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◆辺境伯エディ・ヒュルケンベルグの優しい瞳
辺境伯エディ・ヒュルケンベルグは、剣を収めてわたしの方を向く。優しい瞳を向け、手を握ってくれた。
「あ、あの、エディ」
「ケガはないかい?」
「は、はい。おかげさまで無傷です。エディは相変わらず素晴らしい剣術の持ち主です」
「いや、それほどでもない。以前に比べたら腕も落ちたものだよ。姉には怠け過ぎだと怒られている毎日さ」
遠慮しながらもエディは笑う。
相変わらず腰が低くて、貴族っぽくない。
本当は辺境伯でとても凄い人なのに。
「助けていただきありがとうごうざいます」
「当然のことさ。それはそうと、どうしてあんな輩が君を狙っていたんだ?」
わたしは、ノルベルトに婚約破棄されたこと。妹が関わっていて全財産を奪われたことを打ち明けた。
「……というわけなのです」
「そうか。それであんな傭兵に追われていたんだね。なんて酷いことを」
「わたし、もう頼れる人がエディしかいなくて……」
「アイシア、君は辛い思いをしていたんだね。気づけなくてごめんよ」
頬を優しく撫でられ、わたしは自然と涙が零れた。
辛いとか悔しいとかじゃない。
疎遠になっていたエディがこんなにも、わたしを気遣ってくれるなんて思わなかった。
「エディ、わたし……ノルベルトとクロエから全てを奪い返したいんです……」
「それは本気かい、アイシア」
「もちろんです。だって、家もお金もぜんぶわたしのものだったんです。婚約者だって奪われて……気が狂いそう。でも、家とお金さえ戻れば十分です。ですから」
優しく包み込んでくれるエディは、わたしの耳元で囁いた。
「分かった、全部取り戻そう。君をこんな目に遭わせたノルベルトという男が許せない。俺は……彼ならきっとアイシアを幸せにできると思ったんだが、そうではなかった」
「エディ……」
「……君の幸せを願うならと俺は身を引いてしまった。許して欲しい」
「わたしの方こそごめんなさい。巻き込んでしまって……」
「そうだな、巻き込まれたからには責任を取ってもらわないと」
爽やかに笑うエディは、そんな風にいった。
責任……つまり、なにか保証して欲しいみたいだった。もちろん、謝礼は当然のこと。あの二人から奪い返せるのなら、なんだってする。
「では、財産の半分を」
「いや、お金の問題ではない」
「……え」
「俺が欲しいのはアイシア、君だ」
「……エディ。わたしなんかでいいのですか? わたしは、その……ノルベルトと婚約していたんですよ」
「関係ない。俺はずっと君を思ってきた。今もこの気持ちは変わらない。これからもね」
……泣いてしまいそう。
でも、こらえた。
今は笑顔で応える。
「本当に嬉しいです。エディ、わたしでよければ差し上げます」
「アイシア、君はもう俺のものだ。いいね」
ノルベルトの時は、こんなに幸せを感じることはなかった。今、わたしはとても幸せ。わたしが求めていたものがここにはあった。
……なんで気づかなかったんだろう。こんな近くにいたのに。
エディはわたしの屋敷を目指した。
今もきっとノルベルトとクロエがいるはず。
門の前に辿り着くと、そこにはちょうどノルベルトの姿があった。
「……アイシア! なぜここにいる。傭兵はどうした」
「そんなことより、全部返してください!」
「返すわけないだろ! それにお前はもう終わりだ。なにもない無価値な女に用はない! 消えろ!」
話にならない。
わたしはどうして、こんな男を一度でも好きになってしまったんだ。そこに激しく後悔した。
「止めろ、ノルベルト」
「ん……お、お前は!? エディ!」
エディの顔を見て驚くノルベルト。焦ってひっくり返りそうになっていた。
「お前に決闘を申し込む。知っていると思うが、立場が上の者の方から決闘を申し込んだ場合、相手は断れないし、万が一に断れば投獄される」
「……くっ! エディ、貴様!」
