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悪役令嬢でも死んじゃだめぇ~!11

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毎日、くたくたになるまで、猛特訓を受けているエミリーです。
訓練を始めて、ちょうど3週間。
体がやっと慣れてきて、さすがに部屋に着く前に行き倒れることもなくなった。
おかげで、ラフィーナ様の死に繋がりそうな事態について考えられる余裕ができた。

あの夢でみた乙女ゲーム、じゃなかったサバイバルゲームでは、ラフィーナ様は、その国の王太子と婚約した悪役令嬢だった。

ヒロインの名前がサラ。
もしやサラお義姉様かな?

でも、サラという名前も、エミリーほどメジャーではないが、割りとある名前。
我が国の貴族名鑑を広げ、ヒロインになり得る年頃のサラという名前のご令嬢を片っ端からピックアップしてみた。
すると、意外と少なく、サラお義姉様を入れて5名しかいなかった。
そのうち、ゲーム設定の元平民で、貴族の養女になった経緯のあるサラは、やはりサラお義姉様しかいなかった。
ただ、まだサラお姉様がヒロインと決めつけるのは、早いかも知れない。
確かに、サラ義お姉様は、ラフィーナ様ほどでなくても、ヒロインになれる程の高スペックを持っている。
私とは同じ年齢とは思えない聡明さ、落ち着いた性格、美貌、運動神経等……。
生まれさえ平民でなければ、ラフィーナ様と同格で王妃候補になれただろう。
だから、サラお義姉様の可能性はある。
ただ、サラという名前は、貴族令嬢には少なくとも、平民にはよくある名前。
だから、まだ、養女になっていないサラがいる可能性もある。

あのゲームのサラのイラストを一生懸命、思い出そうとするが、霞がかかっているように、鮮明には思い出せない。
でも、ラフィーナ様の姿だけは、はっきり覚えている。
ラフィーナ様があのゲームの悪役令嬢で間違いない。
そして、ヒロインと王太子を争い、よく負ける。
負けた後は、ラフィーナ様は、割りとひどい死に方をする。

死なせないためには、どうするべきか?

訓練以外の時間は、座学もあり、私はいくつかラフィーナ様が毒殺されないように毒物のことやその解毒方法も覚えた。
他にも、知識があるとないで、人命救助に差がでる内容を中心に叩きこんだ。
だけど……。

いやー、必要な知識って無限か!?

突っ込みをいれたくなる位、莫大な量だった。
ちょっと腐ってきたところに、ラフィーナ様と会う約束の日がきて、会って癒されるので、やる気が回復する。
そして、家に戻っては、腐りそうになる位、実施訓練と知識を詰め込まれる。
まあ、1年と期間限定だから頑張れている。
でも、顔色が日に日に悪くなるせいか、ラフィーナ様から、とうとう心配されてしまった。

「エミリー、ちょっと顔色が悪いわ。
訓練、辛い?
無理しているの?」
「え?いや、大丈夫ですよ。
これでも、自分の成長を多少は感じて、やりがいがあるので!」と言いつつ、辛いもんは辛いけどね~と秘かに思い、心の中でため息をつく。
「いや、エミリーちゃん、無理しているでしょう!
駄目だよ、無理しちゃ」とやはり心配してくれるロラン様。天使!
そして、ロラン様は、さりげなく、私の二の腕に触れた。
「硬っ!何これ、硬い!!
エミリーちゃん、訓練やり過ぎ!
前のぽよぽよした腕に戻って!」と本気で訴ったえるロラン様に、ちょっと困る。
「いえ、まだ筋肉のつきは、悪いって言われています。
もっと鍛えるようにと、よく怒られています」
「やだー!筋肉むきむきのエミリーちゃんは、やだ!
はっ、もしやお膝も?」

ロラン様が、私の膝に乗ってこようとする。
快く、お膝だっこしてあげた。

「硬いー!
エミリーちゃん、膝まで硬いー!やだー!」と叫ぶロラン様。ごめん。
「でも、太ももの筋肉は良くついて、走るのがかなり速くなりました。
ラフィーナ様の危機にも、すぐに駆けつけられます!」と心からの笑顔で答える。
「……エミリーちゃん、そんな可愛いらしい笑顔を向けても、駄目だよ。もう訓練はやめて?」というロラン様。
「まあ、エミリー、私のために……」とちょっと悲し気なラフィーナ様。
「エミリーちゃん?そんな訓練より、頭を使えば非力でも抵抗できる方法は沢山あるよ。
そっちに切り替えよう?
何なら僕が教えるよ」と申し出てくれたので、一応、両親に許可をとって、天才と名高いロラン様の講義を受けることにした。
ラフィーナ様も「私もやるわ!エミリーだけに頑張らせないわ!!」と言って、ラフィーナ様も王妃教育で忙しいのに、時間を作ってくれて、一緒にロラン様の非力でも戦える方法を学ぶことになった。
そんな中、ラフィーナ様の兄レオン様まで現れて、「俺だけ、仲間外れにすんな!」とお菓子の差し入れをしながら、時々、参加してくる。
お菓子つきのレオン様は、大歓迎です。
しかも、非力でも、レオン様位の体格の方なら投げ飛ばせる講義の際に、ちゃんと実験台になってくれるので、むしろ重宝しています。
あら、何か、ロラン様に投げ飛ばされて、レオン様が痛そうにしているけど、いいの?まあいいか。
レオン様も弟妹に優しくて、良い方なんだよな~。
いまだに、笑顔を要求されるのが、ちょっと面倒……。

まあ、何というか、アリード公爵家の方々がみんな良い人過ぎて、私でも心配になるレベルです。
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