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番外編 IF 野猿な囚人 24-2.分岐2(セリウス外ルート)別人
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分岐2
こちらには、あまりあのセリウスは登場しないので、ご安心を!
ーーーーーーーーーーーーー
セリウスらしき人物は、舞台上のリーリアに声をかけてくる。
「リーリア、あの者達はランダード王家に仕えている仲間だから、解放して」
「へ?え?あ、はい」
リーリアが鳥籠に閉じ込めた者達を指しながら、冷静な声で言ってくる相手に、リーリアは、条件反射のように解放してしまう。
「怪我は?」
「特にありません!」
「事前情報では、足に傷を負ったと聞いていたが?」
「あ、すぐに手当てをしていただいたので、大丈夫です。
もう完治しております」
「そうか。魔力封じの腕輪は自力で外したのだな、今、持っているか?」
「はい」
「じゃあ、それを渡して」
リーリアは相手に言われるままに腕輪を渡そうとするが、ここで、さすがにはっと思いとどまった。
腕輪は解錠してあるが、見かけだけでもしておかないと怪しまれるため、フェイクでつけているふりをしていた。
もしまた施錠されるとまた自分が無力化するため、すぐに渡さずに確認するリーリア。
「あ、あの、何で、セリウス様がこちらに?
えっと、そもそも、本当にセリウス様ですか?」
「婚約破棄したとはいえ、私の顔も声も忘れたのか?」
「いえ。声もお顔もセリウス様そっくりですが、髪色と口調が……」
「髪は、鬘や魔法でいくらでも変えられるだろう?」
「髪は確かにそうですね。
でも、口調は、いつもの仕事時のセリウス様風ですが、ちょっと違いますね。
しかも、セリウス様は公式の場以外では、自分のことを『私』とは言いません。
演技というより、そっくりな別人なのかと思えて、判断つかないです」
「ふっ、くくく、さすがだね」
笑いだした相手は、やはりセリウスにとてもよく似ているが、別人だとリーリアには、本能的にわかる。
それに、セリウスにしては、独特の何かも足りない。
それは、リーリアに対する執着や行き過ぎた愛情のもとに生じるものである。
リーリアも、一瞬、冷静なセリウスが仕事モードだからか、または正式に婚約破棄し、離別宣言したためにリーリアに対するその感情が失われたものなのかと考えた。
ただ、リーリアの本能が、「彼はセリウスではないぞ!」と言っており、どちらかというと彼は雰囲気からもルクレナに近い存在なのではないかと思い至った。
「……あなたは、もしかして、ルクレナ様のお仲間ですか?」
「ははっ!本当に鋭いな。正解だ。
君の言う通り仲間というか、私はルクレナの実の弟だよ」
「は!?お、弟?ええ~!?
確かに雰囲気はルクレナ様に似ていますが、そこまで口調もルクレナ様ほど悪くなくて、むしろ貴族っぽいですよ?」
「ああ。まあ、ルクレナより、そういう風にふるまうような訓練をされているからね。
私の名はルイスで、ルクレナと同じランダード王家に仕えている。
詳しくは、また後で説明するが、味方として信用して欲しい。
そのために、セリウスと同じこの顔を曝したのだ」
「……る、ルクレナ様もすぐにこちらに?」
「いや、ルクレナはアグワリーという人物の組織の方を担当しているから、ここには来ていない。
アグワリーのことは?」
「存じております。
魔力封じの腕輪と足の怪我の張本人です。
そのせいで抵抗できなくて、こちらに捕まってしまいました」
「そうか……。
この人身売買の潜入捜査は、もともとルクレナの仕事だったのだが、君が行方不明になるからルクレナが呼び戻されて、君の捜索にあたっている。
それで、私がルクレナの代わりにこちらの方へ潜入捜査で赴くことになったのだ」
「そ、そうなのですね。
ご迷惑をおかけして大変申し訳ございません」
「そう思うのなら、大人しく指示に従ってもらうよ。
基本、指示があるまで捕らえられた者達の拘束は解かないで。
今はとりあえず、ここをすぐに我々で制圧するから、君はそこで待機だ」
「……はい、わかりました」
リーリアもいきなりルクレナの実弟と言われ、信用して良いものかと悩んだが、本能的に何故か大丈夫と思えた。
それにルクレナと逃亡していた時に、ルクレナから弟がいることを聞いたのを思い出した。
その話をしている時に、ルクレナがやけに意味深に笑っていたので、(ああ、あの時、弟がセリウス様にそっくりと言いたかったのか)と納得したリーリア。
それから、まず、会場の外で待機していた仲間達をリーリアの結界を解いて、中に入れて、セリウスにそっくりなルイスが、指示を与えて無駄なく、その場を制圧する。
もっとも、リーリアがほぼ拘束していたので、物理的移動による処理が主である。
捕まえた者達も、相手別にすぐに尋問行きか、投獄行きかと分類して、どんどん外に運んでいく。
セリクルド王国からきたサリュー王子の従者や宰相の手の者達には、捕まえてすぐに、ルイスが直々に対応していた。
もちろん、リーリアにはやりとりが聞こえないように配慮して行われた。
「……先程は、ここで彼女を手に入れたらどうやって嬲るかで、随分と楽しく盛り上がっていたな?
