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しおりを挟む昼間は苦しかっただけ。でも今は、心地よくクラクラしている感じ。
大好きな人の香りに包まれて、のぼせそうになる。
「寝室、行こう?」
早く彼に触れたい。触れてほしい。そんな想いが溢れて、自分の身体を突き動かす。鈍くなった頭で彼の誘いを理解する前に、当然のように彼についていった。
寝室に入ると、一層香りが強くなる。今までは気付かなかった彼の色濃い香りに、さらに身体の温度が高くなった。
「僕のフェロモンが充満してるの今なら分かる? 充希とシてる時抑えらんなくてさ。濃いでしょ、ここ」
香りが俺を愛していると雄弁に語る。
そうか、Ωになると言葉以外でも愛してるが分かるんだ。
「俺のこと、ほんとに好きだったんだね」
その愛を受け取ってあげられない身体なのを知っていても、ずっと一方的に愛を叫んじゃうくらいに。
「当たり前でしょ。なに、疑ってたの?」
「疑ってはないけど。こんなにとは思ってなかった」
2人同時に待ちきれないとばかりにベッドの上に倒れ込む。どちらからともなく噛みつくようなキスをして、お互いの熱を交換しあった。
身体が火傷するんじゃないかってくらいに熱くなる。息も乱れてきて、この状況もあいまって、『抱いてほしい』しか頭になくなる。
「誠司、早く……っ!」
「あー、もう。……可愛いんだから」
普段なら絶対にしないような、自分から脚を広げる格好で誘う。恥ずかしいなんて気持ちは、もう持ってなかった。早く、早く誠司をナカで感じたい。
「ナカは濡れるのかな……それは医者から聞いてなかったや」
お尻にヒヤリとした感触がして、それは違うとフルフルと首を振る。誠司は優しいから解してくれようとしているのだと分かってはいるけれど、早く熱いものが欲しかった。
「やだ。早く」
とろけきった頭で誠司の性器に手を伸ばす。早くそれで突いてとねだるように。
「っ、煽んなよっ……!」
彼も服を脱ぎだして、待ちわびていたものが目前に現れる。まだ完全に硬くなっているわけではなかったけれど、ぴくぴくと反応しているのが分かって愛しかった。
「舐めて」
普段あんまりフェラはしないけれど、今の自分の目にはそれがとても美味しそうなものに見えた。大きな口を開けてしゃぶりつけば、誠司の甘い吐息が聞こえる。それが嬉しくて吸ったり先端をつついたりしていれば、制止の声がかかった。
「ん。もう、いいから」
唾液でてらてらと光ったそれが、待ちわびていたそこに近づいていく。
「挿れるよ」
言うが早いか、身体に衝撃が走った。どちらもぬるぬるとした状態だから予想よりもスムーズに入って、一瞬息が出来なくなる。
「っ、んぁぁあ……!」
奥をガツガツと突かれれば、もうまともな思考なんてできない。
「やっ、ああっ、気持ちいっ……」
気持ちいいだけが頭の中を占めて、ただただ喘いでいた。
そのままずっと揺さぶられていると、誠司も表情を変えたのが分かる。律動が徐々に早くなって、限界が近いことが見て取れた。
「っ、イきそ……」
お腹が壊れることを気にして、避妊具をつけていない時の普段の誠司は外に出してくれる。でも今日は俺が彼のことを放したくなくて、抜けようとする彼の腰をぐっと抱きしめた。
「ナカで、いいから。ナカに欲し……っ」
誠司が怖い顔をしたかと思えば、もうこれ以上は入らないというほど奥に彼を感じる。そのまま熱いものが弾けるのを感じて、俺も同時に限界を迎えた。
「んあっ、ああぁあぁっ――!」
体力を消費した誠司が、俺の上へと被さる。ドクドクと心臓が高鳴っているのがこちらにも伝わってきて、嬉しさと愛しさがこみ上げた。
「ね、噛んで欲しい……」
そう強請れば、彼が少しだけ心配するような声でこう返す。
「後悔しない……? もう二度と離せなくなるよ。僕は心が狭いから、大学に行かせてあげる余裕もなくなるかも」
少し前なら考えたかもしれない。でも、俺はもう誠司とずっと一緒に居られる保証ができるなら何でも良かった。
「それが、いいから」
誠司が少し起き上がって、身体を回転させる余裕ができる。うつ伏せになってうなじを晒せば、彼の吐息がそこにかかった。
「もう、嫌だって言っても離さないからね」
「っ、いっ……!」
覚悟を決めたのと同時に、うなじに鋭い痛みが走る。
ずっと求めていた甘い痛みは、2人を永遠に繋ぐ証明だ。
「これで、俺のものだね」
うなじについた歯形をゆっくりと手でなぞる。もう運命にだって、誠司のことを渡すことは出来なくなった。
離れれば『生』を揺るがされるような、そんな運命共同体に僕たちはなった。
βとαだからって、本来結ばれない者同士だなんて、もう諦める必要はない。
俺たちは、運命の糸を自分たちの手で引き寄せたのだから。
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