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25話
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治療を終えると、俺は軍医に感謝の言葉を告げテントの外へ出る。
風の音と四方八方から聞こえる兵士の呻き声が重なり、とても不気味に感じられた。
「治療は終わったか…?」
声の方を振り返ると、セドリックが腕を組んだままテント横の松明の隣に並んで待っていた。
「はい…!…ありがとうございます」
「礼はいい。明日の作戦を伝える。」と言い、見張りの兵士がいるテントの中へ入るのを確認し俺も後をついて行った。
テントの中には、隣国の戦闘服を身にまとった兵士が半数と指揮官らしき人がおり、地図を広げながら何かを話し込んでいる。
(俺が聞いてもいいのか…?)
俺は迷いながらも兵士に紛れ込み、間の隙間から覗き込んで作戦を聞く。
「━━ということから弓兵を死角に配置し、グリード族の注意を一方向ではなく多方面に分散させる。そうすれば、アイツらは混乱するだろう。その隙に、我らが攻め入り頭の首を切る。…………どうだ?」
隣国の兵士は、そう上手くいくか?という疑いの目を向けていたが反発する者は誰一人としていなかった。セドリックは顎に手を置き、何かを考えている様子だったが数分後に承諾した。
「弓兵の編成はこちらで考えておく。明日に備え、ゆっくり身体を休めろ」
指揮官の言葉に兵士達は返事をしテントから出ていく。俺も、作戦を聞き終えたので戻ろうと身体をテントの外へ向けた瞬間呼び止められた。
「おい。……こっちに来い」
セドリックの命令に素直に従い、指揮官達のいる方へ向かう。
「ケイラ……だったか?」
「はい。」
「弓は使えるか?」
セドリックの質問に俺は素直に答える。
「はい、使えます。」
「どのくらい出来る?」
「鳥を狩れる位にはなりますが……」
「充分だ。」
その言葉に俺は、汗をかく。
「弓兵の…ですか?」
「あぁ。」
「………」
「任せた。」
俺の肩をポンと軽く叩くセドリック。
「失敗は……」
「敵に居場所を教えるようなものだと思え。」
失敗が許されないと知り、俺は固まってしまう。任される事は苦ではない。だが、失敗をしてしまえば一瞬にして命は終わってしまう。そんな場面に何故俺を選んだのか訳が分からず、セドリックがテントの外へ出ていく姿をずっと眺めていた。そして、その日の夜は眠れぬ夜を過ごし朝を迎えた。
夜明け前に各々の兵士が目覚め、作戦準備を行っていく。俺は、意識が入らない頭で弓と矢の準備を行う。
「………………。」
誰とも喋らず黙々と矢の先を石で研いでいく。
そして━━━━━━━
息を潜めながら、死角へ待機した。戦場内は霧が出ており視界を悪くする。だが、指揮官はそんなのお構い無しに兵士に命令を下す。
「足音が聞こえてきたら、矢を一斉に放て」
俺は、指示通りグリード族が来るのを待機する。他の弓矢兵は緊張で深呼吸をするものや自分には出来ないと言う者がいた。だが、後戻りはもう出来ない。
数メートル先で馬を走らせる音が聞こえ、俺は息を殺し集中する。霧の中からうっすらと見えた彼らは間違いなくグリード族だった。数十名の兵士を引き連れた中にはアルバーノが先頭にいた。
アルバーノが片手を上げ兵士の歩みを止める。霧で見えにくいのだろうか、周りの様子を伺っているのが確認できる。
俺はその様子を観察していると━━━━━、
「ごめんなさい……!」と1人の兵士が誤って矢をグリード族に向けて放った。
(まずい……!)
グリード族に居場所がバレてしまい、俺も慌てて矢を放つ。別の場所で待機していた弓矢兵も攻撃を開始し戦場には矢の雨が降った。
そこからは必死に命懸けで死闘を繰り広げた。終わる頃には、敵か味方か分からない程の血が身体中に染まっていた。
結果的に、両者とも多くの戦死者を出したが作戦は成功し勝利した。
グリード族が次々と撤退していく姿を俺は眺める。
アルバーノは兵士たちの後ろを歩きこちら側が攻撃をせぬ様見守っていた。
「……。」
下を見ると、折れ曲がった矢や最前線で活躍した兵士の死体が転がっていた。
「いいか!…奴等の首元を裂け…!」と生き残った兵士に指示を出す指揮官がグリード族の兵士の死体を切り裂いていた。
「無事か………?」
セドリックが俺に近づき、怪我の確認を行う。
「はい、大丈夫です」
「……私達も帰るぞ。日が暮れてしまう」
「はい」
セドリックの指示に従い、戦場を後にする。
━━━「馬を頂き感謝します。」
セドリックが指揮官に深々と頭を下げる。
「こちらこそ援軍要請を受け入れて頂きありがとうございます」
勝利した事に満足気な指揮官は終始笑顔で俺達を見送る。
「では、お気をつけて」
「あぁ。」
そんなやり取りを交わしセドリックは馬を走らせる。他の兵士たちは遅れを取らないよう必死に後をついていく。生き残った兵士は僅か数人程となった。
「……。」
俺は、最後尾を走りながら亡くなった兵士達を思い黙祷をした。
風の音と四方八方から聞こえる兵士の呻き声が重なり、とても不気味に感じられた。
「治療は終わったか…?」
声の方を振り返ると、セドリックが腕を組んだままテント横の松明の隣に並んで待っていた。
「はい…!…ありがとうございます」
「礼はいい。明日の作戦を伝える。」と言い、見張りの兵士がいるテントの中へ入るのを確認し俺も後をついて行った。
テントの中には、隣国の戦闘服を身にまとった兵士が半数と指揮官らしき人がおり、地図を広げながら何かを話し込んでいる。
(俺が聞いてもいいのか…?)
