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冬の日のおつかい
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ある北風の日。ぼくはコートと帽子にマフラー、手袋を着けておつかいに出たんだ。
草や木は枯れ果てて、お店までの道のりがなんだか心細くなっちゃうな。
それでもぼくが纏う服たちが体をあたためてくれる。
少し歩くと寒さに凍えているネズミの家族に出会った。
ネズミたちはぼくを少し見たけれど、今にも逃げ出しそう。
「ぼくの帽子、あげる。ここにみんなで入ったらきっとあたたかいよ。」
ネズミたちは安心したのか帽子を受け取り、ぺこぺこと頭を下げてあっという間に見えなくなりました。
お店、遠いなぁ。
気持ちとは裏腹に、風はどんどん強くなります。
そのうち、ヘビが地面をゆるゆると這っているのを見つけた。
ヘビはぼくを見るなり這う速度を早めて、ぼくに巻き付いて瞬く間にマフラーを奪って逃げていく。
「ヘビさん、ぼくのマフラーそんなに欲しかったんだね。」
帽子とマフラーが無くなって一層寒くなったぼくは足を早めた。
お店はまだ見えません。
歩いていると何やら視線を感じます。
よくよく目を凝らしてみるとニホンリスでした。
木の上からでもよく目立つ、ぼくの赤い手袋に釘づけのようです。
「リスさ~ん、この手袋が欲しいの?」
リスはうんうんと頭を上下させて、木の上から降りてきました。
「そのあたたかそうな手袋、わたしたちにくださいな。」
ぼくはリスたちに手を降って、リスも振り返しました。
その手にはもう手袋はありません。
ずんずん歩いていくとようやくお店の灯りが見えてきました。
寒さは厳しくも、あともう少しの辛抱です。
お店は小高い丘にあるのですが、その手前で女の子が蹲っていました。
「どうしたの?」
女の子は一瞬びっくりしたようですが、すぐに気を取り直して
「お腹が空いて動けないの。」
そういうではありませんか。
「目の前の丘のすぐ上にお店があるからそこまでゆっくり歩ける?」
そう言ってぼくは女の子に特別あたたかいコートをかけてあげました。
女の子は『かのん』と言いました。
ぼくのコートを羽織ってしばらくじっとしていましたが、あたたまってきたのかもしれません。
「お店に連れて行って。」
ぼくはかのんの肩を支えるようにして、なんとか丘の上のお店まで辿り着くことができました。
扉を開くと、お店の中ではいつも気の良いおじいさんが何かの準備でもするように動き回っています。
ぼくはおつかいのことも忘れて、「こんばんは。隣の女の子にあたたかい食べ物をいただけませんか?金貨はあります。」
おじいさんはぼくたちに気が付くと「良い所に来たね。今ちょうどビーフシチューができたところだよ。」
そう言って、ぼくたちに熱々のボウルとスプーンを差し出してくれました。
ぼくは喜んで、「ありがとうございます!かのんも食べよう。」そう声をかけましたが、かのんは「これはいただけないわ。」そう言いました。
ぼくには理由が分かりません。自分が先に食べればかのんも安心すると思い、シチューに口をつけようとするやいなや物凄い力で突き飛ばされてしまいました。
その直後、穏やかそうなおじいさんの姿がみるみるうちに悪魔に変わってしまったのです。
びっくりしたぼくはかのんを連れてお店を出ようとしましたが、扉はびくともしません。
「おまえたち、帰してなるものか。」
実はお店の優しいおじいさんは、今までずっと正体を隠してきたのでした。
熊の血と人間の女の子の血を同時に摂ると、不死身になれる。
ようやくその時が訪れたのです。逃すはずがありません。
かのんはビーフシチューでもなんでも食べたい気持ちでいっぱいでしたが、匂いで毒入なのに気が付いたのです。
ぼくたちは扉を叩いたり大声を出したりしましたが、その間にもじりじりとおじいさん(の姿をした悪魔)は迫ってきます。
ぼくとはかのんは恐怖で、かのんの目からは涙がこぼれ落ちました。
すると、なんということでしょう。
扉がパタンと開いて、ネズミの家族、ヘビ、ニホンリスたちが飛び込んでくるではありませんか。
そして、次々と悪魔に飛び掛かります。
悪魔には弱点がありました。ネズミに噛まれることと、ヘビに締められること。それからリスに叩かれることでした。
悪魔はもうたまりません。
たちまち煙に姿を変えて、お店ごと消えてしまいました。
ぼくたちはなんとか命が助かったことを喜び合っていると、周りにプレゼントのような包みが置いてあることに気付きました。そこにはぼくの名前、くまごろうくんへとも書いてあります。
みんなが見守る中、包みを開けてみると中身は皆にあげたものにそっくりな帽子とマフラーと手袋とコートでした。
それに、沢山の美味しそうなご馳走もどこからか表れました。
もうクリスマスの夜になっていたのです。みんなはご馳走を食べて、すっかり仲良くなって笑顔でそれぞれのお家に帰っていきました。
今度は心も体もポカポカにあたたまっています。
お家に帰ってきておつかいを思い出したくまごろうは慌てて外に飛び出していくと、玄関の前にカゴに色とりどりのフルーツが山盛りに入っていました。
こんな奇跡のようなお話がどこかで存在するかも…fin.
