【完結】可愛そうなアリンコ聖女に可哀そうなキラキラ侯爵様が離縁したくないと泣きついてきたんだけど⁉ 【番外編あり】

水星 とも

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05 初めての令嬢あつかいに震える 【私が結婚するまで④】

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「あいつ、下着まで用意するなんて、へんた……いや、ゴホゴホ」

 神官長様は、発言を咳でごまかしたけれど、私も正直ドン引きです。

「君一人で着れるように、簡素なドレスにしたって言ってたけど、色の主張が激しいな」

「……やっぱり人違いではありませんか? 私にこの色のドレスは、似合わないと思うのですが」

 私はザ平凡なダークブラウンの髪に、ダークブラウンの瞳。
 その他大勢にすっかり埋没する無個性さだ。
 その私を見初めたと言うなら、似合う色など皆の憧れ貴公子たるキラキラ侯爵様なら、熟知されているはず。

「……だよね~。君にはもっと淡い色が似あうよね~」

 ドレスを前に沈黙。

「でも、多分間違いないと思うし~明日は僕も同席するから、とりあえず会ってやってよ」


 私に断れるはずもない。





 次の日、昼食後外出の用意をする。

 ドレス自体は複雑な刺繍が施され、繊細なレースに縁どられた、一目で一級品だと分かる素晴らしいドレスだった。
 メイドの手がいらないように、コルセットが不要なエンパイヤスタイル。
 胸の下に切り替えがあり、そこからスカートがすとんと落ちるデザインだ。
 そして締めるボタンも背中ではなく、前身ごろにあり、そのボタンが見えないようにレースが覆い隠すようにデザインされている。
 なので、私一人でも着れた。

 ヘアスタイルは…実は私は自分で髪をまとめるのが得意なのだ。
 メイドなんていない貧乏男爵令嬢。
 だがおしゃれは好きだったので、スキルは自然と身についた。

「よし」

 久しぶりに可愛く髪をまとめてみた。
 両サイドを複雑な編み込みし、手持ちのリボンで飾り、ハーフアップにする。夜会ではないので、後ろ髪は下ろしていた方がいいだろう。
 聖女としては、華美を好まれないのでいつもはそのまま流すか、一つにまとめるしかできなかったので、楽しかった。
 だが……

 赤紫色のドレスが激しく似合わない!
 髪型によっては似合うようになるかも~と思ったが、無駄だったようだ。





 コンコン。響くノックの音。

「聖女アリーシア・ベルツ。迎えの馬車が来ました。準備はいいですか?」

「はい」

 ドアを開けると、昨日神官長様の執務室まで、案内してくれた秘書官様がいた。

 その方の先導で廊下を進む。
 聖女たちは夕方の祈りの準備の時間なので、誰もいない。

 静まり返る神殿の回廊に私のドレスの衣擦れの音と、久しぶりに足を通したヒールの音が響く。
 結局、今回の話は何となく、友人の聖女たちにも言えなかった。





 玄関につけられたお迎えの馬車には、すでに神官長様が乗り込んでいらしたが、ドレス姿の私をまじまじと見て

「あぁ~うん。うん。こりぁまぁ~」

 そんな目を細めて、口を歪ませなくたって、分かってますよ。
 似合ってないって!

 ドレスを着てるからか馬車に乗り込む私に、秘書官様が手を貸して下さる。

 人生初めての貴族令嬢あつかいに、つかまるその手が震えてしまった。
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