俺は迷いながらも兵士に紛れ込み、間の隙間から覗き込んで作戦を聞く。
「━━ということから弓兵を死角に配置し、グリード族の注意を一方向ではなく多方面に分散させる。そうすれば、アイツらは混乱するだろう。その隙に、我らが攻め入り頭の首を切る。…………どうだ?」
隣国の兵士は、そう上手くいくか?という疑いの目を向けていたが反発する者は誰一人としていなかった。セドリックは顎に手を置き、何かを考えている様子だったが数分後に承諾した。
「弓兵の編成はこちらで考えておく。明日に備え、ゆっくり身体を休めろ」
指揮官の言葉に兵士達は返事をしテントから出ていく。俺も、作戦を聞き終えたので戻ろうと身体をテントの外へ向けた瞬間呼び止められた。
「おい。……こっちに来い」
セドリックの命令に素直に従い、指揮官達のいる方へ向かう。
「ケイラ……だったか?」
「はい。」
「弓は使えるか?」
セドリックの質問に俺は素直に答える。
「はい、使えます。」
「どのくらい出来る?」
「鳥を狩れる位にはなりますが……」
「充分だ。」
その言葉に俺は、汗をかく。
「弓兵の…ですか?」
「あぁ。」
「………」
「任せた。」
俺の肩をポンと軽く叩くセドリック。
「失敗は……」
「敵に居場所を教えるようなものだと思え。」
失敗が許されないと知り、俺は固まってしまう。任される事は苦ではない。だが、失敗をしてしまえば一瞬にして命は終わってしまう。そんな場面に何故俺を選んだのか訳が分からず、セドリックがテントの外へ出ていく姿をずっと眺めていた。そして、その日の夜は眠れぬ夜を過ごし朝を迎えた。
夜明け前に各々の兵士が目覚め、作戦準備を行っていく。俺は、意識が入らない頭で弓と矢の準備を行う。
「………………。」
誰とも喋らず黙々と矢の先を石で研いでいく。
そして━━━━━━━
息を潜めながら、死角へ待機した。戦場内は霧が出ており視界を悪くする。だが、指揮官はそんなのお構い無しに兵士に命令を下す。
「足音が聞こえてきたら、矢を一斉に放て」
俺は、指示通りグリード族が来るのを待機する。他の弓矢兵は緊張で深呼吸をするものや自分には出来ないと言う者がいた。だが、後戻りはもう出来ない。
数メートル先で馬を走らせる音が聞こえ、俺は息を殺し集中する。霧の中からうっすらと見えた彼らは間違いなくグリード族だった。数十名の兵士を引き連れた中にはアルバーノが先頭にいた。
アルバーノが片手を上げ兵士の歩みを止める。霧で見えにくいのだろうか、周りの様子を伺っているのが確認できる。
俺はその様子を観察していると━━━━━、
「ごめんなさい……!」と1人の兵士が誤って矢をグリード族に向けて放った。
(まずい……!)
グリード族に居場所がバレてしまい、俺も慌てて矢を放つ。別の場所で待機していた弓矢兵も攻撃を開始し戦場には矢の雨が降った。
そこからは必死に命懸けで死闘を繰り広げた。終わる頃には、敵か味方か分からない程の血が身体中に染まっていた。
結果的に、両者とも多くの戦死者を出したが作戦は成功し勝利した。
グリード族が次々と撤退していく姿を俺は眺める。
アルバーノは兵士たちの後ろを歩きこちら側が攻撃をせぬ様見守っていた。
「……。」
下を見ると、折れ曲がった矢や最前線で活躍した兵士の死体が転がっていた。
「いいか!…奴等の首元を裂け…!」と生き残った兵士に指示を出す指揮官がグリード族の兵士の死体を切り裂いていた。
「無事か………?」
セドリックが俺に近づき、怪我の確認を行う。
「はい、大丈夫です」
「……私達も帰るぞ。日が暮れてしまう」
「はい」
セドリックの指示に従い、戦場を後にする。
━━━「馬を頂き感謝します。」
セドリックが指揮官に深々と頭を下げる。
「こちらこそ援軍要請を受け入れて頂きありがとうございます」
勝利した事に満足気な指揮官は終始笑顔で俺達を見送る。
「では、お気をつけて」
「あぁ。」
そんなやり取りを交わしセドリックは馬を走らせる。他の兵士たちは遅れを取らないよう必死に後をついていく。生き残った兵士は僅か数人程となった。
「……。」
俺は、最後尾を走りながら亡くなった兵士達を思い黙祷をした。
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