草や木は枯れ果てて、お店までの道のりがなんだか心細くなっちゃうな。
それでもぼくが纏う服たちが体をあたためてくれる。
少し歩くと寒さに凍えているネズミの家族に出会った。
ネズミたちはぼくを少し見たけれど、今にも逃げ出しそう。
「ぼくの帽子、あげる。ここにみんなで入ったらきっとあたたかいよ。」
ネズミたちは安心したのか帽子を受け取り、ぺこぺこと頭を下げてあっという間に見えなくなりました。
お店、遠いなぁ。
気持ちとは裏腹に、風はどんどん強くなります。
そのうち、ヘビが地面をゆるゆると這っているのを見つけた。
ヘビはぼくを見るなり這う速度を早めて、ぼくに巻き付いて瞬く間にマフラーを奪って逃げていく。
「ヘビさん、ぼくのマフラーそんなに欲しかったんだね。」
帽子とマフラーが無くなって一層寒くなったぼくは足を早めた。
お店はまだ見えません。
歩いていると何やら視線を感じます。
よくよく目を凝らしてみるとニホンリスでした。
木の上からでもよく目立つ、ぼくの赤い手袋に釘づけのようです。
「リスさ~ん、この手袋が欲しいの?」
リスはうんうんと頭を上下させて、木の上から降りてきました。
「そのあたたかそうな手袋、わたしたちにくださいな。」
ぼくはリスたちに手を降って、リスも振り返しました。
その手にはもう手袋はありません。
ずんずん歩いていくとようやくお店の灯りが見えてきました。
寒さは厳しくも、あともう少しの辛抱です。
お店は小高い丘にあるのですが、その手前で女の子が蹲っていました。
「どうしたの?」
女の子は一瞬びっくりしたようですが、すぐに気を取り直して
「お腹が空いて動けないの。」
そういうではありませんか。
「目の前の丘のすぐ上にお店があるからそこまでゆっくり歩ける?」
そう言ってぼくは女の子に特別あたたかいコートをかけてあげました。
女の子は『かのん』と言いました。
ぼくのコートを羽織ってしばらくじっとしていましたが、あたたまってきたのかもしれません。
「お店に連れて行って。」
ぼくはかのんの肩を支えるようにして、なんとか丘の上のお店まで辿り着くことができました。
扉を開くと、お店の中ではいつも気の良いおじいさんが何かの準備でもするように動き回っています。
ぼくはおつかいのことも忘れて、「こんばんは。隣の女の子にあたたかい食べ物をいただけませんか?金貨はあります。」
おじいさんはぼくたちに気が付くと「良い所に来たね。今ちょうどビーフシチューができたところだよ。」
そう言って、ぼくたちに熱々のボウルとスプーンを差し出してくれました。
ぼくは喜んで、「ありがとうございます!かのんも食べよう。」そう声をかけましたが、かのんは「これはいただけないわ。」そう言いました。
ぼくには理由が分かりません。自分が先に食べればかのんも安心すると思い、シチューに口をつけようとするやいなや物凄い力で突き飛ばされてしまいました。
その直後、穏やかそうなおじいさんの姿がみるみるうちに悪魔に変わってしまったのです。
びっくりしたぼくはかのんを連れてお店を出ようとしましたが、扉はびくともしません。
「おまえたち、帰してなるものか。」
実はお店の優しいおじいさんは、今までずっと正体を隠してきたのでした。
熊の血と人間の女の子の血を同時に摂ると、不死身になれる。
ようやくその時が訪れたのです。逃すはずがありません。
かのんはビーフシチューでもなんでも食べたい気持ちでいっぱいでしたが、匂いで毒入なのに気が付いたのです。
ぼくたちは扉を叩いたり大声を出したりしましたが、その間にもじりじりとおじいさん(の姿をした悪魔)は迫ってきます。
ぼくとはかのんは恐怖で、かのんの目からは涙がこぼれ落ちました。
すると、なんということでしょう。
扉がパタンと開いて、ネズミの家族、ヘビ、ニホンリスたちが飛び込んでくるではありませんか。
そして、次々と悪魔に飛び掛かります。
悪魔には弱点がありました。ネズミに噛まれることと、ヘビに締められること。それからリスに叩かれることでした。
悪魔はもうたまりません。
たちまち煙に姿を変えて、お店ごと消えてしまいました。
ぼくたちはなんとか命が助かったことを喜び合っていると、周りにプレゼントのような包みが置いてあることに気付きました。そこにはぼくの名前、くまごろうくんへとも書いてあります。
みんなが見守る中、包みを開けてみると中身は皆にあげたものにそっくりな帽子とマフラーと手袋とコートでした。
それに、沢山の美味しそうなご馳走もどこからか表れました。
もうクリスマスの夜になっていたのです。みんなはご馳走を食べて、すっかり仲良くなって笑顔でそれぞれのお家に帰っていきました。
今度は心も体もポカポカにあたたまっています。
お家に帰ってきておつかいを思い出したくまごろうは慌てて外に飛び出していくと、玄関の前にカゴに色とりどりのフルーツが山盛りに入っていました。
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