席が近かったので丸聞こえだったぞ。
もう、どんな言い訳をしても無事に国へ帰れると思うな」
「ひぃ!セ、セリウス殿下!?何故、こんなところに……?」
ルイスは、心の中で、(もし、私が本物のセリウスだったら、貴様ら何て、すぐに骨の髄まで生きたまま燃やされているぞ?随分と愚かな発言と行為をしようとしていたのだが、それをわかっているのかどうか……)と思いながら、怯えるセリクルド王国の従者達に、冷たく対応する。
セリクルド王国の一味だけを別の場所へ移動するように、ルイスは仲間達に指示した。
その後、この屋敷に残党やリーリア以外の商品となる人間がいないかの捜索もする。
「あの、ルイス様、私、まだ余力があるので、捜索のお手伝いをいたします」
「いや、無理しなくていいし、手伝いはいらない。
終わったら、すぐにアルーテ王宮に連れて行くから、そこで大人しく待機だ」
「では、早く王宮に行けるようにお手伝いしたいです。
まだ魔力はありますよ?」
「まだ魔力があるのか……?
じゃあ、探索の魔法で、他の人間がこの屋敷に居ないか、探すのを手伝って欲しい。
でも、限界が近くなったら、止めること、いいね?」
「はい!」
ルイスだけでなく、リーリアの探索魔法も使って、巧妙な隠し部屋を見つけて他の被害者を救出し、また、隠れてやり過ごそうとした犯人一味も見つけて引きずりだし、捕縛することにも成功した。
それから、アルーテ王国の騎士団長に指令系統を移し、外道爺の所有する他の屋敷へも一切捜査に入り、関係者達を捕縛して、誘拐された人間達を救出していくことになった。
ここで、一通り役目を果たしたリーリアは、そのまま保護という形で、ルイスと一緒にアルーテ王宮に専用の馬車で護送されることになった。
馬車に乗る前に、リーリアは、ルイスへバーナルの件でお願いをしてみた。
「あ、あの、ルイス様!ちょっと寄って欲しい所があるのですが……」
「……寄りたいところ?何のために?」
リーリアはバーナルが間違って外道爺共の仲間として一緒に捕まらないように、自分と一緒に連れて行こうと思った。
バーナルがいつも休みの時にいる居場所について、リーリアに餌付けしている時にバーナルがうっかり口を滑らせたおかげで、リーリアは知っていた。
「仲間にスカウトする予定の人物がおります。
その人物のところに寄って欲しいのですが、よろしいですか?」
「……その人物の名は?奴らの仲間ってことか?」
「えっと、そうなのですが、こちらの味方になってくれる方です。
名前はバーナルです」
「バーナルだと!?そいつは、まさか料理人ではないよな?」
「はい、料理人です!それも、極上の!!
いやもう、素晴らしく美味しい料理を作る方で、天才ですよ~。
あれ?もしかして、ルイス様、彼とお知り合いですか?」
リーリアが嬉々としてバーナルのことを言うと、ルイスは、深くため息をついてから額に手をあてて、頭痛がするようであった。
「もしかして、そのバーナルは、金髪で、自分のことを体は男だが、中身は女だと言っていなかったか?」
「そうです!金髪でしたし、体は男性でしたが、中身は私より乙女で女性らしい方でした。
あ、やっぱり、ルイス様のお知り合いなのですね!」
「……そいつなら間違いなく、『毒殺料理人バーナル』といって、暗殺業界でも有名な暗殺者だ。
今は奴らの仲間をやっていたのか……。
あのバーナルに餌付けされたのか?
