野猿な悪役令嬢

ルナルオ

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番外編 IF 野猿な囚人 32-2.(セリウス外ルート)選択を再び

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 王宮に向かった4人は、リアレース教会の本拠地から王都まで近く、その日のうちに、辿り着くことができた。
 ルクレナは、すぐに上司であるレイスリーア王妃の元へ報告にあがった。
 セリウスは、ルイスに付き添われて、そのまま別室にて、王宮付きの医師に秘密裏に診察されることになった。
 リーリアも、何ともないと訴えたにも関わらず、ユリアリーシアと直接、接触していたこともあり、どこかに異常がないか、または遅発性の暗示にかかっていないか等を念入りに検査された。
 その間に、ルクレナからレイスリーヤ王妃へ、セリウスの状態やリアレース教会の件、そして、ユリアリーシアのことが報告された。
 ルクレナ達とレイスリーヤ王妃が話し合った後、無事に検査が終わり、特に異常もなかったリーリアは、その後、王妃と直接、会うことになった。
 
「リーリア!無事でよかった。
 あの隣国セリクルドの元王女がまだ生きているという情報はあったのだけど、なかなか捕まえられなくてね。
 その相手と対決して、速やかに捕獲するとは、さすがリーリアよね。
 あと、セリウスの件は報告を受けたわ……。
 でも、あなたからも、直接、お話を聞きたいのだけどいいかしら?」
「はい、王妃様」

 リーリアは、レイスリーヤ王妃へ実際に会ったユリアリーシアの様子や、フランツの元婚約者の死亡の件、記憶喪失したセリウスについて、できる限り詳細に伝えた。 
 ただし、彼女がリーリアと同じ前世の記憶持ちだという話だけは、除いて話をした。
 何故、彼女があんなにもセリウスに執着したかも、わからないということにしておいた。
 おそらく、ユリアリーシアも前世のことは白状しないだろうし、もし乙女ゲーム云々を訴えても頭がおかしいと判断される可能性も考え、無駄に惑わさないためにも、黙っていることにするリーリア。

「そうだったのね……。
 でも、セリウスが五体満足で無事に戻ってこれたのは、あなたのおかげよ、ありがとう」
「そんな、王妃様……。
 元のセリウス様の救出には、間に合いませんでした。
 その……、彼女の狙いは、自分の言いなりになるセリウス様と、私の魔力だったようです」
「そうだったのね。
 実は、リアレース教会の狙いが、セリウスだとはわかっていなかったのだけど、リーリアが狙われているという情報はあったのよ。
 しかも、そのリーリアを狙う方法が執拗で、やけに悪質化してきたので、セリウス自身が、危険だとわかっていながら、陛下の命令に逆らって、自ら調査に出てしまってこんなことになってしまったの。
 フランツやアーサーの失敗から、国王陛下も私も、一切、セリウスに許可をしなかったのに……。
 あの子はあなたのことになると、平気で命令違反をするのよ」と深いため息をつく王妃。
「セリウス様は、私のために……。
 でも、何か勝算があったのでしょうか?」
「本人としては、対策は万全のつもりだったのでしょうね。
 アリーシアの術に嵌って、あなたを失って、さすがにもう無茶はしないと思ったのに、その術を掌握したから、もう大丈夫と傲慢にも思ったみたいね。
 でも、あの元王女の方がずっと上手だったのよね、それでこの現状よ……」

 そう、王妃の言う通り、ユリアリーシアに捕まったセリウスは、当然、アリーシアと同じ術や、さらに高度な術をかけられたが、もちろん、かからないように対策をしていた。
 ただし、セリウスは、自分の中で最もインパクトのある存在、「リーリア」を鍵に、ちょっとやそっとでは人心操作術をかからないように防御していた。
 ところが、ユリアリーシアは、前世の記憶やアリーシアからの情報があったせいか、そのことに気づいてしまい、最終的にセリウスの中でリーリアの存在する記憶を全て消してしまい、人心操作術を使える状態にするに至った。
 そして、セリウスは、まだ無邪気で素直な8歳にされてしまったのだった。

「……そうですね。
 セリウス様に限らず、あのリアレース教会のトップは、本当にとても厄介でした。
 相手が私のことを過小評価してくれていたおかげで、油断してくれたので、私でも隙ができて捕まえられた感じです。
 もし、私もいきなり攻撃されていたら、危なかったかも知れません」
「……彼女は、私が想定する以上の何か秘密を抱えていると思うの。
 アリーシアがやろうとしていた色々な計画の首謀者は、アリーシアの母親だったと白状したのだけど、彼女の本当の目的もよくわからないことだらけだったのよ。
 それが、本当はセリウスが狙いなんて、信じられなかったわ。
 彼女の駒のひとつだったアリーシア自身もわかっていないことも多くて、アリーシアも操られていた考えるべきなのか……」
「捕まったアリーシアやユリアリーシアはどうなるのですか?」
「それはセリクルド王国の返答しだいなところもあるけど、罪は償ってもらわないとね。
 でも、二人ともセリクルド王国の王族関係者だから、すぐに刑は下せないし、複雑な事情が絡んでくるから、拘束はしておくけど、最終的なことはまだ未定よ」
「そうですか……」
 
