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第1章「結城湊斗はどこか世話焼き」
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「いてて……」
保健室。不良集団にボコボコにされて疲弊したオレは平気だと伝えたにも関わらず、目に涙を浮かべながら頬を膨らませて怒る柊の健気さに抗えず、結局お世話になることになった。
「初日から怪我して保健室に来るだなんて。人生で2人目よ。あなたのような生徒は」
少し歳を感じさせる保健の女性教師が呆れた様子で言う。
「ははは……。すみません」
乾いた笑いしか出てこない。
てか、他にもいたのかそんな生徒。てっきりオレくらいなものだと思ってたが。
「……、迷惑でしたか?」
胸の前で両手を握りながらおずおずと柊は尋ねる。
その台詞普通はオレのなんだけどな。
「あら、迷惑だなんて思わないわ。それにね、例え迷惑があったとしても子供は大人に迷惑を掛けながら成長していくものなの。多少のことくらいは目を瞑りますとも。ね、五十嵐先生?」
そう言って優しく微笑む保健教師に筋肉教師五十嵐も深く頷く。
ちなみにこの五十嵐先生と呼ばれた教師は今朝オレが職員室で世話になった人だ。
どうやらオレを探してここまできたらしい。
「だからね、いつか貴方たちが大人になった時も多少のことは大目に見てあげてくれると嬉しいわ」
まるで我が子を諭すように優しい口調で語りかける保健教師。
なんだろう、この感覚。凄くムズムズする。
でも、決して悪い気分じゃない。
「結城、向こうは向こうで他の先生方が対応してくれているが、何があったのかお前の口からも説明してくれるか?」
五十嵐先生がいつにもなく真面目な顔つきになって尋ねてくる。
「えーっと……教室で急に絡まれてボコボコにされました」
「ほう、なるほど。だが、おかしいな?」
顎に手を当てて考え込むような素振りを見せる五十嵐先生。
何が? とオレが疑問を抱いていると五十嵐先生は言葉を続けた。
「俺の気のせいじゃなければだが、お前たちが2人して学校を出ていく姿を見かけた気がしてな?てっきり早退したもんだとばかり思っていたが」
「老眼なんじゃないですか?」
「確かにな。最近視力が落ちたのかぼやけて見えることが多いし……ってやかましいわ。後はそう、始業式でもお前たちの姿を見なかった気がしてな」
「……気のせいっすよ」
目を逸らしつつ真実を否定するオレ。
あのまま学校をサボったとか絶対に言えない。
確かこの学校は放課後まで無断で外に出ることは禁止されてた気がするし、なによりも今回は柊が一緒だ。
余計に言えるわけがなかった。
何かないか?良い感じに騙せそうなものは?
「……先生、ごめんなさい。サボりました」
オレが言い訳を模索している間に淡々と柊が事実を述べる。
いやいや、お前がバラすんかーい。
「……、私が無理やり結城くんを付き合わせたんです」
「は?」
何を言ってるんだ、コイツは?
もしかしてオレのことを庇おうとしてる?
「アホか」
痛くない程度に手加減した上でビシッと柊の額にチョップをお見舞いする。
「いたっ」
と、デコを押さえつつ恨めしげにこちらを上目遣いしてくる柊にオレは溜息をついた。
「オレが提案したんです。教室は居心地が悪いって柊が言ってたんで。なら、外で暇潰そうってオレが言って。嫌な奴と無理に同じ空間に居続けてもストレスが溜まるだけだと思って」
「……なるほど」
あまり詳しく説明はしなかったが、五十嵐先生は何かを察したように頷く。
「確かにお前の意見は一理ある。だが、放課後でもないのに無断で学校から出るのは校則違反だということは理解しているな?」
「勿論」
五十嵐先生の問いかけに対して素直に答える。
重々承知の上だった。
そして柊もまた、それを理解した上でオレに付き合ってくれたはずだ。
な、柊?
「……」
オレが振り向いた瞬間、なぜか顔を背けられてしまった。
おい、待て待て。なぜそこで目を逸らすんだ柊。
知らなかったとか言わないよな?
頼むから知っててくれ頼むから。
「反省文だ。今日書いて明日必ず持ってこい。持ってこなかった場合は……わかるな?」
五十嵐先生がそう言うとオレたちの前に原稿用紙が置かれる。
あれ?ちょっと待て。なんかオレの方が多くない?
