なりたい自分が自分

蒸しエビ子

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なりたい自分が自分 スピンオフ

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こんにちは。
私、株式会社トンネルの
吉井拓実と申します。
この度は弊社のサービスに
ご興味お持ちいただきまして、
誠にありがとうございます。

。。。。。


堅苦しい挨拶はこれまで。
ここからは、
僕の体験談を綴って
いこうと思います。

そう、誰にも話すことの
無かったあの日の出来事を。




自分が大嫌いだった。
ゴミくずだと本気で思ってた。



今年で32歳になる僕は
ほんの2年前まで別人の様な
心持ちで生きてきた。

いや、死んでたんだな。

後天的性格を形成した家庭環境は
常軌を逸していた。

今なら分かる。


忘れもしない2年前の8月。
 
橋の欄干に脚を掛ける僕。

(もう何もかも、終わりにしてやる)

次の瞬間、
身体を丸ごと後ろに持って
いかれるまま意識を失った。




意識が戻ると声が響いている。

ふぉぉ ふぉっふぉっふぉっ 

得体が知れない。

気味が悪い。


どうやら僕はベッドに
寝かせられているようで
開きかけの目を閉じたが、
足音で声の主が近付いて
くるのだと嫌でも分かる。
 

ドクンドクン

激しくなる鼓動を
必死に抑えていると、


「チミだね、ワイを呼んだのは!」

妙に高い声が鼓膜を震わせる。


(ここは…一旦無視しよう)
「。。。」


「あの橋に来ることは分かってたんだ!」

「チミが呼んだんだからね!!」

「えっ、僕が?!!それって一体どういう…」
(しまった)

反射的に答えてしまう。


「チミがワイの脳に飛び込んできたんじゃ!」

「はぁ。」

独特な高音ボイスの主はお構い無しに続け、
呆気にとられる僕。

その後も色々説明してくる主だったが
突拍子も無い話で面食らってしまう。


「えと、ひとまず整理すると。
あなたは助けを求める人の声が聴こえて
その場所やなりたい姿でさえも分かって
しまう超能力をお持ちだと。そして、
なりたい姿を透視して現実化させる技術を
編み出したから僕に実験台第一号になってほしい。
そういうことですね?」

自分でも何を言っているかおかしくなりそうだったが、
確かめずには居られない気持ちに駆られた。

「ピンポ~ン、そゆこと~!」

「よし、じゃあとりあえず起きよっか!吉井拓実くん!」

主があっけらかんと答える。


(あれ今、僕の名前をフルネームで…
「ちょっとあそこ入ってみてよぉ!」

主が楽しそうに言う。

「ん、ちょっとだけなら。。」

どうせ捨てようとした命だ。

「わ~ありがと!!そうと決まったら
♪」

ファサッ

眼前が黒くなる。

主は慣れた手付きで
僕の目をあっという間に覆ったのだ。


「うん、それじゃレッツゴー!!!」

「え、ちょ!!!」

急に身体が浮いたもんだから慌てる。

主が僕を抱えて走っているようだ。

凄い振動に酔いそうになると

フワッ

身体と眼が解放され、
眩いばかりの光に包まれる。


「ジャジャーン!どうどう?」

「いやあのですね、どうと言われても
光が賑やかなただのトンネルですけど。。」

ふぉぉ ふぉっふぉっふぉっ

「そこには拘った!」



「はぁ。」

返事をする気力を失いそうになる。


「じゃ早速入ってみてちょ!」

ぐいぐいと身体を押され、
あっという間にトンネルの入口に立つ。

「いってらっしゃ~い!!」
ドンッ

「ああっ」
中に押し込まれると
先程とは真逆の暗い空間が
僕を包み込む。

「壁、壁はどこだ。」

暗順応が起こるまでは壁を
伝って進もうと思ったのだ。

(何時になったら見えるようになるんだ?)

壁に触れながら歩を進めるも
眼が慣れることはないまま
トンネルを潜り抜けたようだ。

「おっかえり~!実験は大成功♪」

主はご機嫌だ。

「何も見えなかったですけど。」

「ワイ、大発明しちゃった!!」


主によると、このトンネルを潜った人の
なりたい姿を透視して現実化する技術は
完璧に実現されたというのだ。

(まじかよ)

「それ、これからどうするんですか?」
「もっちろんサービスとして提供しちゃうよ~ん!」

主に迷いはない。

「チミには社員になってもらうからねぇ夜露死苦♪」
「へっ?!てか何でヤンキーぽくなってるんですか。」
「キブンキブン♪じゃ、決まりね夜露死苦!」

あれよあれよと言う間に僕は
株式会社トンネルの社員になってしまった。

その後、なりたい姿を現実化させた姿との
対面を果たした僕はここ主の元で働くと心を決めた。





小学校の授業で書いた、将来の夢。

家に持ち帰ってちゃんとしまわなかったのが後の僕に
大きな禍根を残すことになるとは思いも掛けなかった。

「なぁに?これ。馬鹿じゃないの呆れた!(笑)」


机の上に置いておいた『将来の夢』は
母親の手によってビリビリに破かれた。

僕の夢なんて…


その日以来、夢なんて言葉自体忘れてた。
闇に葬ったのだなぁ。

その夢が。
なりたい姿が僕の前に現れたのだ。


主はとんでもなく凄いものを発明してくれた。
そして、紛れもなく 人 を救ってくれた。
こんな僕でも誰か、
心の底では助けを求めている誰かを救いたい。


僕はその日を境に生まれ変わった。


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みんなの感想(2件)

アポロ
2022.07.23 アポロ

すっぴんおふー🎶
⁽⁽◝( •௰• )◜⁾⁾₍₍◞( •௰• )◟₎₎
いいねいいね!
軽くのりのりで書いてる感じがすき!

蒸しエビ子
2022.07.23 蒸しエビ子

すっぴんおふー🎶カワ(・∀・)イイ!!
やったぁ☆のりのりで書いてみたよ〜
ありがとう⁽⁽◝( •௰• )◜⁾⁾₍₍◞( •௰• )◟₎₎

解除
アポロ
2022.05.02 アポロ

不思議なお話、note読者には再読だね!
あらためていい作品だと思ったよ〜♪

蒸しエビ子
2022.05.02 蒸しエビ子

ぽろたん♪

そうなんです!
三幕構成的?にしてみました。
あらためてありがとうございます⁽⁽◝( •௰• )◜⁾⁾₍₍◞( •௰• )◟₎₎

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