【完結】可愛そうなアリンコ聖女に可哀そうなキラキラ侯爵様が離縁したくないと泣きついてきたんだけど⁉ 【番外編あり】

水星 とも

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44 私は王になった 【SIDEカール王】

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「政界を引退するって?」

 王である私は私室で酒を酌み交わしながら、その相手リヒター侯爵レオンハルトに問いかける。
 彼のお陰で前王と前王太子を排除し、元神官長だった私は王になった。

 在位30年。52才になった。
 即位と同時に隣国から迎えた王妃は、聡明で美しく2男3女にも恵まれた。

「いくら老けたメイクをしてもそろそろ限界だ。もう社交もできないな」
 久しぶりにメイクを落としたレオンは、20代後半にしか見えない。

「お前の治世も安定した。もう、私がいなくてもやっていけるだろう?」

「うん…これからどうするんだ?」

「ん~アリーシアによるけど…」

 こいつの行動基準は番。

「旅に出てもいいかな~って思うんだぁ」

 いつもは偉そうな口調だが、妻アリーシアが絡むと幼子のようなものになる。

「彼女にはお前のやってることを言ってるのか?」

「言ってない…」

「お前の口から言った方がいいと思うが…」

 最初にこいつのやっている事に気が付いたのは、妻である王妃エリザベスだ。




 王族の一員となったエリザベスにも、レオンハルトは長命不老の魔族であることを告げた。

「リヒター侯爵は他人を不老にする魔術をお持ちなのですか?」

「いや、それはないと思うが」

 魅了、忘却、結界の魔術は持っていたと思う。
 その魔術を王家に振るわない盟約をし、この国での貴族位を許した。

「リヒター侯爵夫人、不老の…もしかしたら長命の魔術もかけられているかもしれません」

「どうしてそう思うの?」

「肌や髪の美しさは何か特別な化粧品があるかもしれませんが…骨格や肉つきが少女のそれで違和感を感じるのです」

 気のせいかと思いながらも、なんとなくレオンハルトに確認すると


「さすが、女の目は侮れないね!」
 って笑いやがった!

「魔術じゃないんだ。偶然父の日記を屋敷の図書室で見つけてね。元々バンパイヤ族は眷属を作る力があったらしいんだ」

「眷属?」

「長命不老な吸血鬼の部下のことさ。バンパイヤ族には、それを作る力があったんだよ」

「その力のことは数を減らすうちに、すっかり忘れ去られていたらしいんだけど、何かの文献で知った父が、その眷属を作ろうと何度も人間相手に実験したらしいんだよね」

「でも飽き性な父は、何回か失敗したら諦めたらしくてね。でもその実験結果が、日記に書いてあったんだ」

「それをお前は、アリーシアにやったのか?」

「ん~父はせっかちだったんだろうね。急な体質の変化は、細胞を死滅させる…」

「やったんだな!」

「単純な方法なんだよ? 吸血の際、逆に私の血を送り込むんだ。ただしほんの少し…それを毎日、毎日、毎日、毎日……」

「それでアリーシアは?」

「うん一応いい感じ。成功。むしろ少女のような見た目だから、私よりアリーシアを社交に出せないよ。もう50才だからね」


 レッドパープル・アメジストの瞳に、狂気が見える。

 もし失敗していたら、この男は後を追ったのだろうか。


「本当はもう少し大人になってから、眷属にしたかったんだけど……成長を止めないと神聖力が増えたら困るからさ」


 父の日記を偶然見つけたなんて、ほざいているこの男だが、それは嘘だろう。
 アリーシアの神聖力を増えないようにするため、文献を読み漁り、他国にもよく行っていた。

 この男は必死だったはずだ。

 でも今日、
 この男のこんな穏やかな、嘘偽りない笑顔を見る日がくるなんて。


「二人で旅に出るのか…寂しくなるな」

「お前が死ぬまでには、一回は帰るよ」

 いいな、自由な旅。
 しかも一人じゃなくて、愛する女性と二人。

 王族な自分が、恨めしくなった。
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