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番外編 レオンハルト様の最期は私が看取ってあげたいと思う
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私はデリウス国の屋敷にいた頃、一番大好きだった侯爵夫人としての仕事は孤児院への慰問だった。
生家では弟や妹の世話を任されていたから、お相手はお手の物……何より子どもが大好きな私は積極的に務めていたのだ。
旅に出ている今も長期滞在した場所では、平民の学校に寄付をしたり、孤児院にも寄付をしつつ遊び相手として足しげく訪れていた。
今日も孤児院を訪れ、絵本を読んであげたり、鬼ごっこをしたり……80才になるけど肉体年齢は10代! 2時間近くも楽しんだ。
子どもたちが一番喜んだのは、私たちの旅の話。
砂漠、大海原、巨大山脈、船旅や野宿、異国の衣装や食べ物……子どもたちの目はキラキラと輝き、質問だらけでなかなか話が進まない。
夕暮れが近づき帰ろうとすると「次はいつ来るのか」と取り囲まれる。
笑顔で「またくるからね」と伝えても「本当に来てくれるの?」と泣きべそをかく子もいて、彼らの境遇を思うとせつない。
そんな私をいつも遠くからレオンハルト様は見ている。
悲しそうに、辛そうに……
「明後日にはここを発つのよね?」
「うん」
「次は~山岳民族の『御山まつり』が目当てだったわよね?」
「うん」
「明日、孤児院の子たちにお別れを言いに行っていいかしら」
「……うん」
レオンハルト様の大きな身体がまーるく小さくなっている。
これはつっこんであげるべき? めんどくさいな~
「どうしたの?レオ?」
愛称で呼んでみる。
次の瞬間見たのは、滂沱の涙を流すレオンハルト様。
「ごめんねぇ~ごめんねぇ~アリーシアは子どもが大好きなのに……自分の子どもが欲しかったよねぇぇぇ」
……それはもちろん欲しかった。
大家族のベルツ男爵家で育った私だもの、たくさんの子どもと暮らす家族を夢見ていた。
そりゃ、お子を授かれるかは女神様の思し召しだし、必ずしも子どもが持てるわけではなかっただろうけど。
でもレオンハルト様に似た子なんて、絶対可愛かっただろうな~と思ったのは一度や二度じゃない。
「ボクのせいでごめんね…ごめんね……」
唇をかみしめるレオンハルト様。
え? まさか?
「実はボクは……」
とうとう告白⁉
私を不老に……バンパイアにしたと白状する⁉
やっと、この妙な我慢大会が終わるの⁉
「ボクは種無しなんだ―――!」
……そうきたか
いやいや、今さらそのごまかしは無理があるでしょ?
私、もう80才だから! なのにこのピチピチさ異常でしょ?
私が年も数えられないバカだと思ってる?
完全に頭にきて、寝室から追い出してやった。
次の日も朝から無視していたら、赤い目をしてずーっと後ろをついてくる。
ホントうっとおしい!
もう今日こそ全て白状させてやろうと息巻いていたら、ホテルのボーイがレオンハルト様に至急の連絡があると駆け込んできた。
カール王が危篤であると。
母国デリウス国王、元神官長のカール様は84才。
昨年から体調を崩し離宮で静養、実務は長男であるが王太子様が代行していたそうだ。
夜はレオンハルト様に飛んで運んでもらい、昼間は蒸気機関車を利用、強行軍の移動で3日でデリウス国に到着し、すぐに王宮に向かった。
「久しいなレオン…」
カール様の顔は土気色ですっかりやせ細っていた。
レオンハルト様は何も言葉を発せないようだった。
「ひどいよなぁ~私が死ぬまでに一度は帰るって言ったくせに、こっちが呼ぶまで帰ってこないんだから」
「……」
「私たちは…共犯者。同じ秘密を持つもの…そうだろう?」
「…ああ」
ぽろりと一滴、レオンハルト様のレッドパープルアメジストの瞳からこぼれ落ちた。
「ははは。レオンが泣いた。泣いた。冥途の土産に最高じゃないか」
そう言うカール様からは、ずーっと涙がこぼれている。
「レオン、アリーシア。二人に願いがあるんだ。私のひ孫クラウスをお前たちの子として引き取ってはくれないか?」
「なぜ? 子は親の元で育つ方が良くないのか?」
「親に疎まれている」
「……」
「私が死ねば、長男のベルトルトが王になるのだが、そのベルトルトの長男、次の王太子の二男がクラウスなんだ」
大きく息を吐き、カール様が続ける。
「代々王家の子は金髪なんだが、このクラウスは黒髪なんだ。妻方に黒髪の者もいたからそっちの遺伝だろうと言っても聞く耳をもたない、あげく不貞疑惑まで浮上して……このまま王家にいても、あの子は一生辛い思いをするだろう。リヒター侯爵家には後継者がいないだろう? お前は家門が途絶えてもいいと思っているだろうが、どうかあの子をお前の後継者にしてやれないだろうか? お前は黒髪だし問題ないと思うんだが」
「クラウス様はおいくつなんでしょうか?」
つい私も質問してしまった。
子を親から引き離すには年齢が重要だ。
「2才になる」
それなら元の記憶は薄いかな??