よく無事だったな……」
「へ?ど、毒殺料理人!?
何ですか、それ?
しかも、暗殺者なの、バーナルって!?
し、知らなかった……。
あれ?でも、そういえば、業界で名が知られているって言っていたかも……」
「ああ、腕は確かな暗殺者として有名だぞ。
とんでもない奴をスカウトするつもりだったのだな。
でも、それなら、バーナルが主犯を助けに来るかもしれないから、主犯の送る先は変えた方が良さそうだな」
そういって、ルイスはすぐに主犯である外道爺の尋問先を変更させた。
その後は、ルイスもリーリアと一緒に馬車に乗り込み、アルーテ王宮に向かった。
「……あの、今回、私の魔力がかなり増強されたのは、バーナルの作る料理のおかげなのです。
あの料理が私の魔力の増強をさせてくれたので、今回の成功がありますが、それでもスカウトは駄目ですか?」
「……そうだな、止めた方がいい。
君が思う以上に厄介で、気軽にスカウトできる相手ではないぞ。
アルーテ王宮に戻ったら、ルクレナにも聞いてみろ」
「はい、そうします。
……そういえば、ルイス様はルクレナ様の弟君でいらっしゃるのですよね?」
「ああ。ルクレナとは両親が同じ姉弟だ。
そもそも、私の母は、レイスリーア王妃の影武者をしている。
私は母似のおかげで、第2王子のセリウス殿下にもそっくりに生まれたので、私はセリウス殿下の影武者として、ランダード王家に仕えている。
だから、リーリア、君のこともよく知っているし、特に君の魔法については特別に覚えさせられている」
「ああ、だから、あんなにあっさり、私の魔法を解いたのですね」
「そうだ。セリウス殿下から影武者の存在を聞いたことはないか?」
「ん、んん。そういえば、セリウス様からそのことを聞いたことはあるのですが、是非、影武者の方に会ってみたいと言ったら、セリウス様が『自分が死ぬまで絶対、会わせない!』って何故か怒っておりましたね」
「ふふっ、そうだった。
私にも同じ様に『自分が死ぬまで、私のリーリアに接触するな!』と怒っていたな。
嫉妬深いセリウス殿下に、君はとても愛されていたのだな」
ルイスはリーリアを、優しい目で見つめる。
「うーん、いや~、もうセリウス様とは婚約解消しましたが……。
あ、婚約解消したから、ルイス様は、私とも会うのが解禁になったのですね?」
「それもあるが、君がアルーテ王家預かりのルクレナ管理下で、行方不明になるから、ルクレナ以外の管理者が新たに必要になった。
現在、セリウス殿下は、アリーシアの件での後始末で、ランダート王国から出られないから、代わりに私がきたのだ」
「……えっと、もしかして、それは私がルクレナ様の部下失格ということですか?」
「ルクレナの部下失格というより、君をルクレナだけでは管理しきれないとは考えられている。
おそらく、今後は、私が君のもう1人の管理者として、監視することになると思う」
「うぅ。私の勝手な行動のせいで、ルクレナ様にもお咎めはいくのですか?」
「……その覚悟はした方がいいかもな。
まあ、まだ決定ではないが……。
あと、行方不明の君が、この競売にいるのか、アグワリーの組織の方にいるのか、どちらか定かではなかったので、私とルクレナで分担したが、ルクレナとは、今日中にアルーテ王宮で合流する予定だ。
だから、今後のことは、ランダート王家の意向をふまえて、アルーテ王宮でルクレナと合流してから、一緒に相談することになるだろう」
「そうなのですね。
……一応、今回、犯人を捕まえた手柄もあるのですが、それでは許してもらえないですかね?」
「……まだ、罰せられるかもわからないから、何とも言えないな。
ただ、君が誘拐されていた期間、パメラ王女やルクレナは、ほぼ不眠不休で君の捜索に尽力していた。
だから、今はまず、パメラ王女やルクレナに君の無事な姿を見せる必要があるから、大人しく反省して欲しい」
「……はい、わかりました」
ルイスからそう言われ、このリーリア誘拐事件でのパメラ王女やルクレナの心労を考えると、さすがの野猿でも、自分のやらかした行為を反省した。
アルーテ王宮に向かう馬車の中で、反省して落ち込んだリーリアをルイスは興味深く見つめ、静かな時間を過ごすのであった。
こちらには、あまりあのセリウスは登場しないので、ご安心を!
