん!どうこの亜里沙ちゃん!スゴイでしょっ!やっぱりお姉ちゃんの血筋を受けてるのよ!」


小胸を張る亜里沙がそこにいた。
なんか腹が立ったから頭にチョップをかましてやる。


「痛っ!って何するんだよ!」

「いや何。ちょっと静かにして貰いたくてな。それから別に胸は張らんでいい」

「何さっ!何さっ!出来ないことひがんじゃって!シン君にはコツ教えてあげないもん!フンッ」


ヤベェ。それはそれで困る。
出来ないってなったらなんか悔しいし、ここは素直に謝ろう。


「いや。ゴメン。俺が悪かったです。反省してます。許してください」


チラッとこちらを見る亜里沙。
後もうひと押しってところか?


「まぁその痛かったよな。ちょっと頭貸してみ?」


手招きすると頭を近づけてくる。
頭を撫でる。
痛いの痛いの飛んでけーってイメージで撫でる。
なぜか真里からの視線が痛いが気にせず撫でる。


「……もういいって。反省してるなら許すからあまり子供扱いするなよなッ」


さいですかー。
満更でもなさそうだぞー。
心の声は声に出したらアウトだ。
すかさずコツを聞いておく。


「でコツは教えてくれるのか?」

「えっ?」

「えっ?」


ヤバい殴りたくなってきたぞ。
落ち着けービークール。そう冷静に、な。冷静に。


「さっきの反省はなんだったんだよぉ。まぁ?教えてください。亜里沙様って言ったら教えてあげても良いよ?」


っちくせう。
下手に出たらこう来るか。
ダメだ。これを聞かないでまた苦しい思いをしなきゃいけないのは無理だ。
結構本気で苦しかった。
アレはいただけない。


「っく。亜里沙様教えて下さい。お願いします」


丁寧に頭を下げた。


「良いわよ!面を上げーい!」


頭をあげるとそこに嬉しそうな顔をした亜里沙の顔が間近にあって尻込みしてしまった。


「近いって!」

「もうっ!亜里沙?悪ノリが過ぎるわよ?」

「はーい。ごめんなさーい」


真里さんや?止めに入るならもう少し早くお願いします。

というか真里もコツが上手く掴めていないのか出来てないからコッソリ聞こうとしてたのかな?
ちょっとカマかけして……イヤ昨日の今日はさすがに不味いか。
でも悪戯心が……
とそんな葛藤を他所に球体を作れた者同士次はどうしようかと話だしている。
イヤイヤ。盛り上がってるところ悪いんだけど、ちゃんと教えてくれませんかね?


「お姉ちゃんとシン君は二人仲良く練習してなよ。コツはイメージ力だよ!妄想でも良いから手の平に出せるって思い込むと良いかもね!」

とかなんとか言いながら俺と真里は部屋の隅に追いやられてしまった。
解せぬ。

「はぁ……これだから感覚でものを捉える人は……」

「アレ?シン君は感覚で物事を考える人じゃないの?」

「そうだけど?物事には理論があって事象があるんでしょ?だから物理があるわけだし、数学もそうでしょう?アレ?違った?」

「……ううんううん。違うの。私てっきりこの大学の文科かと思ってたから。私はそうなんだけど、もしかして違った?」

「あぁ。俺、国際科入りたくて、受けたんだけど、英語で落としちゃって……。レベル高いから。文科だけどどっちかというと専攻は倫理とかだったから」

「あっ、そうなんだ。なるほどねぇ」


どうしたというのだろうか。
なんか目が泳いでるけど?
大丈夫なんだろうか。
というか髪の毛が邪魔だよな。


「あっゴムとか持ってる?」

「うん。あるよ?どうしたの?」

「あぁ、ちょっとね。髪が邪魔くさくって」

「切りなよって何回か言ったのにほっとくからだよ?」

「そうだよな。あまり気にしてなかったから。ちょっと気合い入れたくて……ごめん。貸してもらえる?」

「わかったから、ちょっと待ってて!」


真里が自分のマイバックからゴムを探して渡してくれる。
本当にデキた子や。俺には勿体無いくらいだよ。


「ん。ありがと」


手で前髪と横の髪を一括りに纏めてさっと髪をゴムで留める。
だいぶもたついてから長くなってはいると思ってたけどこんなにアッサリ纏まるとは……ははは。
メンドくさくてほっとくのもほどほどにしとかないとな。


「よしっ!頑張るか!」

「私も頑張るね!」


なんだか良くわからないけど真里も気合いが入ったようだ。
ただその前にどんな金属ってどんなイメージにしたら良いか聞かないとな。


「あっ、真里は金属のイメージってどういう風にした?」

「えっ?私?」

「そうそう」

「私は、えっと、そこまでイメージ出来ないというか、そもそも、金属ってあの金属でしょ?黒い靄のような金属ってどんなものなのかわからないからイメージできないんだよねぇ」

「あっそれわかるわ。たぶん薄い金属が体にあるんだろうけど、液体なのか柔らかい伸びる金属なのかわかんないけど、体にあるものを外に出すってなるとイメージし辛いところがあって……」


という会話を三十分ほどして意見のすり合わせをしたところ、俺たちの行き詰まってる原因が浮き彫りになった。
因みにその要因は、金属が体のどの部分から外に出すのかってところに行き着く。
金属自体はとんでも金属ってことで自分には害のない金属で自分の意思で体中を動かせるようにはなった。
部分的に強度を高めたり、全身をくまなく覆ったりってところだ。
外に出すとなるとそこはやはり、口から吐き出すか、排泄物のようにしたから出すかの二択になってしまう。
そこがどうにかクリア出来ないと体の外に出し難い。
まぁ出せなくても困らないんだけどね。


「ねぇ?まだ出来ないのぉ?」

「亜里沙ぁ?少しお姉ちゃん怒るわよ?」


真里も根を詰めた事で疲れが溜まってきたらしい。
丁度お昼時になりつつあるから一旦休憩にしようかね。


「もう昼時だし、根を詰めるのも良くないよ?だから休憩にしよう!」


はい。イケメンさんありがとうございます。俺のやりたい事を簡単に卒なくやっていくんだね。
わかってた。これがイケメン力だってこと。ただ遅いか早いかの違いだってこともわかってる。
けど早い方が良いのは日を見るより明らかだ。
だって俺に残された選択肢は「疲れたー」って愚痴るか「そうだよなっ腹減ってきたもん」って同意するかの二択。
かっこいいところを見せることができない。
そう。俺には速さが足りなかった。
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