【完結】可愛そうなアリンコ聖女に可哀そうなキラキラ侯爵様が離縁したくないと泣きついてきたんだけど⁉ 【番外編あり】

水星 とも

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31 ビアンカ覚悟しろ!

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「どうして、どうしてなの? 私がレオンハルト様と結婚したから? いや、死ぬのは嫌!レオンハルト様とは離縁します! だからどうか命だけは助けて!」

 身体を震わせ、泣き叫び、床に這いつくばりながら懇願する。

「ふーん。離縁するんだね? 二度とレオンに近づかないと? その言葉、レオンに言えるの?」

 じりじりと這いつくばりながら、ビアンカに近づく。

「はい! はい! 何でも言うことを聞きます!」


 するとビアンカが、後ろに後退り始める。
 やっぱり……!


「だから命だけは……」

「分かった! この男二人の相手をしたら命までは取らないよ! だ、だから近づくんじゃない!」

「本当ですか?」

 這いつくばった姿勢からいきなり立ち上がり、ビアンカの前に立つ。

「ありがとうございます!」
 にっこり笑って、両手でビアンカの頬を包み込む。



 ジュジュジュ~!


 ビアンカの頬から白煙が上がった。


「ぎゃああああああ~!」


 部屋に充満するのは肉の焼け焦げた匂い……
 やっぱり大好きな、チキンソテーの匂いに似てるわね。

「離せ! 離せ!」

 思いっきり頬をなぐられ、頭が揺れる。
 しかし、離してなるものかと今度はビアンカに抱き着いてやる。


 ジュワワワ~!

「ぎゃぎゃぎゃあああああ!」

 ビアンカの豊満な胸も赤く焼け爛れていく。
 背中をものすごい力で殴られる。
 でも絶対離さない!


「ここはどこだ?」
「おれたちはいったい……」

 背後では二人の男が、おろおろとしている。
 良かった! 魅了魔法が解けたんだ!

 ビアンカに頭を殴られ、髪を引きちぎられ、背中を壁に打ち付けられる。
 だんだん意識がもうろうろしてくる。
 それでも絶対に離さない!

 そうしているうちにビアンカの力も弱くなり、やがて動かなくなり……





「アリーシア!」

 そして聞こえてきたのは、待っていた声。

「レ…オンハルト様」

「アリーシア! あぁアリーシア…! なんてひどい!」

 そんなに私、ズタボロなのかしら。
 痛みは全然感じないんだけど、血が目に入って見にくいわ。

「ごめん! ごめんね! 遅くなって……!」
 レオンハルト様の紫の瞳が、大洪水だ!

「その掴んでるの何?」

 抱きついていたものに目をやると、それは赤黒い人形みたいなもの。
 ピクリとも動かない。

 あぁやりすぎちゃった?


「ビ…ンカ。死ん…じゃ…た?」

 元聖女が殺人犯!?
 ああああ~
 誘拐犯だったから、正当防衛は認められないかしら??

「ビアンカね……」

 レオンハルト様がそれをにらみつけ、冷笑を浮かべる。

「死んじゃいないよ。魔族は治癒力が高いんだ。この程度じゃ死なない」

 そしてまた私を見て、苦しそうに顔を歪める。

「それよりアリーシアの治療が先だ。さぁ、そんなばっちいのは離して、ボクに捕まって。屋敷に帰るよ」

 レオンハルト様が、私を抱き上げる。



 ジュジュジュジュ~!

 レオンハルト様の両腕から、白煙が上がる。



「だめ! だめ! レオンハルト様!」

「いいの! これはボクの罰だ! 思いあがって隙を見せて……番をこんなめに合わせた罰だ!」

「そんなのだめ! だ…め」

「いいからもうお眠り。もう怖い事はないから。ボクが絶対守るから」



 レオンハルト様の背後に、巨大な翼が見える。その翼がバサリと音を立てると身体が空に引き上げられる。
 外は夜、星がきらめいている。

 それと同じようにレオンハルト様の瞳も黄金色に光っている。

「きれ…い」

 私を抱く腕に、さらに力がこもる。
 ジュジュッと焼ける音がする。

 そこで私の意識も途切れた。
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