10 / 13
第七話 約束
しおりを挟む
───四月十七日 午後十三時半。東京都・《テロ・犯罪組織特殊課~クライシス~》にて
樋口君がテロ組織《ユグドラシル》の首領である正岡子規の右腕【フョードル・ドストエフスキー】と遭遇して、三日が経った。今のところ樋口君に危害はなく、平和そのものと言っても良いくらいに何もない。だが、樋口君を一人で行動させることは危険なため、大学の時は太宰君に、クライシスでの任務では今まで通り誰かと共に行動してもらっている。樋口君はいつものように元気だが、フョードルと遭遇して何かを感じ取った、もしくは思い出したのかは知らないが、ボーっとすることが多くなってしまった。
そんな樋口君のために私、永井はあることを考えた。それを芥川君に話すとこう言われてしまった。
「頭打ったのですか?」
とね。私の扱いひどくない!?
「永井さんが部下を労わろうと考えることがまずありえません。でもまぁ、樋口さんのことを思うなら今回だけは、僕も永井さんの作戦に加わりましょう……」
「やったね!あとは~誰にしようかね~」
芥川君のそばでくるくると回っていると、丁度そこに坂口君が事務所に出社してきた。
「お早う!坂口君!」
坂口君はダルそうに、こちらを見て『うっす』と小さくつぶやき軽く会釈してくれた。彼がひ一人で出社してくる日は小説の原稿締め切りが間に合った時で、一週間丸々出社してこなかった場合は原稿が間に合わなかったことになる。今回は原稿が締め切り前に間に合ったみたい。
「お早うございます坂口君、原稿間に合ったみたいですね」
「間に合いましたよ……これで今月は出社できるんで」
「そーれは嬉しいことね!そんな君には私からご褒美があるのさ!」
坂口君の両手を包みこみ、目を輝かせて言うと、後ろから芥川君に新聞紙で叩かれてしまった。
「芥川さん、俺巻き込まれています?」
「えぇもうすでに。諦めてください坂口君」
「二人して酷くないー?ねぇねぇ~」
二人の周りをぐるぐる回ると、坂口君は欠伸をし芥川君はお腹をさすり始めた。私は坂口君に今回の作戦を教えることにした。
「樋口君がフョードル・ドストエフスキーと遭遇した後、なんだか気が落ち着かないみたいでねーそれで芥川君と坂口君にあることをしてほしいんだ。それはね~五日間にわたって沖縄に行ってもらいたい!三人で!」
「はぁ?」
「坂口君落ち着きなさい。永井さん何故に沖縄なのですか?」
芥川君と坂口君の肩に手を置き、『息抜きだよ』と言うと二人して互いの顔を見合わせ、私に『槍が降る!!』と言った。
「降らないからね?太宰君と織田君には任務で沖縄に向かわせていると言っておくから、三人でゆっくりしてきなさい!あとね、二人に入っておくけど五日間の間ここは《ユグドラシル》と攻防戦になると思うから、樋口君を安全な場所にと思ってね。今回は太宰君と織田君、私で何とかなりそうだから、気にしないで。いいね?」
「それは彼女には……」
「な・い・しょ!」
坂口君と芥川君は同時にため息をつき、頷いてくれた。
「明日から行ってもらうから、樋口君が来た際に改めて説明するから」
「分かりましたよ……。永井さん信じますからね?」
芥川君は真剣なまなざしでそう言ってきた。私は静かに頷いた。
───安心しなさい。私はもうあの頃の私ではないのだから
樋口君がテロ組織《ユグドラシル》の首領である正岡子規の右腕【フョードル・ドストエフスキー】と遭遇して、三日が経った。今のところ樋口君に危害はなく、平和そのものと言っても良いくらいに何もない。だが、樋口君を一人で行動させることは危険なため、大学の時は太宰君に、クライシスでの任務では今まで通り誰かと共に行動してもらっている。樋口君はいつものように元気だが、フョードルと遭遇して何かを感じ取った、もしくは思い出したのかは知らないが、ボーっとすることが多くなってしまった。
そんな樋口君のために私、永井はあることを考えた。それを芥川君に話すとこう言われてしまった。
「頭打ったのですか?」
とね。私の扱いひどくない!?
「永井さんが部下を労わろうと考えることがまずありえません。でもまぁ、樋口さんのことを思うなら今回だけは、僕も永井さんの作戦に加わりましょう……」
「やったね!あとは~誰にしようかね~」
芥川君のそばでくるくると回っていると、丁度そこに坂口君が事務所に出社してきた。
「お早う!坂口君!」
坂口君はダルそうに、こちらを見て『うっす』と小さくつぶやき軽く会釈してくれた。彼がひ一人で出社してくる日は小説の原稿締め切りが間に合った時で、一週間丸々出社してこなかった場合は原稿が間に合わなかったことになる。今回は原稿が締め切り前に間に合ったみたい。
「お早うございます坂口君、原稿間に合ったみたいですね」
「間に合いましたよ……これで今月は出社できるんで」
「そーれは嬉しいことね!そんな君には私からご褒美があるのさ!」
坂口君の両手を包みこみ、目を輝かせて言うと、後ろから芥川君に新聞紙で叩かれてしまった。
「芥川さん、俺巻き込まれています?」
「えぇもうすでに。諦めてください坂口君」
「二人して酷くないー?ねぇねぇ~」
二人の周りをぐるぐる回ると、坂口君は欠伸をし芥川君はお腹をさすり始めた。私は坂口君に今回の作戦を教えることにした。
「樋口君がフョードル・ドストエフスキーと遭遇した後、なんだか気が落ち着かないみたいでねーそれで芥川君と坂口君にあることをしてほしいんだ。それはね~五日間にわたって沖縄に行ってもらいたい!三人で!」
「はぁ?」
「坂口君落ち着きなさい。永井さん何故に沖縄なのですか?」
芥川君と坂口君の肩に手を置き、『息抜きだよ』と言うと二人して互いの顔を見合わせ、私に『槍が降る!!』と言った。
「降らないからね?太宰君と織田君には任務で沖縄に向かわせていると言っておくから、三人でゆっくりしてきなさい!あとね、二人に入っておくけど五日間の間ここは《ユグドラシル》と攻防戦になると思うから、樋口君を安全な場所にと思ってね。今回は太宰君と織田君、私で何とかなりそうだから、気にしないで。いいね?」
「それは彼女には……」
「な・い・しょ!」
坂口君と芥川君は同時にため息をつき、頷いてくれた。
「明日から行ってもらうから、樋口君が来た際に改めて説明するから」
「分かりましたよ……。永井さん信じますからね?」
芥川君は真剣なまなざしでそう言ってきた。私は静かに頷いた。
───安心しなさい。私はもうあの頃の私ではないのだから
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
【完結・おまけ追加】期間限定の妻は夫にとろっとろに蕩けさせられて大変困惑しております
紬あおい
恋愛
病弱な妹リリスの代わりに嫁いだミルゼは、夫のラディアスと期間限定の夫婦となる。
二年後にはリリスと交代しなければならない。
そんなミルゼを閨で蕩かすラディアス。
普段も優しい良き夫に困惑を隠せないミルゼだった…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる