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04 み、見初められたって⁉ 【私が結婚するまで③】
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「犬が好きなの?」
声は男性。
低い声だが、なぜか甘く包み込むよう……
背が高く、私の身長はその人の胸ほどしかない。
真っ黒なフード付きのマントをかぶり、顔の半分をスカーフで隠している。
わずかに見えたその目もとの目線が、私の手元にあったので、その質問は石の置物だと理解する。
「えぇ。飼っていた子に似ていたので。」
「そう。」
何故かその黒い人の声音は嬉しそう。
そして気付く。
ここは店の外で、犬の置物は店員が壊れないように、紙に包んでくれたから、犬とは分からない。
店内にいる時から、ずっと見られてた?
怖くなって、先に出ていた聖女の友達の方に逃げ出す。
白い衣の聖衣は聖女の証。
この国の人は聖女には、危害を加えない。
今日の私は聖衣を着ている。
「だ、大丈夫だよね?」
手が少しふるえた。
でも大丈夫では、なかったのだ。
『女神の花祭り』の一週間後、恐るべきことが起こった。
朝の祈りを終え、今日は神具を磨く当番だったなと、汚れるから聖衣から着替えようと自室に戻ろうとした時だ。
「聖女アリーシア・ベルツ。神官長様がお呼びです。」
呼びかけてきたのは神官長様の秘書官様。
神殿には神聖力によって、明確なヒエラルキーがある。
約200人いる聖女の中で
120人の下級聖女。
50人の中級聖女。
15人の上級聖女。
5人の大聖女。
そして神聖力はないが、神殿の運営を担う神官の方が50人ほどいる。
その神官の長にして、神殿のトップに君臨するのが神官長様だ。
そして現在の神官長様は、第2王子殿下で男性である。
その王族神官長様が、おそらく名前はおろか顔も認識していない、下級聖女120人の中一人を呼び出すとは…私は何をしてしまったんだろう―‐!
解任だとしても、上級聖女から告げられるはず……
私の顔色は一気に蒼白になったのだろう。
呼び出しを告げた秘書官様は、先ほどの慇懃な口調ではなく
「そんなに怖がらないで。悪い話じゃないから……いや君にとってはどうなんだろうか」
なんて訳の分からないことを言ってくるから、さらにびびってしまう。
震えながら秘書官様の案内で、神官長様の執務室に通される。
神官長様は……第2王子殿下は、王族らしく黄金の髪も麗しい20代の青年だった。
そこで、告げられたのは、驚くべき話。
この私に、さる方が求婚されていると……!
「君を『女神の花祭り』の時に、市井で見初めたそうだ」
思い浮かぶのは「犬が好きなのか?」と問いかけてきた、黒いマントを着た長身の男性。
「リヒター侯爵家当主レオンハルト殿が、下級聖女アリーシア・ベルツを妻に娶りたいそうだ」
びっくりした!
本当にびっくりした!
30秒くらい固まってしまうほど……
リヒター侯爵家当主レオンハルト様!は、その美貌と博識で、貴族なら知らぬものはいない有名なお方だ。
白皙の美青年として、貴族令嬢の人気を一身に集め、28才の若輩ながら貴族議会の顧問として執政にも大きな影響力を持ち、国王陛下、王太子殿下からの信頼も厚いと聞く。
……もちろんお顔を拝したこともないし、正直雲の上の人すぎてこんな薄っぺらな情報しか知らないけど。
「わ、私を? ……人違いではないのですか?」
「うん……私もそう思って尋ねたら、間違いないと。それで明日、王宮に部屋を用意したから、顔合わせをしたいと言っててね」
「はぁ」
「だから、明日の夕方の祈りはしなくていいよ。15時に迎えをよこすと言ってたし」
「はぁ……」
「それと基本、外出禁止の聖女が聖衣で王宮にいちゃまずいから、これを着てきてって」
渡されたのは大きな箱。
中には黒いレースがふんだんに使われた濃い赤紫色のドレス。
そして、黒いレースのインナービスチェに、黒のガーターベルト、黒ストッキング、ガラスビーズがキラキラと輝く黒い絹の靴が入っていた。
なんだ、この妖艶熟女なラインナップ。
声は男性。
低い声だが、なぜか甘く包み込むよう……
背が高く、私の身長はその人の胸ほどしかない。
真っ黒なフード付きのマントをかぶり、顔の半分をスカーフで隠している。
わずかに見えたその目もとの目線が、私の手元にあったので、その質問は石の置物だと理解する。
「えぇ。飼っていた子に似ていたので。」
「そう。」
何故かその黒い人の声音は嬉しそう。
そして気付く。
ここは店の外で、犬の置物は店員が壊れないように、紙に包んでくれたから、犬とは分からない。
店内にいる時から、ずっと見られてた?
