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第21話 聖域領地クォ・ヴァディス
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帝国ウィスティリアを出て、故郷アスプロへ。猫ちゃんの足は本当に早くて半日も掛からず街へ到着した。
「揺れも少なくて、お尻も痛くなかったですし、最高の猫ちゃんですね」
「ええ、カーリタースは優秀な子です」
ずっとカエルム様と話に花を咲かせて楽しかった。もちろん、道中の風景とかも。ほのぼのとした花の大地が広がっていて綺麗だったなぁ。
いえ、現実逃避している場合ではないわね。家に帰らなくちゃ。
わたしはそれから家に帰り、両親と久しぶりに再会を果たした。打たれるかと思ったけれど、両親は本当に心配してくれていたようで、わたしは涙ながらに謝罪した。
「ごめんなさい。お父様」
「ヘルブラオ・ヴァインロートとかいう男に財産の殆どを騙し取られてしまったが、なぁに全てを失ったわけではない。驚くべき事にエキャルラット辺境伯から手紙も貰ってね。ウチを支援してくれるそうだ……」
辺境伯ってば、もう手を回してくれたのね。
嬉しい。機会があればお礼をしなくちゃ。
「良かった……家は無くならないのですね」
「ああ、問題はない。……それとスピラ、お前はこの方と婚約なさったそうだな」
「ええ、その事でご挨拶に」
「好きにしなさい。私は今までお前を縛りすぎていた。これからは自由に生き、自由な人生を送りなさい。カエルム様、どうか娘をよろしくお願いします」
「スピラは僕にお任せ下さい。必ず幸せにしてみせます」
お父様もお母様もインペリアルガーディアンであるカエルム様を知っていた。さすが有名人。だからこそ、任せられると認めて下さり、なによりもヘルブラオ・ヴァインロートを倒した事実を認めた。
「この子を……スピラをお願いします」
お母様がカエルム様に頭を下げる。
「ええ、これから聖域領地クォ・ヴァディスにて幸せな生活を送ります。それでは僕らは行きます」
◆
故郷アスプロを去った。
あとは最後の目的地である聖域領地クォ・ヴァディス。そこへ行けば、誰にも邪魔されず、のんびり生活できるようだ。
「カエルム様、二人きりなんですか?」
「いえ、オーリム家の祖父、祖母がおります。あと、昔その二人に仕えていた執事とメイドさんです」
メイドさんいたんだ。でも、昔の話ね。
きっとエキャルラット辺境伯になってから、メイドさんを警戒するようになったに違いない。
「へえ、じゃあそんなに寂しくないですね」
「きっと兄上も来るかもしれませんよ」
「え、ユーデクス様が?」
「いつか素敵な人と出会えれば、あるいは……」
そういう事ね。
しばらくは本当にのんびり過ごせそう。
――森を進んでいく。
カーリタースちゃんがどんどん先へ進んでくれるおかげで、到着は思った以上に早かった。予定では日が沈む頃と聞いていたけど、それよりも早く到着した。
「ここが……」
「この先にある『カルディア』という魔法防壁があります。それが『聖域』なんです。絶対侵入不可能の大魔法・カルディア。父上が仰るには愛の魔法と」
へぇ、素敵。
誰からも邪魔されないのね。
「このカードを使用します。使用後は中へ転移されるでしょう。スピラ、僕の方へ」
「お願いしますね」
わたしはカエルム様に抱きついて、彼の背中へ手を回す。振り落とされたらイヤだからね。
――聖域領地クォ・ヴァディス――
聖域内は、三つのお屋敷が三角形に配置されていた。周囲はイーオンのお花畑。これは、ユーデクス様がお庭で育てられていた……そっか、同じ物が。
花言葉は『永遠の愛』だ。
「なんて美しい場所……」
「ええ、以前よりも華やかだ」
聖域と呼ばれているだけあり、そこには花の楽園があった。こんな素敵な場所で生活を送れるんだ。
「カエルム様……」
わたしは目をそっと閉じ、瞬間を待った。
「スピラ」
彼はそっとわたしに口づけを――。
――――最高に、幸せ。
◇
真ん中のお屋敷が空いていた。
カエルム様の専用であるらしく、わたしもそこへ。最初は慣れない生活が続いたけれど、今はお料理やお洗濯を執事さんやメイドさんから教わっていた。少し花嫁修業くらいしなさいと大お母様から勧められた結果だった。
「……はぁ。手加減はしてくれていますど、今日も大変でした」
「お疲れ、スピラ」
カエルム様とわたしのお部屋。
今は一緒のお部屋。バルコニーへ出ると、あのお花畑が続いていて、景色が最高。朝ならファンタスティックな青空が、夕方ならノスタルジックな夕焼けが、夜ならロマンチックな星空が望める。
そんな最高の風景を眺められる場所で、わたしはカエルム様に抱かれていた。
「カエルム様。わたし、すっごく幸せです」
「僕もだよ。今日はずっとこうしていたいな」
「はい……可愛がって下さい」
「うん。スピラをいっぱい愛するよ」
・
・
・
――1年後。
わたしとカエルム様は無事に結婚した。
それから、実の父と母、辺境伯やお母様、ユーデクス様も迎え幸せな毎日を暮らしている。そして、わたしとカエルム様は変わらぬ愛を育んでいる。
