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バラニンゲン
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結乃は決めていた。
今日こそ退職届を提出して、
あの忌まわしき環境から
逃げ出してしまうことを。
徒歩20分のところにある
オフィスへ出社すると
そのまま社長室へ向かい、
退職届を提出した。
引き止められたが、
ここまで来たのだ。
結乃の決意は変わらない。
「今まで大変お世話になりました。
ありがとうございました。
社長、お元気で。。」
「そうか決意は固いんだな。
鈴木、今までありがとう。
偶には顔を見せてくれ。
元気でいるんだぞ。」
社長の言葉に後ろ髪を引かれる
気持ちになったものの、結乃は
深々と頭を下げ会社を後にした。
大きな決断と行動で些か疲れを
感じ、直帰する為に来た道を
引き返す。普段はオフィスにいる
平日の午前中は、少し静かだ。
ふと脇を見ると、朝は無かった
筈の薔薇園が現れている。
入らずとも見て取れる、
綺麗に整備された園はまるで楽園
そのもの。吸い込まれるように
門を開け、奥へ奥へと歩を進めていく。
結乃は薔薇が好きで、
中でも白い薔薇は特別だった。
近くで見ようと顔を寄せた
その瞬間、
ヒュルヒュルと茎が首に巻き付き
喉笛に棘が突き刺さった。
(ぐ)
そこから皮膚を押し広げながら
薔薇は結乃の身体に侵入していく。
(ぐぐ)
ぁァ
声にならない声を上げながら結乃の
身体は薔薇に乗っ取られてしまった。
驚くべきことに同時刻、
オフィスで働いていた砂山が
白くなって亡くなった。
実は、白い薔薇には
砂山の生霊が乗り移っていた。
砂山というのは退職した職場の同僚で、
ある日を境に結乃に執着するようになった。
帰り道の通勤路に待ち伏せしたり、
毎日毎日言い寄ったり。
職場の他の人から知られないような
やり口な上、職場での素行や態度・業績も
一目置かれる存在の砂山を悪く言うものは
誰もいないと言っても過言ではないくらいだ。
結乃は相談出来ず、我慢も限界を迎えたのだ。
砂山は結乃を閉じ込めてまでも
手に入れたいと、バラニンゲン
のシナリオを妄想し続けていて
それが現実になってしまった。
唯一、シナリオ外だったのは
自らも死んでしまったこと。
星野の家の庭に、
突然赤い薔薇が咲いた。
星野というのは結乃と砂山の同僚で、
結乃とは中学校から一緒だった。
人見知りな結乃から唯一
相談を受けたのだが、
あの砂山がそんなことするわけ
無いと取り合わなかった。
星野は幼い時に棘が刺さった
ことから薔薇が嫌いで、
庭の赤い薔薇を見つけるなり
ゾッとした。
すぐにでも葬ってしまいたいと
思ったが、ハサミを取ってきて
薔薇の茎から傷付け始めた。
あまりにも乱暴に切るから、
棘が飛んで腕に突き刺さる。
「っっっぃたぁ」
棘は皮膚に潜り込んで
星野の身体を蝕んでいく。
(ぐぐぐ)
ぉぃヤメ…ロ……
身体に茎が伸びて張り巡らされて
いく感覚が襲ってくる。実際に
めり込み、苦しみ悶える星野に
声が聞こえてくる。
「ぃ…なぃ……さなぃ許さない!!!!!」
意識が遠のく中でも耳馴染みのある声
だと分かる。結乃だ。。。
「何で信じてくれなかったの…」
「バラにされちゃったよ……」
「ねぇ、助けてよ………」
声が出せない代わりに必死に祈る。
(あのときは本当にごめん…!!)
(信じられなくて。
頼む許してくれ「もう遅いよ…………」
気が付くと結乃は、
病床に寝かされていた。
道端で倒れていたところを通行人が
119番通報してくれたのだそう。
赤い薔薇は結乃の血で染まった白い薔薇。
意識を失う時、星野は青ざめていた。
その頃星野の家の庭には、
青い薔薇が風に揺れていた。
結乃は何が起こったか一切覚えて
いなかった変わりに、急に星野の
事が浮かんできて居ても立っても
居られない衝動に駆られる。
看護師の中島が見回りに来た時、
結乃は懇願した。「中島さん、
大切な友達に会わなくてはいけない
のです。外出させて下さい…!!」
「鈴木さん、急で辛いと思うけど
今は安静にしてるのが一番なの。」
取り合えってもらえなかった。
「そんな。。私、どうしても
会わなきゃだめなんです。」
「鈴木さん、また倒れちゃうかも
しれないんだよ。」
「かもしれないけど、だめなんです。」
結乃が抵抗し続けていると、
コンコンコン
病室のドアがノックされた。
「鈴木さん、悪いけど諦めて。」
中島がドアを開けると、そこには
橋本が立っていた。
「社長…?!」
「鈴木!!倒れたって聞いて
駆け付けた。社員証、
首に掛けたままだったんだってな。」
病床のサイドテーブルを見ると、
確かに結乃の社員証が置かれていた。
「顔見て安心した。また来る。」
橋本と中島は病室を後にした。
日が暮れる頃、
再び橋本が見舞いに訪れると
眠っている結乃を起こさないように
黙って花瓶に活けたのは青い薔薇。
結乃が目を覚ますと、サイドチェアーに
星野の姿があった。「結乃…心配した!!」
俺、夢の中で結乃の助けてって声が
聞こえたんだ。でも意識をまた失ってた。
「星野、来てくれてありがとう。
会えて良かった!!」
青い薔薇の花言葉は夢叶う・奇跡。