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セリウスらしき人物は、舞台上のリーリアに声をかけてくる。
「リーリア、あの者達はランダード王家に仕えている仲間だから、解放して」
「へ?え?あ、はい」
リーリアが鳥籠に閉じ込めた者達を指しながら、冷静な声で言ってくる相手に、リーリアは、条件反射のように解放してしまう。
「怪我は?」
「特にありません!」
「事前情報では、足に傷を負ったと聞いていたが?」
「あ、すぐに手当てをしていただいたので、大丈夫です。
もう完治しております」
「そうか。魔力封じの腕輪は自力で外したのだな、今、持っているか?」
「はい」
「じゃあ、それを渡して」
リーリアは相手に言われるままに腕輪を渡そうとするが、ここで、さすがにはっと思いとどまった。
腕輪は解錠してあるが、見かけだけでもしておかないと怪しまれるため、フェイクでつけているふりをしていた。
もしまた施錠されるとまた自分が無力化するため、すぐに渡さずに確認するリーリア。
「あ、あの、何で、セリウス様がこちらに?
えっと、そもそも、本当にセリウス様ですか?」
「婚約破棄したとはいえ、私の顔も声も忘れたのか?」
「いえ。声もお顔もセリウス様そっくりですが、髪色と口調が……」
「髪は、鬘や魔法でいくらでも変えられるだろう?」
「髪は確かにそうですね。
でも、口調は、いつもの仕事時のセリウス様風ですが、ちょっと違いますね。
しかも、セリウス様は公式の場以外では、自分のことを『私』とは言いません。
演技というより、そっくりな別人なのかと思えて、判断つかないです」
「ふっ、くくく、さすがだね」
笑いだした相手は、やはりセリウスにとてもよく似ているが、別人だとリーリアには、本能的にわかる。
それに、セリウスにしては、独特の何かも足りない。
それは、リーリアに対する執着や行き過ぎた愛情のもとに生じるものである。
リーリアも、一瞬、冷静なセリウスが仕事モードだからか、または正式に婚約破棄し、離別宣言したためにリーリアに対するその感情が失われたものなのかと考えた。
ただ、リーリアの本能が、「彼はセリウスではないぞ!」と言っており、どちらかというと彼は雰囲気からもルクレナに近い存在なのではないかと思い至った。
「……あなたは、もしかして、ルクレナ様のお仲間ですか?」
「ははっ!本当に鋭いな。正解だ。
君の言う通り仲間というか、私はルクレナの実の弟だよ」
「は!?お、弟?ええ~!?
確かに雰囲気はルクレナ様に似ていますが、そこまで口調もルクレナ様ほど悪くなくて、むしろ貴族っぽいですよ?」
「ああ。まあ、ルクレナより、そういう風にふるまうような訓練をされているからね。
私の名はルイスで、ルクレナと同じランダード王家に仕えている。
詳しくは、また後で説明するが、味方として信用して欲しい。
そのために、セリウスと同じこの顔を曝したのだ」
「……る、ルクレナ様もすぐにこちらに?」
「いや、ルクレナはアグワリーという人物の組織の方を担当しているから、ここには来ていない。
アグワリーのことは?」
「存じております。
魔力封じの腕輪と足の怪我の張本人です。
そのせいで抵抗できなくて、こちらに捕まってしまいました」
「そうか……。
この人身売買の潜入捜査は、もともとルクレナの仕事だったのだが、君が行方不明になるからルクレナが呼び戻されて、君の捜索にあたっている。
それで、私がルクレナの代わりにこちらの方へ潜入捜査で赴くことになったのだ」
「そ、そうなのですね。
ご迷惑をおかけして大変申し訳ございません」
「そう思うのなら、大人しく指示に従ってもらうよ。
基本、指示があるまで捕らえられた者達の拘束は解かないで。
今はとりあえず、ここをすぐに我々で制圧するから、君はそこで待機だ」
「……はい、わかりました」
リーリアもいきなりルクレナの実弟と言われ、信用して良いものかと悩んだが、本能的に何故か大丈夫と思えた。
それにルクレナと逃亡していた時に、ルクレナから弟がいることを聞いたのを思い出した。
その話をしている時に、ルクレナがやけに意味深に笑っていたので、(ああ、あの時、弟がセリウス様にそっくりと言いたかったのか)と納得したリーリア。
それから、まず、会場の外で待機していた仲間達をリーリアの結界を解いて、中に入れて、セリウスにそっくりなルイスが、指示を与えて無駄なく、その場を制圧する。
もっとも、リーリアがほぼ拘束していたので、物理的移動による処理が主である。
捕まえた者達も、相手別にすぐに尋問行きか、投獄行きかと分類して、どんどん外に運んでいく。
セリクルド王国からきたサリュー王子の従者や宰相の手の者達には、捕まえてすぐに、ルイスが直々に対応していた。
もちろん、リーリアにはやりとりが聞こえないように配慮して行われた。
「……先程は、ここで彼女を手に入れたらどうやって嬲るかで、随分と楽しく盛り上がっていたな?