「ふふっ。私がレオンハルト様に初めてお会いした年ですね」
「……アリーシアは引き取りたいの?」
「王子様の親になるなんておこがましいですが、幸せな時間を共に過ごすことはできるのではと。レオンハルト様と私、クラウス様と3人で家族になることはできるのではないかしら」
「家族? ボクたちの?」
「そうです。子どもを育てるのは大変ですが、楽しいことも多いですよ。私たちの命をつなぎましょう」
「命をつなぐ…?」
「そうです。血はつながらなくても、命を次世代につなぐことはできます」
「アリーシア! アリーシア! ごめん! ごめんね! 君が番で本当に良かった! 愛してる! ずーっと愛してる!」
レオンハルト様のアメジストの瞳から、ボロボロと涙がこぼれ始めた。
そんなに罪悪感満載ならさっさと白状すればいいのに。
「私は死にかけなんだぞ。いちゃつくのは外でやってくれ。…と言うことだから、養子縁組の書類を用意して、この事は遺書にも記してくれ」
控えていた侍従にカール様が伝える。
「じゃあクラウスの事はよろしく頼む。…お前のお陰で王になって馬車馬のように働いて、苦労も多かったがそれなりに良い人生だったよ。ありがとう」
「あぁ。私もお前に感謝している」
その二日後カール王は永眠された。
賢王として国民に愛され王は、盛大な国葬で女神様のもとに送られた。
その後、私たちはクラウスを迎えるため、侯爵邸に戻り社交界にも復帰した。
レオンハルト様は黒髪の長髪のかつらをかぶり、何食わぬ顔でリヒター侯爵の子孫だと振舞ったら全く問題にならなかった。
あの美貌で周囲を黙らしたとも言える。
クラウスは人懐っこい子で、すぐに侯爵邸のアイドルになった。
今まで夫婦だと出かける場所は王都では、カフェ、劇場、美術館だったのが、クラウスがいることで、遊園地や動物園、博物館などに変わり、レオンハルト様も初めて訪れるその場所に、彼の方が子どものように、はしゃいでいた。
子の成長はあっという間だ。
特にすでに長い時間を生きてきた私たちにとっては……
寄宿学校を卒業し、22歳になったクラウスは子爵令嬢のアンネと結婚した。
下位貴族と高位貴族の結婚は私のように苦労するかと心配したが、世の中はすでに様変わりしていた。
国の行く末を決定するのは王ではなく、議会となり、その議会の議員の半数は平民だ。
身分制度が薄らぎ始めていたのだ。
クラウスの結婚と同時にレオンハルト様はリヒター侯爵の家督を彼に譲った。
初めは執務のやり方で色々言い合いをして、時には殴り合いの喧嘩にも発展したが、今思えばいい思い出である。
そうしてやがて、クラウスにも子ができ、孫ができ……老いない私たちは社交をやめ、以前のように引き籠るようになった……その日まで。
「クラウス」
「お母様…」
黒髪からすっかり白髪になった頭をやさしくなでる。
「貴方がいてくれてとても幸せだったわ」
「私もお母様が母親になってくれて幸せでした」
「父上?」
震えたまま、クラウスの顔が見れないレオンハルト様。
「父上は泣き虫だなぁ。普段あんなに偉そうなのに」
「父上、顔を見せて下さい」
その涙にぬれたかんばせを息子に見せる。
「……本当にずるいですね。私はこんなに年老いたのに、どう見ても30歳位にしか見えないし。伝説級の美男子だし~私はずーっと比べられてバカにされてきたんですよ」
「あら私の子だから普通顔って言えばいいでしょ?」
「お母様って無自覚? 異次元美形の父上のせい?」
