2 / 6
第二話 さようならお姉様
しおりを挟む
もう用はない。
立ち去ろうとすると、ニーナお姉様は激怒して詰め寄ってきた。けれど、近くで話を聞いていたブレンディに止められた。
「ニーナ……この俺と結婚してくれる約束だろ!?」
「誰があんたみたいな犯罪者と!」
「おい、待ってくれ。俺はあんたのモノになったはずだ」
「ふざけないで……! マリサの買収でそういう風に演技しているだけでしょう。もう、あんたみたいな社会のクズに用はないわ!」
お姉さまは昔からそう。気に食わないとストレートに暴言を吐く。今まで周囲の人間が恐れて、萎縮して、誰も止めなかった。
でも、犯罪者相手では関係ない。
彼に失うモノなんてないのだから。
「そ、そうか……ニーナ。俺を捨てるのか……」
「ええ、そうよ。あんたなんかと結婚してたまるものですか! 目障りよ、消えなさい」
そう冷たく言い放つお姉様。
けれど、ブレンディは笑ってお姉様の頬を叩いた。強く……とても強く。
「美人だからって調子に乗るなよ」
「……い、痛っ! な……なにをするの!」
「ニーナ、お前は妹のマリサに見限られたんだよ。気づけよ」
「え……」
「俺はもともと貴族だった。だが、不運にも婚約していた女に捨てられてな……金も権力も全部持っていかれた。その恨みで暴力を」
その結果、ブレンディは捕まり――最近まで牢の中で暮らしていた。少し、ほんの少しだけ同情できる部分もあった。だから、わたしは彼を利用した。
ブレンディもわたしの境遇を聞いてくれて、協力してくれることに。
こうして今、ニーナお姉様に復讐を果たすことができたのだ。
「それでも……結婚はお断りよ!」
「お前は何も知らないんだな、ニーナ」
「どういう意味よ」
「俺とお前は明日には結婚することになっている。この国では結婚を決めた以上、それを取りやめることは出来ない。一週間前なら破棄も出来たが、もう前日……だから法律が絶対だ」
法律を破れば、監禁生活が待っている。しばらく出てこれなくなるし、前科もつく。ブレンディと同じように貴族ではなくなってしまう。
もうお姉様に残された選択は二つしかない。
ブレンディと結婚して暮らすか、地下の独房で三年間の監禁生活か。
ようやく悟ったのか、お姉様は絶望していた。
立ち去ろうとすると、ニーナお姉様は激怒して詰め寄ってきた。けれど、近くで話を聞いていたブレンディに止められた。
「ニーナ……この俺と結婚してくれる約束だろ!?」
「誰があんたみたいな犯罪者と!」
「おい、待ってくれ。俺はあんたのモノになったはずだ」
「ふざけないで……! マリサの買収でそういう風に演技しているだけでしょう。もう、あんたみたいな社会のクズに用はないわ!」
お姉さまは昔からそう。気に食わないとストレートに暴言を吐く。今まで周囲の人間が恐れて、萎縮して、誰も止めなかった。
でも、犯罪者相手では関係ない。
彼に失うモノなんてないのだから。
「そ、そうか……ニーナ。俺を捨てるのか……」
「ええ、そうよ。あんたなんかと結婚してたまるものですか! 目障りよ、消えなさい」
そう冷たく言い放つお姉様。
けれど、ブレンディは笑ってお姉様の頬を叩いた。強く……とても強く。
「美人だからって調子に乗るなよ」
「……い、痛っ! な……なにをするの!」
「ニーナ、お前は妹のマリサに見限られたんだよ。気づけよ」
「え……」
「俺はもともと貴族だった。だが、不運にも婚約していた女に捨てられてな……金も権力も全部持っていかれた。その恨みで暴力を」
その結果、ブレンディは捕まり――最近まで牢の中で暮らしていた。少し、ほんの少しだけ同情できる部分もあった。だから、わたしは彼を利用した。
ブレンディもわたしの境遇を聞いてくれて、協力してくれることに。
こうして今、ニーナお姉様に復讐を果たすことができたのだ。
「それでも……結婚はお断りよ!」
「お前は何も知らないんだな、ニーナ」
「どういう意味よ」
「俺とお前は明日には結婚することになっている。この国では結婚を決めた以上、それを取りやめることは出来ない。一週間前なら破棄も出来たが、もう前日……だから法律が絶対だ」
法律を破れば、監禁生活が待っている。しばらく出てこれなくなるし、前科もつく。ブレンディと同じように貴族ではなくなってしまう。
もうお姉様に残された選択は二つしかない。
ブレンディと結婚して暮らすか、地下の独房で三年間の監禁生活か。
ようやく悟ったのか、お姉様は絶望していた。
462
