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第十三話 本番(三) ※
「可愛いね。おら、いっちに♡ いっちに♡ 俺のチンコの形、永遠に忘れられないようにしてやるからな。このド淫乱賢者」
「――ち、がぅ。私は……淫乱なんかじゃ……ッ♡」
この男に真実を告白してもいいのだろうか。
言えば、今までのことも少しは許してもらえるだろうか。
好きで遊び人の啓示など受けたわけではないこと。
男に初めて抱かれた次の朝、自分の気持ち悪さに吐いたこと。
本当は神官上がりの賢者になれるものなら、なりたかったこと。
エルフの血が混じっていたせいで実家では煙たがられ、軟禁状態だった。
それが嫌で冒険者になろうと家を飛び出し、神殿で啓示を受ければあの堕落したジョブ「遊び人」になれと告げられた。
「私だって、なれるものなら……お前みたいに……ッ」
涙がこぼれた。
はじめて抱かれた夜でさえも、決して泣くまいとこぼさなかった涙がぽろぽろと浮かんではこぼれ落ちていく。
今まで誰にも話せなかった言葉が堰を切ったようにあふれ出す。
それほどこの男にだけは認めてもらいたかったのかもしれない。
賢者になった経緯はどうあれ、賢者となってからの日々はまがいものではない、と――
「っ!!…………このつながった状態で言うのはずるいだろ」
「す、まない……」
だが元遊び人だったと知られるのなら、そうなった経緯も全て知っていてほしい。
でなければ対等とは言えなかった。
ヘンリックは苦虫をかみつぶした顔をしばらく浮かべると、めんどくさそうに頭をかいた。
「あ~~~っ。クソッ!」
自棄になった声を吐き出すなりヘンリックが身体を起こす。
どこうと腰を浮かせると、ヘンリックに抱きつかれた。
心臓の音が聞こえるほど密着しあう状態に、自分でもよく分からぬまま鼓動が高まる。
向かい合った状態で見つめ合う。
次第に気恥ずかしさを覚えて、視線をそらそうとすると顎を取られた。
ちゅ♡
可愛らしい口づけが深夜の寝室に響きわたった。
荒々しさは一切ない。
唇をくっつけるだけの、まるで恋人たちが交わす初心な口づけだった。
「ヘンリック……?」
「今の事情、聞かされてあのまま抱けるかよ」
それが彼なりの謝罪なのだと数秒遅れて気がついた。
ゆっくりと胸が温かいもので満たされていく。
つと汗で湿った彼の前髪をかきあげると、その額に口づけを落とした。
そうするのが礼儀みたいな気がしたからだ。
今まで男に抱かれてきて、相手に何かしてやったことは一度もない。
そのせいか自分の行動が気恥ずかしくて、すぐヘンリックから顔をそらせてしまった。
「可愛いことするんですね。大賢者さまは」
ヘンリックの言葉にもう今までの険悪な匂いはなかった。
どちらかというと、からかいに近い。
そんな気がした。
振り返ると彼は笑いを含んだ顔で私を見ていた。
白金の前髪を耳にかけられて、びくりと肩を揺らしてしまう。
「耳、弱いのか?」
「そ……んなわけないだろ……う」
ついつい憎まれ口が出てしまうのも、この数年ずっとこの男と議論を戦わせてきたからだ。
「ふ~ん」
指の腹で耳の形をなでられる。
エルフの血が混じってほんの少しだけとがった耳先から、耳朶の裏側の感触を勝手に楽しまれる。
「っ♡ ッ♡」
必死に我慢するも、快楽に弱い身体では逆らえない。
耳のひだを指で軽くひっぱられながら舌でなめられると、つい下半身が反応してしまっていた。
(――だめ!)
きゅぅぅうう♡♡
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