【完結】可愛そうなアリンコ聖女に可哀そうなキラキラ侯爵様が離縁したくないと泣きついてきたんだけど⁉ 【番外編あり】

水星 とも

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02 女神様との出会い 【私が結婚するまで①】

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 私、アリーシア・ベルツは、王都から遠く離れた、小さな領土持ちの男爵家に生まれた。
 3世代がこじんまりとした屋敷に住み、使用人は通いの領民二人だけ。


 元々女神ソフィア様を最高神と掲げる、神殿の要職を代々務める家柄であり、その頃は伯爵位を賜り、王都に屋敷もあった。
 ご先祖には神官長を務めた人物もおり、神殿内では一目をおかれる家柄でもあったのだ。
 だがある時代、神官同士の派閥争いに巻き込まれ失脚。
 要職を解かれ、男爵位に降格された上、辺境の小さな土地に追いやられた。

 しかし、敬虔なソフィア様の信者であったご先祖様は、これも女神様の思し召しと、腐ることなく領民と力を合わせ細々と暮らし始めた。




 そんな質素かつ穏やかな日々に、異変が起こったのは今から2代前、つまり私のひいおじい様の時代。

 未曾有の水害に見舞われ、作物は全滅し多くの餓死者を出し、領主たる男爵家族すら食べるのに、こと欠く事態に陥った。
 そこでひいおじい様は持てる資産全て、宝飾品、調度品、家具、馬車、馬、売れるもの全て売り払い領民を救った。

 だがその結果一文無しとなり、貴族としての体面を保つことも、できなくなったのだ。



 加えて元々貧しい土地柄、領民の復興もカメの歩み、その後の納税も引き下げるしかなく……私がもの心ついた頃には、領主でありながら自分たちが食べる食物は、庭にある畑で自ら育て、鶏、ヤギを飼い、男爵とは名ばかり、田舎の農家と変わらない生活をしていた。

 領民は私財を投げ売ったひいおじい様、その後も税を引き下げたままの男爵家に、とても感謝と敬意を払ってくれ、何かと手助けをしてくれる。
 畑の管理はもちろん、屋敷の掃除や料理をしてくれる通いの使用人は、領民の持ち回りで無償でやってくれている。



 生まれた時からこんな生活だったので、貴族家として貧しすぎるなんて、王都に行くまで思ったこともなかった。
 3世代でぎゅうぎゅうな屋敷の中、家族はものすごく仲が良くて、領民の大人には何かと世話を焼かれ、村の子供たちはみな友達。

 今ある幸せに感謝し、身の丈に合った生活を良しとする、田舎すぎて他に比べるような生活を知らなかった私は……
 本当に幸せな子供時代を送ったと思う。




 そう、この幸せは女神ソフィア様のおかげ。

 ソフィア様を最高神とする女神信仰は、我がデリウス国の国教であり、国民のほとんどがその信仰者だ。
 王都にある女神神殿を中心に、地方に4つの神殿が存在しており、国民の心の拠り所となっている。

 そして、我がベルツ男爵家もご先祖様が、神殿の要職を務めた家柄とあって、敬虔な信者であり、その領民たちもまたしかり。
 そんな中で育った私だが、その信仰心以上に、ソフィア様に並々ならぬ思い入れがある。

 と言うのは、私は~おそらく3才頃だったと思う~女神様に、お会いしたことがあるからだ。




 そこは自宅屋敷の庭の片隅で、私は花を摘んでいた。
 目の前に現れたのは、それは、それは、美しい白い髪の女性。

 肌は抜けるほど白く、陽光を受けてキラキラと輝く瞳はピンク色。
 白いシンプルなドレスに身を包み、うっすらと朱に色づく唇は優雅な孤を描き、その麗しさは屋敷の祭壇に飾られている女神像の姿そのもの。

 こんな奇麗な女性を見たのは生まれて初めてで、目を見開き口を開けたまま固まってしまった私に、女神様は優しく声をかけて下さった。

「アリーシア」

 さすが、女神様。
 私の名前をご存じなのだと、感動したのを覚えている。


 それからも何度か庭でお会いしていたある日、小さな赤い石の付いたペンダントを下さった。

「このペンダントをずーっとつけておきなさい。決して外してはいけない。人にあげてもいけない。大人になるまで、ずっと肌身離さずつけておきなさい」

 そう言いながら、自らの手で私の首にかけて下さった。

「良く似合うよ」

 ゆっくりと私の頬を撫でる、少し冷たい女神様の手のひらの感触が、忘れられない。



 その後も、たびたび女神様はご降臨下さったが、ある日突然別れを告げられた。

「私はしばらくそなたの側を離れる。だが待っておいで。必ず迎えに行くからね。それまで元気に過ごして……早く大きくおなり」

 そのお言葉を最後に、女神様にお会いすることはなくなった。

 それからはお言葉どおり、そのペンダントを肌身離さず、ずっとつけている。
 一度、母にこれはどうしたのかと尋ねられたが「拾った」と言えば、何も言われなかった。
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