怖くなって、先に出ていた聖女の友達の方に逃げ出す。
白い衣の聖衣は聖女の証。
この国の人は聖女には、危害を加えない。
今日の私は聖衣を着ている。
「だ、大丈夫だよね?」
手が少しふるえた。
でも大丈夫では、なかったのだ。
『女神の花祭り』の一週間後、恐るべきことが起こった。
朝の祈りを終え、今日は神具を磨く当番だったなと、汚れるから聖衣から着替えようと自室に戻ろうとした時だ。
「聖女アリーシア・ベルツ。神官長様がお呼びです。」
呼びかけてきたのは神官長様の秘書官様。
神殿には神聖力によって、明確なヒエラルキーがある。
約200人いる聖女の中で
120人の下級聖女。
50人の中級聖女。
15人の上級聖女。
5人の大聖女。
そして神聖力はないが、神殿の運営を担う神官の方が50人ほどいる。
その神官の長にして、神殿のトップに君臨するのが神官長様だ。
そして現在の神官長様は、第2王子殿下で男性である。
その王族神官長様が、おそらく名前はおろか顔も認識していない、下級聖女120人の中一人を呼び出すとは…私は何をしてしまったんだろう―‐!
解任だとしても、上級聖女から告げられるはず……
私の顔色は一気に蒼白になったのだろう。
呼び出しを告げた秘書官様は、先ほどの慇懃な口調ではなく
「そんなに怖がらないで。悪い話じゃないから……いや君にとってはどうなんだろうか」
なんて訳の分からないことを言ってくるから、さらにびびってしまう。
震えながら秘書官様の案内で、神官長様の執務室に通される。
神官長様は……第2王子殿下は、王族らしく黄金の髪も麗しい20代の青年だった。
そこで、告げられたのは、驚くべき話。
この私に、さる方が求婚されていると……!
「君を『女神の花祭り』の時に、市井で見初めたそうだ」
思い浮かぶのは「犬が好きなのか?」と問いかけてきた、黒いマントを着た長身の男性。
「リヒター侯爵家当主レオンハルト殿が、下級聖女アリーシア・ベルツを妻に娶りたいそうだ」
びっくりした!
本当にびっくりした!
30秒くらい固まってしまうほど……
リヒター侯爵家当主レオンハルト様!は、その美貌と博識で、貴族なら知らぬものはいない有名なお方だ。
白皙の美青年として、貴族令嬢の人気を一身に集め、28才の若輩ながら貴族議会の顧問として執政にも大きな影響力を持ち、国王陛下、王太子殿下からの信頼も厚いと聞く。
……もちろんお顔を拝したこともないし、正直雲の上の人すぎてこんな薄っぺらな情報しか知らないけど。
「わ、私を? ……人違いではないのですか?」
「うん……私もそう思って尋ねたら、間違いないと。それで明日、王宮に部屋を用意したから、顔合わせをしたいと言っててね」
「はぁ」
「だから、明日の夕方の祈りはしなくていいよ。15時に迎えをよこすと言ってたし」
「はぁ……」
「それと基本、外出禁止の聖女が聖衣で王宮にいちゃまずいから、これを着てきてって」
渡されたのは大きな箱。
中には黒いレースがふんだんに使われた濃い赤紫色のドレス。
そして、黒いレースのインナービスチェに、黒のガーターベルト、黒ストッキング、ガラスビーズがキラキラと輝く黒い絹の靴が入っていた。
なんだ、この妖艶熟女なラインナップ。
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