あなたにおすすめの小説
「仕方ないから君で妥協する」なんて言う婚約者は、こちらの方から願い下げです。
木山楽斗
恋愛
子爵令嬢であるマルティアは、父親同士が懇意にしている伯爵令息バルクルと婚約することになった。
幼少期の頃から二人には付き合いがあったが、マルティアは彼のことを快く思っていなかった。ある時からバルクルは高慢な性格になり、自身のことを見下す発言をするようになったからだ。
「まあ色々と思う所はあるが、仕方ないから君で妥協するとしよう」
「……はい?」
「僕に相応しい相手とは言い難いが、及第点くらいはあげても構わない。光栄に思うのだな」
婚約者となったバルクルからかけられた言葉に、マルティアは自身の婚約が良いものではないことを確信することになった。
彼女は婚約の破談を進言するとバルクルに啖呵を切り、彼の前から立ち去ることにした。
しばらくして、社交界にはある噂が流れ始める。それはマルティアが身勝手な理由で、バルクルとの婚約を破棄したというものだった。
父親と破談の話を進めようとしていたマルティアにとって、それは予想外のものであった。その噂の発端がバルクルであることを知り、彼女はさらに驚くことになる。
そんなマルティアに手を差し伸べたのは、ひょんなことから知り合った公爵家の令息ラウエルであった。
彼の介入により、マルティアの立場は逆転することになる。バルクルが行っていたことが、白日の元に晒されることになったのだ。
【完結済み】私を裏切って幼馴染と結ばれようなんて、甘いのではありませんか?
法華
恋愛
貴族令嬢のリナは、小さいころに親から言いつけられた婚約者カインから、ずっと執拗な嫌がらせを受けてきた。彼は本当は、幼馴染のナーラと結婚したかったのだ。二人の結婚が済んだ日の夜、カインはリナに失踪するよう迫り、リナも自分の人生のために了承する。しかしカインは約束を破り、姿を消したリナを嘘で徹底的に貶める。一方、リナはすべてを読んでおり......。
※完結しました!こんなに多くの方に読んでいただけるとは思っておらず、とてもうれしく思っています。また新作を準備していますので、そちらもどうぞよろしくお願いします!
【お詫び】
未完結にもかかわらず、4/23 12:10 ~ 15:40の間完結済み扱いになっていました。誠に申し訳ありません。
【完結】夫が私を捨てて愛人と一緒になりたいと思っているかもしれませんがそうはいきません。
マミナ
恋愛
ジョゼルは私と離婚を済ませた後、父様を説得し、働いている者達を追い出してカレンと一緒に暮らしていたが…。
「なんでこんな事になったんだ…。」
「嘘よなんでなの…。」
暮らした二人は上手くいかない事ばかりが続く。
新しい使用人が全く入って来ず、父様から急に伯爵の地位を親族の1人であるブレイルに明け渡すと告げて来たり貴族としての人脈作りは上手くいかず、付き合いのあった友人も離れていった。
生活は苦しくなり、父様に泣きついたが、頑なに援助はしないと突っぱねられたので何故そうするのかジョゼルは父様に訪ねると…。
お前は要らない、ですか。そうですか、分かりました。では私は去りますね。あ、私、こう見えても人気があるので、次の相手もすぐに見つかりますよ。
四季
恋愛
お前は要らない、ですか。
そうですか、分かりました。
では私は去りますね。
妹と王子殿下は両想いのようなので、私は身を引かせてもらいます。
木山楽斗
恋愛
侯爵令嬢であるラナシアは、第三王子との婚約を喜んでいた。
民を重んじるというラナシアの考えに彼は同調しており、良き夫婦になれると彼女は考えていたのだ。
しかしその期待は、呆気なく裏切られることになった。
第三王子は心の中では民を見下しており、ラナシアの妹と結託して侯爵家を手に入れようとしていたのである。
婚約者の本性を知ったラナシアは、二人の計画を止めるべく行動を開始した。
そこで彼女は、公爵と平民との間にできた妾の子の公爵令息ジオルトと出会う。
その出自故に第三王子と対立している彼は、ラナシアに協力を申し出てきた。
半ば強引なその申し出をラナシアが受け入れたことで、二人は協力関係となる。
二人は王家や公爵家、侯爵家の協力を取り付けながら、着々と準備を進めた。
その結果、妹と第三王子が計画を実行するよりも前に、ラナシアとジオルトの作戦が始まったのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる