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08 あれよあれよと聖女から還俗し婚約者に 【私が結婚するまで⑦】
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夢のような貴公子に、令嬢扱いされて愛を乞われて……衝撃的すぎてその後は、どんな話をしたか正直覚えていない。
ただ、神殿に戻る馬車で、神官長様に言われた言葉だけは覚えている。
「レオンハルトとは付き合いが長いけど、求婚するのは君が初めてなんだ。勧められてもあいつはずーっと結婚を渋っていたからね。王家は彼の意志を尊重するし、むしろ末端でも我が国の貴族令嬢ならもう~大歓迎なんだよ。王女のことは気にしないで! レオンはアレックスのこと、しょんべん臭いガキにしか思ってないから!」
王女殿下は私より2才年上ですが……しかも神官長様、口が悪すぎます。
その後も何度も、レオンハルト様に王宮でのお茶会に呼ばれたが、神官長様が同行して下さったのは3回まで。
その後は二人きりのお茶会となり、やがてそれにも慣れ、私にも心境の変化が訪れてきた。
恐れ多い方だと尻込みしていたのに、話しが弾むようになると……
「私の容姿に、濃い暗い色のドレスは似合わないんです」
「そうだよね。分かってるんだ。でも私の『色』を身に着けて欲しくて」
と、レッドパープル・アメジストの瞳を上目遣いにして、口を尖らせる。
センスの問題じゃなかったんですね……
そんな拗ねた素振りをするレオンハルト様の姿は、親近感がありちょっと可愛らしい。
社交界での噂は相変わらずの完璧キラキラ貴公子様だけど、二人きりの時の意外に思い込みの激しい、普通の青年らしい姿に、徐々に好感を覚えてきたのだ。
また、結婚に不安を感じている家族にも会うために、馬車で3日もかかる田舎の男爵領に何度も訪れても下さった。
そして、領民と話したり……一緒に畑仕事をしたり……
「これは大きな…石じゃなくてジャガイモ? そうだよね? すごいよ! 私、野菜を収穫したの初めてだ! 面白いね~! まだ世界には私の知らないことが、沢山あるんだね!」
ベルツ男爵家の窮状をバカにする訳ではなく、屋敷に滞在し共に暮らして、領民の要望の対応に父が悩んでいたら、適所でアドバイスを下さったり、さりげなく金銭的な援助の手も差し伸べて下さる。
そんな彼を恐れ多いと、求婚は本気かと、疑いながらも…
「女神様にお仕えするのも大事な役目。だがこの縁は女神様のお祭りで生まれた縁であり、きっと女神様のお導きであろう」と父が
「こんな高貴な方が真剣に貴女を望んで下さるなんて! アリーシア、不安だろうけど、これ以上の幸せなご縁はないんじゃないかしら」と母が
そして、妹たちにいたっては
「いいな~あんな美男子でお金持ち! 騙されたっていいじゃん! とりあえずお付き合いするべきよ!」
なんてすっかりほだされていて、王都に戻るころには、家族全員に婚約を後押しされるようになっていた。
そうして、17才の春、私は聖女の称号を返上、還俗し、男爵令嬢に戻った。
それと同時に、レオンハルト様と正式に婚約をした。
婚約式は主要貴族はもちろん、王家も参列され盛大に行われた。
だが……
緊張する私に、ブスブスと突き刺さる令嬢たちの恨みがこもった鋭い視線。
見下すような冷めた視線をよこすのは、高位貴族当主たち。
興味がなさそうに玉座で酒を飲むだけの国王陛下と王妃様。
「お前、幼女趣味だったのか?」とレオンハルト様をせせら笑ったのは、王太子殿下。
私を睨みつけるだけ睨みつけて、早々に退出したアレクサンドラ王女殿下。
隣に笑顔で威圧するレオンハルト様がいるので、あからさまな行動をする人はいないけれど……
夢見ごこちだった私は、正に冷水を浴びたよう。
レオンハルト様に熱心に求められ、浮かれすぎていたようだ。
思った以上にこの結婚は、社交界では歓迎されていないことを、この時初めて知った。
そして、神殿学校で学んだマナー教育では、侯爵夫人としては知識が乏しすぎるからと結婚するまでの1年間、リヒター侯爵家の屋敷に住み込み、夫人教育を受けることになった。
夫人教育は大変だった。
マナー、ダンス、歴史、地理、経理、それぞれに教師がつけられ、それとは別に貴族名鑑で名を覚え、系図を覚え、主要貴族の趣味、嗜好、はては性癖、スキャンダルまで覚え……それほど勉強が得意ではない私は、ものすごく苦労した。
そんな私を支えたのは……
レオンハルト様では、ない!!