カエルム様にありがとう。
みんなに、ありがとう。
「揺れも少なくて、お尻も痛くなかったですし、最高の猫ちゃんですね」
「ええ、カーリタースは優秀な子です」
ずっとカエルム様と話に花を咲かせて楽しかった。もちろん、道中の風景とかも。ほのぼのとした花の大地が広がっていて綺麗だったなぁ。
いえ、現実逃避している場合ではないわね。家に帰らなくちゃ。
わたしはそれから家に帰り、両親と久しぶりに再会を果たした。打たれるかと思ったけれど、両親は本当に心配してくれていたようで、わたしは涙ながらに謝罪した。
「ごめんなさい。お父様」
「ヘルブラオ・ヴァインロートとかいう男に財産の殆どを騙し取られてしまったが、なぁに全てを失ったわけではない。驚くべき事にエキャルラット辺境伯から手紙も貰ってね。ウチを支援してくれるそうだ……」
辺境伯ってば、もう手を回してくれたのね。
嬉しい。機会があればお礼をしなくちゃ。
「良かった……家は無くならないのですね」
「ああ、問題はない。……それとスピラ、お前はこの方と婚約なさったそうだな」
「ええ、その事でご挨拶に」
「好きにしなさい。私は今までお前を縛りすぎていた。これからは自由に生き、自由な人生を送りなさい。カエルム様、どうか娘をよろしくお願いします」
「スピラは僕にお任せ下さい。必ず幸せにしてみせます」
お父様もお母様もインペリアルガーディアンであるカエルム様を知っていた。さすが有名人。だからこそ、任せられると認めて下さり、なによりもヘルブラオ・ヴァインロートを倒した事実を認めた。
「この子を……スピラをお願いします」
お母様がカエルム様に頭を下げる。
「ええ、これから聖域領地クォ・ヴァディスにて幸せな生活を送ります。それでは僕らは行きます」
◆
故郷アスプロを去った。
あとは最後の目的地である聖域領地クォ・ヴァディス。そこへ行けば、誰にも邪魔されず、のんびり生活できるようだ。
「カエルム様、二人きりなんですか?」
「いえ、オーリム家の祖父、祖母がおります。あと、昔その二人に仕えていた執事とメイドさんです」
メイドさんいたんだ。でも、昔の話ね。
きっとエキャルラット辺境伯になってから、メイドさんを警戒するようになったに違いない。
「へえ、じゃあそんなに寂しくないですね」
「きっと兄上も来るかもしれませんよ」
「え、ユーデクス様が?」
「いつか素敵な人と出会えれば、あるいは……」
そういう事ね。
しばらくは本当にのんびり過ごせそう。
――森を進んでいく。
カーリタースちゃんがどんどん先へ進んでくれるおかげで、到着は思った以上に早かった。予定では日が沈む頃と聞いていたけど、それよりも早く到着した。
「ここが……」
「この先にある『カルディア』という魔法防壁があります。それが『聖域』なんです。絶対侵入不可能の大魔法・カルディア。父上が仰るには愛の魔法と」
へぇ、素敵。
誰からも邪魔されないのね。
「このカードを使用します。使用後は中へ転移されるでしょう。スピラ、僕の方へ」
「お願いしますね」
わたしはカエルム様に抱きついて、彼の背中へ手を回す。振り落とされたらイヤだからね。
――聖域領地クォ・ヴァディス――
聖域内は、三つのお屋敷が三角形に配置されていた。周囲はイーオンのお花畑。これは、ユーデクス様がお庭で育てられていた……そっか、同じ物が。
花言葉は『永遠の愛』だ。
「なんて美しい場所……」
「ええ、以前よりも華やかだ」
聖域と呼ばれているだけあり、そこには花の楽園があった。こんな素敵な場所で生活を送れるんだ。
「カエルム様……」
わたしは目をそっと閉じ、瞬間を待った。
「スピラ」
彼はそっとわたしに口づけを――。
――――最高に、幸せ。
◇
真ん中のお屋敷が空いていた。
カエルム様の専用であるらしく、わたしもそこへ。最初は慣れない生活が続いたけれど、今はお料理やお洗濯を執事さんやメイドさんから教わっていた。少し花嫁修業くらいしなさいと大お母様から勧められた結果だった。
「……はぁ。手加減はしてくれていますど、今日も大変でした」
「お疲れ、スピラ」
カエルム様とわたしのお部屋。
今は一緒のお部屋。バルコニーへ出ると、あのお花畑が続いていて、景色が最高。朝ならファンタスティックな青空が、夕方ならノスタルジックな夕焼けが、夜ならロマンチックな星空が望める。
そんな最高の風景を眺められる場所で、わたしはカエルム様に抱かれていた。
「カエルム様。わたし、すっごく幸せです」
「僕もだよ。今日はずっとこうしていたいな」
「はい……可愛がって下さい」
「うん。スピラをいっぱい愛するよ」
・
・
・
――1年後。
わたしとカエルム様は無事に結婚した。
それから、実の父と母、辺境伯やお母様、ユーデクス様も迎え幸せな毎日を暮らしている。そして、わたしとカエルム様は変わらぬ愛を育んでいる。
カエルム様にありがとう。
みんなに、ありがとう。
応援ありがとうございます!
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