「アリーシアはとてもかわいい」
鼻声で答えるレオンハルト様。
「そうですよね~私の女性の美の基準がお母様だったから、結構苦労したんですよ~ 父上、良かったですねお母様がいて。…だから……私がいなくなっても大丈夫でしょう?」
穏やかな笑顔を見せるクラウスは、もう覚悟をしている。
「お母様を大切に……よろしくお願いします」
「言われなくても」
涙を流しながらも、クラウスにあわせて微笑むレオンハルト様。
顔かたちは違うけれど、その笑顔はどこか似ていて……微笑み合う親子に、私の涙も止まらなかった。
そうしてクラウスは次の日、女神様のもとへ旅立った。
悲しくて辛くて、1週間ほど泣き暮らしていたけれど、これが愛したものを失うレオンハルト様の恐怖だと実感した。
私を不老長命にした理由としてそれなりに理解はしていたものの、身をもって知ったのだ。
そして私をそんな存在にした事を面と向かって言えないのも、なんとなく理解した。
『子ども』を失った私たちはまた旅に出ることにした。
侯爵位はクラウスの子に与えたまま、縁を切ることにして、平民になったのだ。
もう私たちに地位は必要ない。
命はクラウスの子どもたちがつないでくれる。
「行こうか」
「ええ」
私たちはいつまで生きるのだろう。
できれば、この可哀そうで泣き虫なレオンハルト様より、長生きして看取ってあげたいと思う。
***********
これにて完全完結です。 読んで頂いた皆様、ありがとうございました!
生家では弟や妹の世話を任されていたから、お相手はお手の物……何より子どもが大好きな私は積極的に務めていたのだ。
旅に出ている今も長期滞在した場所では、平民の学校に寄付をしたり、孤児院にも寄付をしつつ遊び相手として足しげく訪れていた。
今日も孤児院を訪れ、絵本を読んであげたり、鬼ごっこをしたり……80才になるけど肉体年齢は10代! 2時間近くも楽しんだ。
子どもたちが一番喜んだのは、私たちの旅の話。
砂漠、大海原、巨大山脈、船旅や野宿、異国の衣装や食べ物……子どもたちの目はキラキラと輝き、質問だらけでなかなか話が進まない。
夕暮れが近づき帰ろうとすると「次はいつ来るのか」と取り囲まれる。
笑顔で「またくるからね」と伝えても「本当に来てくれるの?」と泣きべそをかく子もいて、彼らの境遇を思うとせつない。
そんな私をいつも遠くからレオンハルト様は見ている。
悲しそうに、辛そうに……
「明後日にはここを発つのよね?」
「うん」
「次は~山岳民族の『御山まつり』が目当てだったわよね?」
「うん」
「明日、孤児院の子たちにお別れを言いに行っていいかしら」
「……うん」
レオンハルト様の大きな身体がまーるく小さくなっている。
これはつっこんであげるべき? めんどくさいな~
「どうしたの?レオ?」
愛称で呼んでみる。
次の瞬間見たのは、滂沱の涙を流すレオンハルト様。
「ごめんねぇ~ごめんねぇ~アリーシアは子どもが大好きなのに……自分の子どもが欲しかったよねぇぇぇ」
……それはもちろん欲しかった。
大家族のベルツ男爵家で育った私だもの、たくさんの子どもと暮らす家族を夢見ていた。
そりゃ、お子を授かれるかは女神様の思し召しだし、必ずしも子どもが持てるわけではなかっただろうけど。
でもレオンハルト様に似た子なんて、絶対可愛かっただろうな~と思ったのは一度や二度じゃない。
「ボクのせいでごめんね…ごめんね……」
唇をかみしめるレオンハルト様。
え? まさか?
