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しおりを挟むそのままゆっくりと顔が近づいてきて、唇が重なった。
「っ、んっ」
なかなか離れてくれない唇が、酸素をどんどん奪っていく。
もうやめろと涼の身体を押し返したが、体勢やら状態やら元々の力の差やらで、涼の身体はびくともしない。苦しくて口を開ければ、暖かい何かが入り込んできた。
こんな長い時間キスをするのも、深いキスをするのも、キスだけでここまで思考が蕩けるのも初めてだった。
「ゆーちゃん、可愛い。もっと可愛いゆーちゃんも見せて?」
やっと涼が離れていったかと思えば、あり得ないところに冷たさを感じる。
「えっ、えっなんで、やめっ」
そこは通常人に触られるわけもない排泄器官であり、そこに指が入ってくるなんて想像できるはずもない。
「大丈夫、力抜いて? ほら深呼吸」
「やっ、やだ抜いて、やだ」
僕はパニックになっていた。経験のない、外部から身体のナカが掻き回される刺激に、言い表しがたい、ふわふわとした感覚に陥る。
「なに、これ。なんで……」
「さすがオメガ、もう濡れてるんだね。ねぇ、気持ちいい?」
「気持ちよくなんか……っ」
ない、と言おうとしたところで、中の動きがより一層大きくなる。同時に何ヶ所かに刺激が走り、中に入っている指が1本だけでないことがわかった。ふわふわした感覚もそれと同時に大きくなり、これが「気持ちいい」という感覚なのだと自覚した。
「やめっ、体が、変だから」
「急すぎて思考が追いついてないだけだよ。大丈夫、すぐに慣れるから。だからリラックスして?じゃないと、いれるの痛いと思うから」
体の変化が、こんなことをされて気持ちよく感じてしまう自分が怖くて、涼の背中に腕をまわしてしがみつく。
「裕也、僕の声聞いて。力を抜いて。ゆーちゃんが苦しまないためだから、ね?」
ここでようやく僕は涼の言葉を聞き入れる。深呼吸をしてみたら、ずいぶん呼吸が浅くなっていたことに気付いた。
「落ち着いた? ごめんね、本当は待ってあげたいんだけど、僕ももう限界だから」
「あっ、っーー」
指が引き抜かれたと思えば、さっきとは比べものにならない衝撃が体に走る。それは指よりもずっと熱くて大きいものだった。
「いや、抜いて、やだ」
それが何かを認めたくなくて、認めるのが怖くて、逃げようと必死にもがく。だがいつの間にか涼に抱きかかえられるような体勢にされていて、その抵抗は中にあるものの存在を大きくさせるだけだ。
「ごめんね。でもゆーちゃんを手放さないためにはこれしかないからっ」
言い終わると同時に涼の顔がぐっと近付く。
「あっ、やっ、出る、まって……!」
それはつまり、快感も同時に押し寄せてくるということで。
「いいよ。楽になって?オメガなんだから感じるのは仕方ないんだよ」
『オメガなんだから』。その言葉が今は救いのように思えた。そうだ、理性が効かないのはオメガ性のせい。決して僕がおかしいわけではない。
「っ、あ、あぁっ…!」
まるでスイッチでもあったかのように、理性が崩壊する。それは保健の時間に聞いた『ヒート』の症状そのものだった。気持ちいいことしか考えられなくなる。もっともっと、さっきの快感を味わいたい。
「りょー、おねがい。おさまんないから、もっかい…!」
「………………あぁ、何度でも」
涼のが再び奥まではいってくる。嫌悪感は、もうなかった。
「あっまた、さっきのがっ……!」
「今度は僕も、一緒にいい?」
目の前が、一瞬白く染まる。答える前だというのにナカに暖かい液体が注がれるのを感じた。
瞬間、うなじに痛みが走る。皮膚に残る、涼の歯型の痛みが、甘い甘い痺れを体にもたらした。
僕の中のオメガ性が、これが「幸せ」という感情なのだと僕に訴える。
「っ、あっ、あぁっっ」
再び涼が僕の体内を侵す。これがもう2回繰り返されたのち、僕は意識を失った。
自分の中の大切な何かが、涼によって書き換えられていく。
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