 リーリアには、この結末は、乙女ゲームのヒロインであったアリーシアにとって、予想外のバッドエンドになったのではないのかと思えた。
 どうやら、ヒロインにとってのバッドエンドの先には、茨の道が待っているようである。
 リーリアにとってのバッドエンドの先がこんな展開になることこそ、(これが現実だから……)と実感させられた。
 そんな様子のリーリアを、じっと観察していた王妃レイスリーアは、やや、言い辛そうに、でも決意したようにリーリアにお願いをしてきた。

「……ねえ、リーリア。
 セリウスや我がランダード王家の判断は、後手にまわり、結局、あなたにとても辛い思いをさせてしまったけど、あのセリウスが失われた今、あなたなら、また元のセリウスを取り戻すことができると思うの。
 図々しいお願いだけど、もう一度、セリウスの婚約者になってくれないかしら?」
「王妃様、それは……」
「もちろん、メナード公爵の許可が必要でしょうから、公爵に相談してからの返事でいいわよ。
 でも、前向きに考えてね」
「……王妃様。
 父に相談するまでもなく、冤罪でもアウスフォーデュ修道院にいた私は、もう王子妃には相応しくございません。
 おまけに、やらなくてもいいことをやらかして、罪のない人々にまで被害をださせてしまいました。
 その償いのためにも、ランダード王国にルクレナ様の元で、全力でお役に立ちたいのです」
「……アウスフォーデュ修道院のことは、王子妃になるにあたって、誰にも文句を言わせないから大丈夫よ。
 一番大事なことは、本当のセリウスは、間違いなく、あなたを愛していたことよ。
 だからこそ、あなたにセリウスを頼みたいのよ」
「王妃様……」
「即答はしなくていいから、ゆっくり考えてくれる?」
「えっと、その、そうおっしゃっていただけて大変光栄なのですが、まだ、元のセリウス様に戻る保証も可能性も、何もないです……。
 私が、いえ……。
 もともと私達のあの関係が生まれたのは、私を気に入ってくださったセリウス様が、野猿のようにまだ小さくお転婆な私を、憧れの野猿と間違えたのが、一番の要因でした。
 だから、この十年に渡る関係を、もう一度、やり直すことは難しいです」
「……それは、リーリアは、今のセリウスでは駄目ということ?」
「……はい、申し訳ございません。
 その、私にとってもセリウス様は、この国の第2王子という存在以上に大事な方でした。
 私の婚約者だったセリウス様はアリーシアに、10年来の幼馴染だったセリウス様はユリアリーシアに奪われてしまい、もうこれ以上は無理そうです」
「……もうセリウスにリーリアは傷つけられたくないってことかしら?」
「……それに近い気持ちです。
 でも、自分でもこの気持ちがよくわかっていないようです。
 セリウス様がとても大切な方だったからこそ、また彼を失うことや、私だけでなくセリウス様自身も傷つけたらと思うと、とても怖いのです。
 私は自分のことを野猿のように図太い生き物だと自負していましたが、自分で自覚していた以上に、セリウス様からのダメージを大きく感じているようです……」
「そう……。
 でも、すぐに結論はだしては駄目よ。
 この件は、メナード公爵もふまえて、よく考えてね」
「……私の知るセリウス様は、とても聡明でお優しい愛情深い方でした。
 王族の方をこのように表現するのは不敬罪になるかと存じますが、セリウス様は、その一方で、高レベルの策略家でした。
 でも、今のセリウス様というか、私と出会う前のセリウス様は、そんな策略家ではなく、真面目で純粋な方でした。
 あれが本来のセリウス様なのでしょうか?」
「うーん、どうかしら?
 あの子、もともと、自分の欲望に忠実で、ちょっと横暴で腹黒な性格していたわよ?
 正直、あなたのおかげで、愛に生きるようになって、策略も、あなたと一緒にいるために悪知恵が発達したと思っているわよ。
 まさか、リーリアは、自分のせいでセリウスがあんな風に腹黒に歪んだと思っているのかしら?
 そんなことないから、心配しなくて大丈夫よ~」と豪快に笑い飛ばされて、リーリアはちょっと戸惑ってしまった。

 結局、リーリアの父親メナード公爵から、正式に返事をすることになり、リーリアは、父親の元に相談しに行くことになった。
 リーリアの心の中での選択は、ある程度、決まっているようであったが、確かに今回の最終的な選択は、父親に判断を仰ぐ必要があった。
 また、リーリアは、ユリアリーシアから聞いた、父親が前世の記憶を持っている可能性についても確認したく、ルクレナに父親の元に向かう旨を伝え、急いで、メナード公爵の元に向かった。
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