「実はボクは……」
とうとう告白⁉
私を不老に……バンパイアにしたと白状する⁉
やっと、この妙な我慢大会が終わるの⁉
「ボクは種無しなんだ―――!」
……そうきたか
いやいや、今さらそのごまかしは無理があるでしょ?
私、もう80才だから! なのにこのピチピチさ異常でしょ?
私が年も数えられないバカだと思ってる?
完全に頭にきて、寝室から追い出してやった。
次の日も朝から無視していたら、赤い目をしてずーっと後ろをついてくる。
ホントうっとおしい!
もう今日こそ全て白状させてやろうと息巻いていたら、ホテルのボーイがレオンハルト様に至急の連絡があると駆け込んできた。
カール王が危篤であると。
母国デリウス国王、元神官長のカール様は84才。
昨年から体調を崩し離宮で静養、実務は長男であるが王太子様が代行していたそうだ。
夜はレオンハルト様に飛んで運んでもらい、昼間は蒸気機関車を利用、強行軍の移動で3日でデリウス国に到着し、すぐに王宮に向かった。
「久しいなレオン…」
カール様の顔は土気色ですっかりやせ細っていた。
レオンハルト様は何も言葉を発せないようだった。
「ひどいよなぁ~私が死ぬまでに一度は帰るって言ったくせに、こっちが呼ぶまで帰ってこないんだから」
「……」
「私たちは…共犯者。同じ秘密を持つもの…そうだろう?」
「…ああ」
ぽろりと一滴、レオンハルト様のレッドパープルアメジストの瞳からこぼれ落ちた。
「ははは。レオンが泣いた。泣いた。冥途の土産に最高じゃないか」
そう言うカール様からは、ずーっと涙がこぼれている。
「レオン、アリーシア。二人に願いがあるんだ。私のひ孫クラウスをお前たちの子として引き取ってはくれないか?」
「なぜ? 子は親の元で育つ方が良くないのか?」
「親に疎まれている」
「……」
「私が死ねば、長男のベルトルトが王になるのだが、そのベルトルトの長男、次の王太子の二男がクラウスなんだ」
大きく息を吐き、カール様が続ける。
「代々王家の子は金髪なんだが、このクラウスは黒髪なんだ。妻方に黒髪の者もいたからそっちの遺伝だろうと言っても聞く耳をもたない、あげく不貞疑惑まで浮上して……このまま王家にいても、あの子は一生辛い思いをするだろう。リヒター侯爵家には後継者がいないだろう? お前は家門が途絶えてもいいと思っているだろうが、どうかあの子をお前の後継者にしてやれないだろうか? お前は黒髪だし問題ないと思うんだが」
「クラウス様はおいくつなんでしょうか?」
つい私も質問してしまった。
子を親から引き離すには年齢が重要だ。
「2才になる」
それなら元の記憶は薄いかな??
「ふふっ。私がレオンハルト様に初めてお会いした年ですね」
「……アリーシアは引き取りたいの?」
「王子様の親になるなんておこがましいですが、幸せな時間を共に過ごすことはできるのではと。レオンハルト様と私、クラウス様と3人で家族になることはできるのではないかしら」
「家族? ボクたちの?」
「そうです。子どもを育てるのは大変ですが、楽しいことも多いですよ。私たちの命をつなぎましょう」
「命をつなぐ…?」
「そうです。血はつながらなくても、命を次世代につなぐことはできます」
「アリーシア! アリーシア! ごめん! ごめんね! 君が番で本当に良かった! 愛してる! ずーっと愛してる!」
レオンハルト様のアメジストの瞳から、ボロボロと涙がこぼれ始めた。
そんなに罪悪感満載ならさっさと白状すればいいのに。
「私は死にかけなんだぞ。いちゃつくのは外でやってくれ。…と言うことだから、養子縁組の書類を用意して、この事は遺書にも記してくれ」
控えていた侍従にカール様が伝える。
「じゃあクラウスの事はよろしく頼む。…お前のお陰で王になって馬車馬のように働いて、苦労も多かったがそれなりに良い人生だったよ。ありがとう」
「あぁ。私もお前に感謝している」
その二日後カール王は永眠された。
賢王として国民に愛され王は、盛大な国葬で女神様のもとに送られた。
その後、私たちはクラウスを迎えるため、侯爵邸に戻り社交界にも復帰した。