帝国の法は絶対。それは貴族が一番よく理解していることだ。これで、エディが勝てば財産が戻ってくる。その為にも、わたしは彼を全力で応援する。
「あ、あの、エディ」
「ケガはないかい?」
「は、はい。おかげさまで無傷です。エディは相変わらず素晴らしい剣術の持ち主です」
「いや、それほどでもない。以前に比べたら腕も落ちたものだよ。姉には怠け過ぎだと怒られている毎日さ」
遠慮しながらもエディは笑う。
相変わらず腰が低くて、貴族っぽくない。
本当は辺境伯でとても凄い人なのに。
「助けていただきありがとうごうざいます」
「当然のことさ。それはそうと、どうしてあんな輩が君を狙っていたんだ?」
わたしは、ノルベルトに婚約破棄されたこと。妹が関わっていて全財産を奪われたことを打ち明けた。
「……というわけなのです」
「そうか。それであんな傭兵に追われていたんだね。なんて酷いことを」
「わたし、もう頼れる人がエディしかいなくて……」
「アイシア、君は辛い思いをしていたんだね。気づけなくてごめんよ」
頬を優しく撫でられ、わたしは自然と涙が零れた。
辛いとか悔しいとかじゃない。
疎遠になっていたエディがこんなにも、わたしを気遣ってくれるなんて思わなかった。
「エディ、わたし……ノルベルトとクロエから全てを奪い返したいんです……」
「それは本気かい、アイシア」
「もちろんです。だって、家もお金もぜんぶわたしのものだったんです。婚約者だって奪われて……気が狂いそう。でも、家とお金さえ戻れば十分です。ですから」
優しく包み込んでくれるエディは、わたしの耳元で囁いた。
「分かった、全部取り戻そう。君をこんな目に遭わせたノルベルトという男が許せない。俺は……彼ならきっとアイシアを幸せにできると思ったんだが、そうではなかった」
「エディ……」
「……君の幸せを願うならと俺は身を引いてしまった。許して欲しい」
「わたしの方こそごめんなさい。巻き込んでしまって……」
「そうだな、巻き込まれたからには責任を取ってもらわないと」
爽やかに笑うエディは、そんな風にいった。
責任……つまり、なにか保証して欲しいみたいだった。もちろん、謝礼は当然のこと。あの二人から奪い返せるのなら、なんだってする。
「では、財産の半分を」
「いや、お金の問題ではない」
「……え」
「俺が欲しいのはアイシア、君だ」
「……エディ。わたしなんかでいいのですか? わたしは、その……ノルベルトと婚約していたんですよ」
「関係ない。俺はずっと君を思ってきた。今もこの気持ちは変わらない。これからもね」
……泣いてしまいそう。
でも、こらえた。
今は笑顔で応える。
「本当に嬉しいです。エディ、わたしでよければ差し上げます」
「アイシア、君はもう俺のものだ。いいね」
ノルベルトの時は、こんなに幸せを感じることはなかった。今、わたしはとても幸せ。わたしが求めていたものがここにはあった。
……なんで気づかなかったんだろう。こんな近くにいたのに。
エディはわたしの屋敷を目指した。
今もきっとノルベルトとクロエがいるはず。
門の前に辿り着くと、そこにはちょうどノルベルトの姿があった。
「……アイシア! なぜここにいる。傭兵はどうした」
「そんなことより、全部返してください!」
「返すわけないだろ! それにお前はもう終わりだ。なにもない無価値な女に用はない! 消えろ!」
話にならない。
わたしはどうして、こんな男を一度でも好きになってしまったんだ。そこに激しく後悔した。
「止めろ、ノルベルト」
「ん……お、お前は!? エディ!」
エディの顔を見て驚くノルベルト。焦ってひっくり返りそうになっていた。
「お前に決闘を申し込む。知っていると思うが、立場が上の者の方から決闘を申し込んだ場合、相手は断れないし、万が一に断れば投獄される」
「……くっ! エディ、貴様!」
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