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第3章「柊南帆は凄く頑張り屋」
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「さてと」
放課後になり、教室にほとんどの生徒が居なくなった頃。
オレは鞄を持って立ち上がり、窓から外を見る。
中庭では花壇を手入れしている園芸部の姿があり、吹奏楽部の楽器の音や運動部の掛け声などが聞こえてくる。
平和だなぁ……と思いながら、オレは教室を出た。
放課後は大抵用事はない。
毎回矢渕の誘いは断るし、萩元は他の友人と帰っているらしいし。
青春は与えられるものではなく、見つけるものとはいえ、これじゃあ昔のオレとあまり変わっていない気がする。
今度柊でも誘ってみるか?
いや、でも断られたら普通にショックだし……。
自分も相手も傷つかない方法を取るならやはり何もしないのがベストか。
そんなことを考えながら、下駄箱で靴に履き替えていると―――。
「……、うわ」
露骨に嫌そうな顔をした蟻塚と遭遇した。
まるで汚物を見るかのような目だ。
トラウマが蘇りそうになるのをぐっと堪える。
「なんで合宿行かないんだ?」
素直な疑問を尋ねると、蟻塚は不機嫌そうに舌打ちをした。
お前と話すことなんてない、とでも言いたいんだろう。
だが、その態度が逆にオレに火をつけた。
「楽しいかもしれないぞ?意外と」
「……」
上履きをロッカーに入れ、わざとらしく強めに扉を閉める蟻塚。
それから外履きに履き替え、こちらに一度たりとも目を合わせようとせず蟻塚はオレの横を通り過ぎて行こうとする。
しかし、それを許すほどオレは甘くなかった。
「また逃げんのかよ」
オレの言葉に足を止める蟻塚。
振り返ることはしないが、向こうも何かしら思うところがあるようだ。
だからといってオレの方から歩み寄ることは絶対にしないが。
「自分の手は汚さずに責任から逃げて、今度は柊の挑戦から逃げて。ダサい真似してんなよ。そんなんじゃ復讐したい側も拍子抜けだぞ」
我ながら自分勝手な台詞ではあるが、この際どう思われようが構わない。
ここでこいつに少しでも響かせることができればそれでいいのだ。
「あの子がどう思おうが私には関係な……っ!?」
気付けばオレは頭を下げていた。
自分でも正直驚くが、これから言おうとしていることは紛れもなくわがままで、きっと受け入れてもらえないだろうということが分かっているからだ。
だからこそ誠意を見せるためにオレは頭を深く下げる。
「……柊に復讐するチャンスをあげてやってくれないか?いや、復讐っていうと大袈裟かもしれないから見返すでも良い」
理解されないかもしれない。
納得されないかもしれない。
だが、諦めたらそこで全て終わる。
お互いを知る為には、理解し合う為にはまずぶつかり合わなければならない。
それがたとえどんな結果になろうとも。
少しの間があった後、蟻塚の溜息が聞こえてきた。
顔を上げると、呆れた様子の彼女がそこにはいた。
だが、先程までの嫌悪感に満ちた表情ではない。
蟻塚は特に何も言わず、そのまま校舎から出て行く。
結局返事を聞くことはできなかったが、まぁいいだろう。
あとは本人次第だ。
もしこれで駄目だったなら、その時はその時だ。
放課後になり、教室にほとんどの生徒が居なくなった頃。
オレは鞄を持って立ち上がり、窓から外を見る。
中庭では花壇を手入れしている園芸部の姿があり、吹奏楽部の楽器の音や運動部の掛け声などが聞こえてくる。
平和だなぁ……と思いながら、オレは教室を出た。
放課後は大抵用事はない。
毎回矢渕の誘いは断るし、萩元は他の友人と帰っているらしいし。
青春は与えられるものではなく、見つけるものとはいえ、これじゃあ昔のオレとあまり変わっていない気がする。
今度柊でも誘ってみるか?
いや、でも断られたら普通にショックだし……。
自分も相手も傷つかない方法を取るならやはり何もしないのがベストか。
そんなことを考えながら、下駄箱で靴に履き替えていると―――。
「……、うわ」
露骨に嫌そうな顔をした蟻塚と遭遇した。
まるで汚物を見るかのような目だ。
トラウマが蘇りそうになるのをぐっと堪える。
「なんで合宿行かないんだ?」
素直な疑問を尋ねると、蟻塚は不機嫌そうに舌打ちをした。
お前と話すことなんてない、とでも言いたいんだろう。
だが、その態度が逆にオレに火をつけた。
「楽しいかもしれないぞ?意外と」
「……」
上履きをロッカーに入れ、わざとらしく強めに扉を閉める蟻塚。
それから外履きに履き替え、こちらに一度たりとも目を合わせようとせず蟻塚はオレの横を通り過ぎて行こうとする。
しかし、それを許すほどオレは甘くなかった。
「また逃げんのかよ」
オレの言葉に足を止める蟻塚。
振り返ることはしないが、向こうも何かしら思うところがあるようだ。
だからといってオレの方から歩み寄ることは絶対にしないが。
「自分の手は汚さずに責任から逃げて、今度は柊の挑戦から逃げて。ダサい真似してんなよ。そんなんじゃ復讐したい側も拍子抜けだぞ」
我ながら自分勝手な台詞ではあるが、この際どう思われようが構わない。
ここでこいつに少しでも響かせることができればそれでいいのだ。
「あの子がどう思おうが私には関係な……っ!?」
気付けばオレは頭を下げていた。
自分でも正直驚くが、これから言おうとしていることは紛れもなくわがままで、きっと受け入れてもらえないだろうということが分かっているからだ。
だからこそ誠意を見せるためにオレは頭を深く下げる。
「……柊に復讐するチャンスをあげてやってくれないか?いや、復讐っていうと大袈裟かもしれないから見返すでも良い」
理解されないかもしれない。
納得されないかもしれない。
だが、諦めたらそこで全て終わる。
お互いを知る為には、理解し合う為にはまずぶつかり合わなければならない。
それがたとえどんな結果になろうとも。
少しの間があった後、蟻塚の溜息が聞こえてきた。
顔を上げると、呆れた様子の彼女がそこにはいた。
だが、先程までの嫌悪感に満ちた表情ではない。
蟻塚は特に何も言わず、そのまま校舎から出て行く。
結局返事を聞くことはできなかったが、まぁいいだろう。
あとは本人次第だ。
もしこれで駄目だったなら、その時はその時だ。
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