安堵の空気と時間が流れる
私達の間に白い薔薇の花びらが一枚落ちた。
今日こそ退職届を提出して、
あの忌まわしき環境から
逃げ出してしまうことを。
徒歩20分のところにある
オフィスへ出社すると
そのまま社長室へ向かい、
退職届を提出した。
引き止められたが、
ここまで来たのだ。
結乃の決意は変わらない。
「今まで大変お世話になりました。
ありがとうございました。
社長、お元気で。。」
「そうか決意は固いんだな。
鈴木、今までありがとう。
偶には顔を見せてくれ。
元気でいるんだぞ。」
社長の言葉に後ろ髪を引かれる
気持ちになったものの、結乃は
深々と頭を下げ会社を後にした。
大きな決断と行動で些か疲れを
感じ、直帰する為に来た道を
引き返す。普段はオフィスにいる
平日の午前中は、少し静かだ。
ふと脇を見ると、朝は無かった
筈の薔薇園が現れている。
入らずとも見て取れる、
綺麗に整備された園はまるで楽園
そのもの。吸い込まれるように
門を開け、奥へ奥へと歩を進めていく。
結乃は薔薇が好きで、
中でも白い薔薇は特別だった。
近くで見ようと顔を寄せた
その瞬間、
ヒュルヒュルと茎が首に巻き付き
喉笛に棘が突き刺さった。
(ぐ)
そこから皮膚を押し広げながら
薔薇は結乃の身体に侵入していく。
(ぐぐ)
ぁァ
声にならない声を上げながら結乃の
身体は薔薇に乗っ取られてしまった。
驚くべきことに同時刻、
オフィスで働いていた砂山が
白くなって亡くなった。
実は、白い薔薇には
砂山の生霊が乗り移っていた。
砂山というのは退職した職場の同僚で、
ある日を境に結乃に執着するようになった。
帰り道の通勤路に待ち伏せしたり、
毎日毎日言い寄ったり。
職場の他の人から知られないような
やり口な上、職場での素行や態度・業績も
一目置かれる存在の砂山を悪く言うものは
誰もいないと言っても過言ではないくらいだ。
結乃は相談出来ず、我慢も限界を迎えたのだ。
砂山は結乃を閉じ込めてまでも
手に入れたいと、バラニンゲン
のシナリオを妄想し続けていて
それが現実になってしまった。
唯一、シナリオ外だったのは
自らも死んでしまったこと。
星野の家の庭に、
突然赤い薔薇が咲いた。
星野というのは結乃と砂山の同僚で、
結乃とは中学校から一緒だった。
人見知りな結乃から唯一
相談を受けたのだが、
あの砂山がそんなことするわけ
無いと取り合わなかった。
星野は幼い時に棘が刺さった
ことから薔薇が嫌いで、
庭の赤い薔薇を見つけるなり
ゾッとした。
すぐにでも葬ってしまいたいと
思ったが、ハサミを取ってきて
薔薇の茎から傷付け始めた。
あまりにも乱暴に切るから、
棘が飛んで腕に突き刺さる。
「っっっぃたぁ」
棘は皮膚に潜り込んで
星野の身体を蝕んでいく。
(ぐぐぐ)
ぉぃヤメ…ロ……
身体に茎が伸びて張り巡らされて
いく感覚が襲ってくる。実際に
めり込み、苦しみ悶える星野に
声が聞こえてくる。
「ぃ…なぃ……さなぃ許さない!!!!!」
意識が遠のく中でも耳馴染みのある声
だと分かる。結乃だ。。。
「何で信じてくれなかったの…」
「バラにされちゃったよ……」
「ねぇ、助けてよ………」
声が出せない代わりに必死に祈る。
(あのときは本当にごめん…!!)
(信じられなくて。
頼む許してくれ「もう遅いよ…………」
気が付くと結乃は、
病床に寝かされていた。
道端で倒れていたところを通行人が
119番通報してくれたのだそう。
赤い薔薇は結乃の血で染まった白い薔薇。
意識を失う時、星野は青ざめていた。
その頃星野の家の庭には、
青い薔薇が風に揺れていた。
結乃は何が起こったか一切覚えて
いなかった変わりに、急に星野の
事が浮かんできて居ても立っても
居られない衝動に駆られる。
看護師の中島が見回りに来た時、
結乃は懇願した。「中島さん、
大切な友達に会わなくてはいけない
のです。外出させて下さい…!!」
「鈴木さん、急で辛いと思うけど
今は安静にしてるのが一番なの。」
取り合えってもらえなかった。
「そんな。。私、どうしても
会わなきゃだめなんです。」
「鈴木さん、また倒れちゃうかも
しれないんだよ。」
「かもしれないけど、だめなんです。」
結乃が抵抗し続けていると、
コンコンコン
病室のドアがノックされた。
「鈴木さん、悪いけど諦めて。」
中島がドアを開けると、そこには
橋本が立っていた。
「社長…?!」
「鈴木!!倒れたって聞いて
駆け付けた。社員証、
首に掛けたままだったんだってな。」
病床のサイドテーブルを見ると、
確かに結乃の社員証が置かれていた。
「顔見て安心した。また来る。」
橋本と中島は病室を後にした。
日が暮れる頃、
再び橋本が見舞いに訪れると
眠っている結乃を起こさないように
黙って花瓶に活けたのは青い薔薇。
結乃が目を覚ますと、サイドチェアーに
星野の姿があった。「結乃…心配した!!」
俺、夢の中で結乃の助けてって声が
聞こえたんだ。でも意識をまた失ってた。
「星野、来てくれてありがとう。
会えて良かった!!」
青い薔薇の花言葉は夢叶う・奇跡。
安堵の空気と時間が流れる
私達の間に白い薔薇の花びらが一枚落ちた。
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