席が近かったので丸聞こえだったぞ。
もう、どんな言い訳をしても無事に国へ帰れると思うな」
「ひぃ!セ、セリウス殿下!?何故、こんなところに……?」
ルイスは、心の中で、(もし、私が本物のセリウスだったら、貴様ら何て、すぐに骨の髄まで生きたまま燃やされているぞ?随分と愚かな発言と行為をしようとしていたのだが、それをわかっているのかどうか……)と思いながら、怯えるセリクルド王国の従者達に、冷たく対応する。
セリクルド王国の一味だけを別の場所へ移動するように、ルイスは仲間達に指示した。
その後、この屋敷に残党やリーリア以外の商品となる人間がいないかの捜索もする。
「あの、ルイス様、私、まだ余力があるので、捜索のお手伝いをいたします」
「いや、無理しなくていいし、手伝いはいらない。
終わったら、すぐにアルーテ王宮に連れて行くから、そこで大人しく待機だ」
「では、早く王宮に行けるようにお手伝いしたいです。
まだ魔力はありますよ?」
「まだ魔力があるのか……?
じゃあ、探索の魔法で、他の人間がこの屋敷に居ないか、探すのを手伝って欲しい。
でも、限界が近くなったら、止めること、いいね?」
「はい!」
ルイスだけでなく、リーリアの探索魔法も使って、巧妙な隠し部屋を見つけて他の被害者を救出し、また、隠れてやり過ごそうとした犯人一味も見つけて引きずりだし、捕縛することにも成功した。
それから、アルーテ王国の騎士団長に指令系統を移し、外道爺の所有する他の屋敷へも一切捜査に入り、関係者達を捕縛して、誘拐された人間達を救出していくことになった。
ここで、一通り役目を果たしたリーリアは、そのまま保護という形で、ルイスと一緒にアルーテ王宮に専用の馬車で護送されることになった。
馬車に乗る前に、リーリアは、ルイスへバーナルの件でお願いをしてみた。
「あ、あの、ルイス様!ちょっと寄って欲しい所があるのですが……」
「……寄りたいところ?何のために?」
リーリアはバーナルが間違って外道爺共の仲間として一緒に捕まらないように、自分と一緒に連れて行こうと思った。
バーナルがいつも休みの時にいる居場所について、リーリアに餌付けしている時にバーナルがうっかり口を滑らせたおかげで、リーリアは知っていた。
「仲間にスカウトする予定の人物がおります。
その人物のところに寄って欲しいのですが、よろしいですか?」
「……その人物の名は?奴らの仲間ってことか?」
「えっと、そうなのですが、こちらの味方になってくれる方です。
名前はバーナルです」
「バーナルだと!?そいつは、まさか料理人ではないよな?」
「はい、料理人です!それも、極上の!!
いやもう、素晴らしく美味しい料理を作る方で、天才ですよ~。
あれ?もしかして、ルイス様、彼とお知り合いですか?」
リーリアが嬉々としてバーナルのことを言うと、ルイスは、深くため息をついてから額に手をあてて、頭痛がするようであった。
「もしかして、そのバーナルは、金髪で、自分のことを体は男だが、中身は女だと言っていなかったか?」
「そうです!金髪でしたし、体は男性でしたが、中身は私より乙女で女性らしい方でした。
あ、やっぱり、ルイス様のお知り合いなのですね!」
「……そいつなら間違いなく、『毒殺料理人バーナル』といって、暗殺業界でも有名な暗殺者だ。
今は奴らの仲間をやっていたのか……。
あのバーナルに餌付けされたのか?
