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第3章:私たちが日常に溶け込む夜
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セバスチャンの貪るような口付けに何とか追いつこうと、唇を動かす。下唇に優しく歯を立てられて、思わず声が漏れてしまう。
唇を開けば、大きな舌で口の中を支配されて、吸える空気はセバスチャンが吐き出した熱い息だけ。その熱量に、くらくらしてしまう。
ようやく解放された時には、私はすっかりセバスチャンのキスに溶かされてしまっていた。
「セビー?」
激しい口づけの余韻のせいで膝がかくつく。倒れないで済んでいるのは、彼が丸太のような腕でがっしりと私の両脇を支えてくれているから。
「もう、行ったな」
ぼそり、とつぶやかれた言葉に、一度首をかしげる。
少し考えてようやく、ジェイクの存在を思い出した。そういえば、彼はもうすっかり練習に戻ってしまっている。
再び、セバスチャンの顔を見上げる。心なしか強張った顎の筋肉を、チョイ、と指でなぞった。
「ねえ、セビー? なんでこんなに顎に力が入ってるの?」
コクリ、と反対方向に首をかしげて、じっと彼の瞳を見つめた。パチリ、パチリ、と瞬きをしてから、セバスチャンは諦めたように笑みを漏らした。
「あー、無意識だな。まあ、要は……嫉妬だ。前にも言っただろ? 俺は嫉妬深いし独占欲の塊だって」
彼の言葉を思い出しながら、ゆっくりと頷く。
確かに、初めてキスをしたあの夜、彼はそう言っていた。あの時はセバスチャンが嫉妬なんてって思ったけど、こうやって目の前でその光景を拝めるとは。
なんだか、貴重で嬉しい。
「もう付き合ってるのに、嫉妬?」
フフフ、と笑いながら問いかければ、彼の掌が私の頬をそっと包んだ。
「付き合っていようが付き合っていまいが、そんなの嫉妬には関係ない。過保護で悪かったな。でも、他の誰にもこんな風に感じたことはない。こうやって嫉妬するのも必死になるのも、全部ミニーだけだ」
まっすぐな瞳でそう言われて、心がこそばゆくなる。
「セビーだけだよ。私には、セビーだけ」
そう言いながら、ゆっくりとかかとを床から浮かせる。背伸びをした私の唇は、簡単にセバスチャンのそれに吸い込まれていく。
「そうだ。俺だけだ。俺だけ見てろ。ずっと、な。俺もずっと、お前の傍にいるって約束するから」
彼の言葉に頷いて、再び背伸びをしてキスを落とす。離れようとした瞬間、後頭部に回った彼の手がぐっと、私を再び彼の方へと引き寄せる。より一層深くなった口付けの後、彼は何食わぬ顔でそのまま練習へと戻ってしまった。一人取り残された私は、へなへなとベンチに座り込んだ。
……セバスチャンの愛のささやきには、なかなかな効果があるみたいだ。そっと胸に手を当てれば、自分の心臓がどれだけ大きな音を立てているかがよく分かる。頬に手を当てれば、自分の頬がどれほどに熱を持っているかがよく分かる。
もう私の全身が、セバスチャンの言葉に、存在に、反応している。
まったくもう、とんでもないことをしてくれたものだ。
それからしばらく、セバスチャンの練習が終わるのを見届けてから、彼が着替えとシャワーを済ませて戻ってくるのを、一人で待つ。
私のピンクのスタンレーの横には、それより一回り大きいセバスチャンのスタンレー。こうやって少しずつ、お互いの「一緒」が増えていく。お互いの一部がお互いになっていく。これが、付き合うってことなのかな。
「待たせたな」
小走りでやって来るセバスチャンを、両手を広げて出迎える。抱きしめられるだけじゃなくて、あの力強い腕でギュッとされた上にスッと持ち上げられて、それが嬉しくて私ももっとギュッと彼の首に抱き着く。
「早くシャンプー買いに行こ?」
再び地上に着地してから、彼の手をそっと握る。当たり前のようにセバスチャンの肩にかけられた私のリュックのポケットに、スマートフォンを突っ込む。
「ダウンタウンの方のドラッグストアでいいか? あっちの方が広いだろ?」
駐車場までの道を、つながれた手を揺らしながら歩く。夕日に照らされてアスファルトに伸びる私たちの影の長さの違いに、ついつい笑ってしまう。
「これ、写真に撮って?」
私たちの影を指させば、セバスチャンは苦笑しながら私のスマートフォンでその光景を写真に収めてくれる。特別じゃないけど、優しい時間。最近の私のお気に入りだ。
セバスチャンが開けてくれた扉から、彼の車の助手席によいしょとよじ登る。彼の車はフルサイズのSUVだから、いつも乗り込むのに少し苦労する。でも、車高が高い分、他の車を見下ろす感じになるから、なんだか背が高くなった気分になって、楽しい。
