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37 私は悪魔に魂を売った 【SIDEカール神官長①】
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急ぎ侯爵夫人アリーシアを、侯爵家の屋敷に連れ戻し、使用人に医者を呼ばせた。
眠っているだけだと聞いてほっとした。
何かあったらあいつが、何をするか分からない。
ずるずると物を引きずる音がする。
ドアを開け入ってきたのは、満身創痍のリヒター侯爵家当主、魔族レオンハルトだ。
「おい! 大丈夫か?」
「ふふ、魔族はそう簡単には死なない」
そう言うけど、目は落ちくぼみ火傷だらけで、やせ細ったその身体は歩くのもやっとだ。
肩を貸してやり、アリーシアの側に連れていってやる。
赤黒くやけどをした指が、そっと彼女の頬にふれる。
「くくくっアリーシアに触れられるぞ!」
ここで、涙を流しながら嬉しそうに微笑めば、私の愚かな行為も救われただろう。
だがヤツの表情は、性格そのままの悪笑。
「私にこんな嘘をつかせてお前は満足か!」
こんな純真で、優しい娘に。
「満足だ。お前は良い仕事をした」
見た目だけ若く美しい、老獪な魔族は笑う。
この美麗な魔族が突然訪ねてきたのは、神官長に就任してすぐのことだった。
愚鈍な王、ドレスや宝飾品にしか興味のない王妃、賭け事と女に夢中な王太子。
女神ソフィアの加護で長く自然災害のない、平和なこの国を治める王家は腐りきっていた。
そんな王家に危機感を覚える貴族と、王家におもねり甘い汁を吸おうとする貴族、そしてそれを傍観する貴族。
その3派が3つ巴の争いを始め、国は傾きかけていた。
そんな中、若い私は知らぬ間に貴族派に持ち上げられ、反王家派と見なされてしまった。
父王とは疎遠になり、王子としての立場を追われ、神殿の神官長に据えられてしまったのだった。
女神神殿の聖女は全て女性のため、神官長職は代々高位貴族の令嬢が務めており、王族、しかも男の私は初めての就任。
王族が就任するなら『まずはアレクサンドラでは?』と妹王女の話をしたが、あれは外交のコマだからと、父王は聞く耳を持たなかった。
女社会での仕事はまぁそれなりに苦労はしたが、神殿という外の世界に出て、改めて王家の腐敗ぶりに王族として恥ずかしく、憤りを感じていた。
そこで声をかけてきたのは、リヒター侯爵レオンハルトだ。
「私に協力しろ。そうすれば、あのダニ3匹を消してやろう」
ダニ? 王と王妃? 王太子もか?
「消す? 殺すということか?」
それはいくらなんでも……だがこの美貌の魔族にはそれができるのか?
「お前は王になりたいか?」
「いや、ただ、この沈む国をなんとかしたいだけで……」
憂いているのはこの国のことで、あいつら3人を殺したところで、国を救えるのか?
「ならお前が王になればいい。私が助けてやろう」
「私が王に? 私には無理だ」
そんな器ではない。
「ふん……まぁいいだろう。しばらく考えておけ。だが、私に協力しろ」
「どんな協力をしろと」
「……小さな嘘をつくだけだ。ほんの小さな嘘を」
そして私はその嘘はついた。
アリーシアに。
眠っているだけだと聞いてほっとした。
何かあったらあいつが、何をするか分からない。
ずるずると物を引きずる音がする。
ドアを開け入ってきたのは、満身創痍のリヒター侯爵家当主、魔族レオンハルトだ。
「おい! 大丈夫か?」
「ふふ、魔族はそう簡単には死なない」
そう言うけど、目は落ちくぼみ火傷だらけで、やせ細ったその身体は歩くのもやっとだ。
肩を貸してやり、アリーシアの側に連れていってやる。
赤黒くやけどをした指が、そっと彼女の頬にふれる。
「くくくっアリーシアに触れられるぞ!」
ここで、涙を流しながら嬉しそうに微笑めば、私の愚かな行為も救われただろう。
だがヤツの表情は、性格そのままの悪笑。
「私にこんな嘘をつかせてお前は満足か!」
こんな純真で、優しい娘に。
「満足だ。お前は良い仕事をした」
見た目だけ若く美しい、老獪な魔族は笑う。
この美麗な魔族が突然訪ねてきたのは、神官長に就任してすぐのことだった。
愚鈍な王、ドレスや宝飾品にしか興味のない王妃、賭け事と女に夢中な王太子。
女神ソフィアの加護で長く自然災害のない、平和なこの国を治める王家は腐りきっていた。
そんな王家に危機感を覚える貴族と、王家におもねり甘い汁を吸おうとする貴族、そしてそれを傍観する貴族。
その3派が3つ巴の争いを始め、国は傾きかけていた。
そんな中、若い私は知らぬ間に貴族派に持ち上げられ、反王家派と見なされてしまった。
父王とは疎遠になり、王子としての立場を追われ、神殿の神官長に据えられてしまったのだった。
女神神殿の聖女は全て女性のため、神官長職は代々高位貴族の令嬢が務めており、王族、しかも男の私は初めての就任。
王族が就任するなら『まずはアレクサンドラでは?』と妹王女の話をしたが、あれは外交のコマだからと、父王は聞く耳を持たなかった。
女社会での仕事はまぁそれなりに苦労はしたが、神殿という外の世界に出て、改めて王家の腐敗ぶりに王族として恥ずかしく、憤りを感じていた。
そこで声をかけてきたのは、リヒター侯爵レオンハルトだ。
「私に協力しろ。そうすれば、あのダニ3匹を消してやろう」
ダニ? 王と王妃? 王太子もか?
「消す? 殺すということか?」
それはいくらなんでも……だがこの美貌の魔族にはそれができるのか?
「お前は王になりたいか?」
「いや、ただ、この沈む国をなんとかしたいだけで……」
憂いているのはこの国のことで、あいつら3人を殺したところで、国を救えるのか?
「ならお前が王になればいい。私が助けてやろう」
「私が王に? 私には無理だ」
そんな器ではない。
「ふん……まぁいいだろう。しばらく考えておけ。だが、私に協力しろ」
「どんな協力をしろと」
「……小さな嘘をつくだけだ。ほんの小さな嘘を」
そして私はその嘘はついた。
アリーシアに。
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