婚約破棄28日後... 王子のせいで国が滅亡するようです...28日後に現れた王子はゾンビでした。白の聖女のわたしでもお手上げです!

夜桜

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#06 幸せすぎる日々

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「そ……そんな、ディレク様、ご冗談でしょう!? 私を追放なさるおつもりなんです? 王族の関係者だった私を!」

「もう王族はいない。国も滅んだようなものだから、共和国でもないしね。残念だけど、ローザに暴力を振おうとしたし、侮辱した事も許せない。テレジア……本当にすまないが、僕たちの前にもう二度と現れないでくれ」


 重苦しい空気の中、ディレクはわたしの手を握ってくれた。……もう、そんな風にされたら嬉しくて泣いちゃいそう。


「……嘘よ、嘘。こんな女のどこがいいのよ! 不気味な銀髪だし、顔だってブサイクじゃないのッ!!」


 ディレクはもう呆れて、深い溜息を漏らしていた。それがまるで合図かのように、お屋敷の周辺に住む人たちが何事かと集まってきた。見知った顔が多くて、あの時の生存者の顔ぶれだった。


「…………」


 皆、怖い顔でテレジアをにらむ。


「おい、テレジア! ディレク様とローザ様の仲を引き裂こうなど言語道断だ」「そうだ、二人は幸せになるべきだ」「テレジア、お前、王族の関係者だって聞いたぞ」「王子とも親しかったそうだな! 今まであえて追及しなかったけど!」「復興の邪魔もしやがって、もう我慢の限界だ!」


 住民の不満が爆発していた。

 皆どんどんテレジアを追い詰めていく。


「…………くぅ、くぅぅぅ……! もういいわッ! こんなボロボロの国なんて捨ててやる! 私は自由に生きるわ! こんな国でもない土地なんて、こちらから願い下げよ。去ってやる」


 逆ギレ……これは酷いわね。

 テレジアはくるりときびすを返し、背を向けて去っていく。今やモンスターを守る壁もないから、直ぐに外へ出られる。


 そうして、テレジアは去った。


 ◆


 ……更に28日後。


 お屋敷で幸せな毎日を暮らしていた。
 ディレクはその立場から、他の女性からよくお誘いを受けていたけれど、全部断ってわたし一筋で、わたしだけを見つめてくれていた。常に傍にいてくれたので、彼がどれだけわたしを想ってくれているか理解できた。


「今日もお疲れ様でした、ディレク」
「やっと魔法も完成してね。これで完璧なバリアを張れるよ。もう明日には全て塞げるから、今後もうアンデッドモンスターとかに襲われる心配もないよ」


 そう、彼の魔法は完成した。
 月と太陽の守護魔法。

 これでモンスターの侵入を阻める。彼の魔法は完璧だったし、これまでも何度も役立っていた。その度に彼の評判は上がっていき、それと同時にわたしの名声も広まった。今やわたしとディレクは王族のような扱いになっていた。


「これで本当の平和が訪れるのですね」
「そうさ、ローザと結婚式も挙げられるよ」
「心の底から嬉しいです。この時をずっと待ち望んでいましたから」


 抱き合ってゆったりとした時間を過ごしていると――



「きゃあああああッ!!」



 突然、叫び声が。


「外の方だったな。ローザ、何か感じるかい?」
「少し嫌な感じがしますけど……もしかして、ゾンビが」


 その可能性は否定できない。
 魔法まだ全ての壁を塞いだわけじゃない。もし、野良ゾンビとかだとしたら大変だ。


 直ぐにお屋敷の外の様子を見に行った。丁度、近くが塞がれていないポイントだった。


 到着すると、塞がれていない壁の外には――



「……ディ、レク、サマ……。ロー…ザ」



 ゾンビとなったテレジアの姿があった。顔はただれ、服も手足はズタズタのボロボロ。もうあの綺麗だった顔は残されていない。


「テレジア……。貴方、感染してしまったのね」

「……ローザ様、下がって」

「ですが!」

「もうアレはゾンビです。残念ですが……先程完成した月と太陽の魔法で壁を塞ぎます。これで外界とは完全に遮断されて、国は平和になるんです」


 そうね、これが一番正しい選択でしょう。もう、ゾンビを助ける事なんて出来ないのだから――。


 ……バリアが埋まり、塞がった。これでもうモンスターは出入り出来ない。この国はディレクの偉大な魔法によって守護されるようになった。

 そして、現れたゾンビ……彼女は誰かに討伐されない限り、この世を永遠に彷徨い続けるのだろう。


 ……せめてもの慈悲。
 わたしは祈りを捧ぐ。


 ◆


 国は完全に平和となり、モンスターは一匹もいない。昔のような大量のモンスターの襲来もなく、ゾンビも現れていない。


 人々は、ディレクの偉業を讃えた。


 そうして彼は新たな王と認められ、建国を果たした。そして数日後には、わたしとディレクは結婚。幸せすぎる日々が始まり、永遠の幸せを手に入れた――。
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みんなの感想(2件)

蠣崎若狭守
2021.09.23 蠣崎若狭守

 共和国に王子の存在は矛盾していないか?
 そもそも、共和国というのは共和制を国是とする国のことを指す。
 共和制というのはWikipedia先生によると「君主を持たない政体、君主制ではない政治体制である。共和制では、国家の所有や統治上の最高決定権(主権)を、個人(君主)ではなく、人民または人民の大部分が持つ。」というものである。

 王子、国王、王族が存在する時点で共和政体ではなく君主政体だ。
 王族の存在と共和制ではなくとも民主主義を同居させる国体は現実世界の日本やタイ王国、グレートブリテン(略)連合王国のように憲法(憲章)で君主の主権をなくし、三権分立、主権在民を確立させている立憲君主制である。

 ・・・という前提を踏まえると素直に「王国」するのが良いのではなかろうか。

解除
スパークノークス

おもしろい!
お気に入りに登録しました~

2021.08.30 夜桜

ありがとうございます!
よろしくお願いします〜

解除

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