ただ、神殿に戻る馬車で、神官長様に言われた言葉だけは覚えている。
「レオンハルトとは付き合いが長いけど、求婚するのは君が初めてなんだ。勧められてもあいつはずーっと結婚を渋っていたからね。王家は彼の意志を尊重するし、むしろ末端でも我が国の貴族令嬢ならもう~大歓迎なんだよ。王女のことは気にしないで! レオンはアレックスのこと、しょんべん臭いガキにしか思ってないから!」
王女殿下は私より2才年上ですが……しかも神官長様、口が悪すぎます。
その後も何度も、レオンハルト様に王宮でのお茶会に呼ばれたが、神官長様が同行して下さったのは3回まで。
その後は二人きりのお茶会となり、やがてそれにも慣れ、私にも心境の変化が訪れてきた。
恐れ多い方だと尻込みしていたのに、話しが弾むようになると……
「私の容姿に、濃い暗い色のドレスは似合わないんです」
「そうだよね。分かってるんだ。でも私の『色』を身に着けて欲しくて」
と、レッドパープル・アメジストの瞳を上目遣いにして、口を尖らせる。
センスの問題じゃなかったんですね……
そんな拗ねた素振りをするレオンハルト様の姿は、親近感がありちょっと可愛らしい。
社交界での噂は相変わらずの完璧キラキラ貴公子様だけど、二人きりの時の意外に思い込みの激しい、普通の青年らしい姿に、徐々に好感を覚えてきたのだ。
また、結婚に不安を感じている家族にも会うために、馬車で3日もかかる田舎の男爵領に何度も訪れても下さった。
そして、領民と話したり……一緒に畑仕事をしたり……
「これは大きな…石じゃなくてジャガイモ? そうだよね? すごいよ! 私、野菜を収穫したの初めてだ! 面白いね~! まだ世界には私の知らないことが、沢山あるんだね!」
ベルツ男爵家の窮状をバカにする訳ではなく、屋敷に滞在し共に暮らして、領民の要望の対応に父が悩んでいたら、適所でアドバイスを下さったり、さりげなく金銭的な援助の手も差し伸べて下さる。
そんな彼を恐れ多いと、求婚は本気かと、疑いながらも…
「女神様にお仕えするのも大事な役目。だがこの縁は女神様のお祭りで生まれた縁であり、きっと女神様のお導きであろう」と父が
「こんな高貴な方が真剣に貴女を望んで下さるなんて! アリーシア、不安だろうけど、これ以上の幸せなご縁はないんじゃないかしら」と母が
そして、妹たちにいたっては
「いいな~あんな美男子でお金持ち! 騙されたっていいじゃん! とりあえずお付き合いするべきよ!」
なんてすっかりほだされていて、王都に戻るころには、家族全員に婚約を後押しされるようになっていた。
そうして、17才の春、私は聖女の称号を返上、還俗し、男爵令嬢に戻った。
それと同時に、レオンハルト様と正式に婚約をした。
婚約式は主要貴族はもちろん、王家も参列され盛大に行われた。
だが……
緊張する私に、ブスブスと突き刺さる令嬢たちの恨みがこもった鋭い視線。
見下すような冷めた視線をよこすのは、高位貴族当主たち。
興味がなさそうに玉座で酒を飲むだけの国王陛下と王妃様。
「お前、幼女趣味だったのか?」とレオンハルト様をせせら笑ったのは、王太子殿下。
私を睨みつけるだけ睨みつけて、早々に退出したアレクサンドラ王女殿下。
隣に笑顔で威圧するレオンハルト様がいるので、あからさまな行動をする人はいないけれど……
夢見ごこちだった私は、正に冷水を浴びたよう。
レオンハルト様に熱心に求められ、浮かれすぎていたようだ。
思った以上にこの結婚は、社交界では歓迎されていないことを、この時初めて知った。
そして、神殿学校で学んだマナー教育では、侯爵夫人としては知識が乏しすぎるからと結婚するまでの1年間、リヒター侯爵家の屋敷に住み込み、夫人教育を受けることになった。
夫人教育は大変だった。
マナー、ダンス、歴史、地理、経理、それぞれに教師がつけられ、それとは別に貴族名鑑で名を覚え、系図を覚え、主要貴族の趣味、嗜好、はては性癖、スキャンダルまで覚え……それほど勉強が得意ではない私は、ものすごく苦労した。
そんな私を支えたのは……
レオンハルト様では、ない!!
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