「やっぱり車、運転できた方がいいのかな?」
隣のレザーシートにサッと腰を下ろすセバスチャンを見上げながら、問いかける。
「お前はまだおチビだから免許持ってないもんな」
ハンドルを握りながらフッと笑われて、頬を膨らませる。
「また子ども扱いだ!」
フン、と胸の前で腕を組めば、さらに大きな声で笑われる。
「ダッシュボードにクマのグミ、入れといたぞ」
彼の言葉を聞いて、迷いなくダッシュボードを開く。いつもの袋入りじゃなく、それよりも大きなプラスチックの容器に入ったグミに、私は歓喜の声を上げた。
「これ、いつか抱えながら食べたいと思ってたんだよねー」
シシシ、と笑いながら、グミの容器を抱え込む。
まずは頭を食いちぎってから、今度は足を食いちぎって、最後に胴体を食べる。それが私のいつもの食べ方だ。そして赤信号になったら、セバスチャンの口の中に放り込む。これも、いつもの私たちのやり方。私たちが付き合い始める前、セバスチャンが車の免許を取ってから、ずっと。
「ミニーは免許なんて取らなくていい」
目の前の信号が青に変わったそのタイミングで、セバスチャンは言った。首を傾げながら、再びクマの頭を食いちぎる。
「なんで?」
「これからずっと、お前の指定席は俺の助手席だ。だから、免許なんていらないだろ」
セバスチャンの言葉に、私は小さく微笑んだ。
「……セビーは私に甘いね。このグミより甘い」
そう言いながら、私はクマの足をかみちぎった。
車の中を流れるこのゆったりとした空気が、いつもより甘くなった気がした。
いつものごとく、クマの頭をかみちぎるミニーを横目に、フッと笑う。ガキの頃から、変わらない好みに変わらない食い方。
それなのに、ミニーはもう、確実にガキではない。
「ヒーター入れるか?」
問いかければ、小さく首を振る。シートがデカすぎるせいで、足がぶらぶらしていて、まるで人形みたいに小さく見える。
「すぐそこだから、大丈夫」
赤信号で車を止めれば、当たり前のように顔の前に差し出される、クマのグミ。迷うことなく、彼女の指ごと口に含めば、キャアキャアと笑われる。
付き合う前と同じ光景でも、確実にそこにある熱の温度は高まっている。ゴクリ、とクマを呑み込んだ瞬間、俺の喉の動きをこっそり眺めるミニーに気づいて、思わずハンドルを握る手に力がこもった。
唇を開けば、大きな舌で口の中を支配されて、吸える空気はセバスチャンが吐き出した熱い息だけ。その熱量に、くらくらしてしまう。
ようやく解放された時には、私はすっかりセバスチャンのキスに溶かされてしまっていた。
「セビー?」
激しい口づけの余韻のせいで膝がかくつく。倒れないで済んでいるのは、彼が丸太のような腕でがっしりと私の両脇を支えてくれているから。
「もう、行ったな」
ぼそり、とつぶやかれた言葉に、一度首をかしげる。
少し考えてようやく、ジェイクの存在を思い出した。そういえば、彼はもうすっかり練習に戻ってしまっている。
再び、セバスチャンの顔を見上げる。心なしか強張った顎の筋肉を、チョイ、と指でなぞった。
「ねえ、セビー? なんでこんなに顎に力が入ってるの?」
コクリ、と反対方向に首をかしげて、じっと彼の瞳を見つめた。パチリ、パチリ、と瞬きをしてから、セバスチャンは諦めたように笑みを漏らした。
「あー、無意識だな。まあ、要は……嫉妬だ。前にも言っただろ? 俺は嫉妬深いし独占欲の塊だって」
彼の言葉を思い出しながら、ゆっくりと頷く。
確かに、初めてキスをしたあの夜、彼はそう言っていた。あの時はセバスチャンが嫉妬なんてって思ったけど、こうやって目の前でその光景を拝めるとは。
なんだか、貴重で嬉しい。
「もう付き合ってるのに、嫉妬?」
フフフ、と笑いながら問いかければ、彼の掌が私の頬をそっと包んだ。
「付き合っていようが付き合っていまいが、そんなの嫉妬には関係ない。過保護で悪かったな。でも、他の誰にもこんな風に感じたことはない。こうやって嫉妬するのも必死になるのも、全部ミニーだけだ」
まっすぐな瞳でそう言われて、心がこそばゆくなる。
「セビーだけだよ。私には、セビーだけ」
そう言いながら、ゆっくりとかかとを床から浮かせる。背伸びをした私の唇は、簡単にセバスチャンのそれに吸い込まれていく。
「そうだ。俺だけだ。俺だけ見てろ。ずっと、な。俺もずっと、お前の傍にいるって約束するから」