なんでー?おかしくなーい?
心の中で抗議するも虚しく、結局オレは柊と共に職員室を後にしたのだった。
保健室。不良集団にボコボコにされて疲弊したオレは平気だと伝えたにも関わらず、目に涙を浮かべながら頬を膨らませて怒る柊の健気さに抗えず、結局お世話になることになった。
「初日から怪我して保健室に来るだなんて。人生で2人目よ。あなたのような生徒は」
少し歳を感じさせる保健の女性教師が呆れた様子で言う。
「ははは……。すみません」
乾いた笑いしか出てこない。
てか、他にもいたのかそんな生徒。てっきりオレくらいなものだと思ってたが。
「……、迷惑でしたか?」
胸の前で両手を握りながらおずおずと柊は尋ねる。
その台詞普通はオレのなんだけどな。
「あら、迷惑だなんて思わないわ。それにね、例え迷惑があったとしても子供は大人に迷惑を掛けながら成長していくものなの。多少のことくらいは目を瞑りますとも。ね、五十嵐先生?」
そう言って優しく微笑む保健教師に筋肉教師五十嵐も深く頷く。
ちなみにこの五十嵐先生と呼ばれた教師は今朝オレが職員室で世話になった人だ。
どうやらオレを探してここまできたらしい。
「だからね、いつか貴方たちが大人になった時も多少のことは大目に見てあげてくれると嬉しいわ」
まるで我が子を諭すように優しい口調で語りかける保健教師。
なんだろう、この感覚。凄くムズムズする。
でも、決して悪い気分じゃない。
「結城、向こうは向こうで他の先生方が対応してくれているが、何があったのかお前の口からも説明してくれるか?」
五十嵐先生がいつにもなく真面目な顔つきになって尋ねてくる。
「えーっと……教室で急に絡まれてボコボコにされました」
「ほう、なるほど。だが、おかしいな?」
顎に手を当てて考え込むような素振りを見せる五十嵐先生。
何が? とオレが疑問を抱いていると五十嵐先生は言葉を続けた。
「俺の気のせいじゃなければだが、お前たちが2人して学校を出ていく姿を見かけた気がしてな?てっきり早退したもんだとばかり思っていたが」
「老眼なんじゃないですか?」
「確かにな。最近視力が落ちたのかぼやけて見えることが多いし……ってやかましいわ。後はそう、始業式でもお前たちの姿を見なかった気がしてな」
「……気のせいっすよ」
目を逸らしつつ真実を否定するオレ。
あのまま学校をサボったとか絶対に言えない。
確かこの学校は放課後まで無断で外に出ることは禁止されてた気がするし、なによりも今回は柊が一緒だ。
余計に言えるわけがなかった。
何かないか?良い感じに騙せそうなものは?
「……先生、ごめんなさい。サボりました」
オレが言い訳を模索している間に淡々と柊が事実を述べる。
いやいや、お前がバラすんかーい。
「……、私が無理やり結城くんを付き合わせたんです」
「は?」
何を言ってるんだ、コイツは?
もしかしてオレのことを庇おうとしてる?
「アホか」
痛くない程度に手加減した上でビシッと柊の額にチョップをお見舞いする。
「いたっ」
と、デコを押さえつつ恨めしげにこちらを上目遣いしてくる柊にオレは溜息をついた。
「オレが提案したんです。教室は居心地が悪いって柊が言ってたんで。なら、外で暇潰そうってオレが言って。嫌な奴と無理に同じ空間に居続けてもストレスが溜まるだけだと思って」
「……なるほど」
あまり詳しく説明はしなかったが、五十嵐先生は何かを察したように頷く。
「確かにお前の意見は一理ある。だが、放課後でもないのに無断で学校から出るのは校則違反だということは理解しているな?」
「勿論」
五十嵐先生の問いかけに対して素直に答える。
重々承知の上だった。
そして柊もまた、それを理解した上でオレに付き合ってくれたはずだ。
な、柊?
「……」
オレが振り向いた瞬間、なぜか顔を背けられてしまった。
おい、待て待て。なぜそこで目を逸らすんだ柊。
知らなかったとか言わないよな?
頼むから知っててくれ頼むから。
「反省文だ。今日書いて明日必ず持ってこい。持ってこなかった場合は……わかるな?」
五十嵐先生がそう言うとオレたちの前に原稿用紙が置かれる。
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