レオンハルト様は黒髪の長髪のかつらをかぶり、何食わぬ顔でリヒター侯爵の子孫だと振舞ったら全く問題にならなかった。
あの美貌で周囲を黙らしたとも言える。
クラウスは人懐っこい子で、すぐに侯爵邸のアイドルになった。
今まで夫婦だと出かける場所は王都では、カフェ、劇場、美術館だったのが、クラウスがいることで、遊園地や動物園、博物館などに変わり、レオンハルト様も初めて訪れるその場所に、彼の方が子どものように、はしゃいでいた。
子の成長はあっという間だ。
特にすでに長い時間を生きてきた私たちにとっては……
寄宿学校を卒業し、22歳になったクラウスは子爵令嬢のアンネと結婚した。
下位貴族と高位貴族の結婚は私のように苦労するかと心配したが、世の中はすでに様変わりしていた。
国の行く末を決定するのは王ではなく、議会となり、その議会の議員の半数は平民だ。
身分制度が薄らぎ始めていたのだ。
クラウスの結婚と同時にレオンハルト様はリヒター侯爵の家督を彼に譲った。
初めは執務のやり方で色々言い合いをして、時には殴り合いの喧嘩にも発展したが、今思えばいい思い出である。
そうしてやがて、クラウスにも子ができ、孫ができ……老いない私たちは社交をやめ、以前のように引き籠るようになった……その日まで。
「クラウス」
「お母様…」
黒髪からすっかり白髪になった頭をやさしくなでる。
「貴方がいてくれてとても幸せだったわ」
「私もお母様が母親になってくれて幸せでした」
「父上?」
震えたまま、クラウスの顔が見れないレオンハルト様。
「父上は泣き虫だなぁ。普段あんなに偉そうなのに」
「父上、顔を見せて下さい」
その涙にぬれたかんばせを息子に見せる。
「……本当にずるいですね。私はこんなに年老いたのに、どう見ても30歳位にしか見えないし。伝説級の美男子だし~私はずーっと比べられてバカにされてきたんですよ」
「あら私の子だから普通顔って言えばいいでしょ?」
「お母様って無自覚? 異次元美形の父上のせい?」
「アリーシアはとてもかわいい」
鼻声で答えるレオンハルト様。
「そうですよね~私の女性の美の基準がお母様だったから、結構苦労したんですよ~ 父上、良かったですねお母様がいて。…だから……私がいなくなっても大丈夫でしょう?」
穏やかな笑顔を見せるクラウスは、もう覚悟をしている。
「お母様を大切に……よろしくお願いします」
「言われなくても」
涙を流しながらも、クラウスにあわせて微笑むレオンハルト様。
顔かたちは違うけれど、その笑顔はどこか似ていて……微笑み合う親子に、私の涙も止まらなかった。
そうしてクラウスは次の日、女神様のもとへ旅立った。
悲しくて辛くて、1週間ほど泣き暮らしていたけれど、これが愛したものを失うレオンハルト様の恐怖だと実感した。
私を不老長命にした理由としてそれなりに理解はしていたものの、身をもって知ったのだ。
そして私をそんな存在にした事を面と向かって言えないのも、なんとなく理解した。
『子ども』を失った私たちはまた旅に出ることにした。
侯爵位はクラウスの子に与えたまま、縁を切ることにして、平民になったのだ。
もう私たちに地位は必要ない。
命はクラウスの子どもたちがつないでくれる。
「行こうか」
「ええ」
私たちはいつまで生きるのだろう。
できれば、この可哀そうで泣き虫なレオンハルト様より、長生きして看取ってあげたいと思う。
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これにて完全完結です。 読んで頂いた皆様、ありがとうございました!
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面白かった〜
レオンしたたかでした(笑)
最後の
やられたな
ってちょっと笑っちゃいました。
いつまでもお幸せに〜
でも2人とも人の血を飲まなきゃいけないのって大変。それともバンパイア同士で大丈夫なのかな。だったらいいけど。
感想ありがとうございます!今までは読み専でしたが、初執筆の初投稿の小説で感想を頂けて感激です!そうですね~血を飲み合うんでしょうけど、お互いが食料なんてすごいエコな関係ですよね(笑)