彼の言葉に頷いて、再び背伸びをしてキスを落とす。離れようとした瞬間、後頭部に回った彼の手がぐっと、私を再び彼の方へと引き寄せる。より一層深くなった口付けの後、彼は何食わぬ顔でそのまま練習へと戻ってしまった。一人取り残された私は、へなへなとベンチに座り込んだ。
……セバスチャンの愛のささやきには、なかなかな効果があるみたいだ。そっと胸に手を当てれば、自分の心臓がどれだけ大きな音を立てているかがよく分かる。頬に手を当てれば、自分の頬がどれほどに熱を持っているかがよく分かる。
もう私の全身が、セバスチャンの言葉に、存在に、反応している。
まったくもう、とんでもないことをしてくれたものだ。
それからしばらく、セバスチャンの練習が終わるのを見届けてから、彼が着替えとシャワーを済ませて戻ってくるのを、一人で待つ。
私のピンクのスタンレーの横には、それより一回り大きいセバスチャンのスタンレー。こうやって少しずつ、お互いの「一緒」が増えていく。お互いの一部がお互いになっていく。これが、付き合うってことなのかな。
「待たせたな」
小走りでやって来るセバスチャンを、両手を広げて出迎える。抱きしめられるだけじゃなくて、あの力強い腕でギュッとされた上にスッと持ち上げられて、それが嬉しくて私ももっとギュッと彼の首に抱き着く。
「早くシャンプー買いに行こ?」
再び地上に着地してから、彼の手をそっと握る。当たり前のようにセバスチャンの肩にかけられた私のリュックのポケットに、スマートフォンを突っ込む。
「ダウンタウンの方のドラッグストアでいいか? あっちの方が広いだろ?」
駐車場までの道を、つながれた手を揺らしながら歩く。夕日に照らされてアスファルトに伸びる私たちの影の長さの違いに、ついつい笑ってしまう。
「これ、写真に撮って?」
私たちの影を指させば、セバスチャンは苦笑しながら私のスマートフォンでその光景を写真に収めてくれる。特別じゃないけど、優しい時間。最近の私のお気に入りだ。
セバスチャンが開けてくれた扉から、彼の車の助手席によいしょとよじ登る。彼の車はフルサイズのSUVだから、いつも乗り込むのに少し苦労する。でも、車高が高い分、他の車を見下ろす感じになるから、なんだか背が高くなった気分になって、楽しい。
「やっぱり車、運転できた方がいいのかな?」
隣のレザーシートにサッと腰を下ろすセバスチャンを見上げながら、問いかける。
「お前はまだおチビだから免許持ってないもんな」
ハンドルを握りながらフッと笑われて、頬を膨らませる。
「また子ども扱いだ!」
フン、と胸の前で腕を組めば、さらに大きな声で笑われる。
「ダッシュボードにクマのグミ、入れといたぞ」
彼の言葉を聞いて、迷いなくダッシュボードを開く。いつもの袋入りじゃなく、それよりも大きなプラスチックの容器に入ったグミに、私は歓喜の声を上げた。
「これ、いつか抱えながら食べたいと思ってたんだよねー」
シシシ、と笑いながら、グミの容器を抱え込む。
まずは頭を食いちぎってから、今度は足を食いちぎって、最後に胴体を食べる。それが私のいつもの食べ方だ。そして赤信号になったら、セバスチャンの口の中に放り込む。これも、いつもの私たちのやり方。私たちが付き合い始める前、セバスチャンが車の免許を取ってから、ずっと。
「ミニーは免許なんて取らなくていい」
目の前の信号が青に変わったそのタイミングで、セバスチャンは言った。首を傾げながら、再びクマの頭を食いちぎる。
「なんで?」
「これからずっと、お前の指定席は俺の助手席だ。だから、免許なんていらないだろ」
セバスチャンの言葉に、私は小さく微笑んだ。
「……セビーは私に甘いね。このグミより甘い」
そう言いながら、私はクマの足をかみちぎった。
車の中を流れるこのゆったりとした空気が、いつもより甘くなった気がした。
いつものごとく、クマの頭をかみちぎるミニーを横目に、フッと笑う。ガキの頃から、変わらない好みに変わらない食い方。
それなのに、ミニーはもう、確実にガキではない。
「ヒーター入れるか?」
問いかければ、小さく首を振る。シートがデカすぎるせいで、足がぶらぶらしていて、まるで人形みたいに小さく見える。
「すぐそこだから、大丈夫」
赤信号で車を止めれば、当たり前のように顔の前に差し出される、クマのグミ。迷うことなく、彼女の指ごと口に含めば、キャアキャアと笑われる。
付き合う前と同じ光景でも、確実にそこにある熱の温度は高まっている。ゴクリ、とクマを呑み込んだ瞬間、俺の喉の動きをこっそり眺めるミニーに気づいて、思わずハンドルを握る手に力がこもった。
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