よく無事だったな……」
「へ?ど、毒殺料理人!?
何ですか、それ?
しかも、暗殺者なの、バーナルって!?
し、知らなかった……。
あれ?でも、そういえば、業界で名が知られているって言っていたかも……」
「ああ、腕は確かな暗殺者として有名だぞ。
とんでもない奴をスカウトするつもりだったのだな。
でも、それなら、バーナルが主犯を助けに来るかもしれないから、主犯の送る先は変えた方が良さそうだな」
そういって、ルイスはすぐに主犯である外道爺の尋問先を変更させた。
その後は、ルイスもリーリアと一緒に馬車に乗り込み、アルーテ王宮に向かった。
「……あの、今回、私の魔力がかなり増強されたのは、バーナルの作る料理のおかげなのです。
あの料理が私の魔力の増強をさせてくれたので、今回の成功がありますが、それでもスカウトは駄目ですか?」
「……そうだな、止めた方がいい。
君が思う以上に厄介で、気軽にスカウトできる相手ではないぞ。
アルーテ王宮に戻ったら、ルクレナにも聞いてみろ」
「はい、そうします。
……そういえば、ルイス様はルクレナ様の弟君でいらっしゃるのですよね?」
「ああ。ルクレナとは両親が同じ姉弟だ。
そもそも、私の母は、レイスリーア王妃の影武者をしている。
私は母似のおかげで、第2王子のセリウス殿下にもそっくりに生まれたので、私はセリウス殿下の影武者として、ランダード王家に仕えている。
だから、リーリア、君のこともよく知っているし、特に君の魔法については特別に覚えさせられている」
「ああ、だから、あんなにあっさり、私の魔法を解いたのですね」
「そうだ。セリウス殿下から影武者の存在を聞いたことはないか?」
「ん、んん。そういえば、セリウス様からそのことを聞いたことはあるのですが、是非、影武者の方に会ってみたいと言ったら、セリウス様が『自分が死ぬまで絶対、会わせない!』って何故か怒っておりましたね」
「ふふっ、そうだった。
私にも同じ様に『自分が死ぬまで、私のリーリアに接触するな!』と怒っていたな。
嫉妬深いセリウス殿下に、君はとても愛されていたのだな」
ルイスはリーリアを、優しい目で見つめる。
「うーん、いや~、もうセリウス様とは婚約解消しましたが……。
あ、婚約解消したから、ルイス様は、私とも会うのが解禁になったのですね?」
「それもあるが、君がアルーテ王家預かりのルクレナ管理下で、行方不明になるから、ルクレナ以外の管理者が新たに必要になった。
現在、セリウス殿下は、アリーシアの件での後始末で、ランダート王国から出られないから、代わりに私がきたのだ」
「……えっと、もしかして、それは私がルクレナ様の部下失格ということですか?」
「ルクレナの部下失格というより、君をルクレナだけでは管理しきれないとは考えられている。
おそらく、今後は、私が君のもう1人の管理者として、監視することになると思う」
「うぅ。私の勝手な行動のせいで、ルクレナ様にもお咎めはいくのですか?」
「……その覚悟はした方がいいかもな。
まあ、まだ決定ではないが……。
あと、行方不明の君が、この競売にいるのか、アグワリーの組織の方にいるのか、どちらか定かではなかったので、私とルクレナで分担したが、ルクレナとは、今日中にアルーテ王宮で合流する予定だ。
だから、今後のことは、ランダート王家の意向をふまえて、アルーテ王宮でルクレナと合流してから、一緒に相談することになるだろう」
「そうなのですね。
……一応、今回、犯人を捕まえた手柄もあるのですが、それでは許してもらえないですかね?」
「……まだ、罰せられるかもわからないから、何とも言えないな。
ただ、君が誘拐されていた期間、パメラ王女やルクレナは、ほぼ不眠不休で君の捜索に尽力していた。
だから、今はまず、パメラ王女やルクレナに君の無事な姿を見せる必要があるから、大人しく反省して欲しい」
「……はい、わかりました」
ルイスからそう言われ、このリーリア誘拐事件でのパメラ王女やルクレナの心労を考えると、さすがの野猿でも、自分のやらかした行為を反省した。
アルーテ王宮に向かう馬車の中で、反省して落ち込んだリーリアをルイスは興味深く見つめ、静かな時間を過ごすのであった。
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