野猿な悪役令嬢

ルナルオ

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番外編 IF 野猿な囚人 27-2.(セリウス外ルート)情報

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 バーナルが仲間になった!

 これは、リーリアにとって、この先の食事は間違いなく美味しいものを食べれるということである。
 一方、ルイスにとっては、手練れの暗殺者に命ではなく、貞操を狙われるということであり、ただでさえ、心休まる時が少ない職業柄、さらに負荷となることが明らかである。
 そのリスクを犯してでも、ルクレナは、一時的にでもバーナルを仲間にして、彼から情報を引き出さないといけなかった。
 もちろん、ルクレナは抜かりなく、バーナルの裏切りを予想して、様々な魔法で制約することで、対策をしている。また、野猿の安全のために別行動は取らないように、ルクレナは別行動を希望するルイスを説得して、何とか渋々受け入れるルイス。
 受け入れたものの、ルイスは、ため息をつき、ちょっと落ち込んでいた。
 そこへ、リーリアはルイスに近づき、シンプルなデザインの小型のペンダントを渡した。

「ルイス様、これをよろしければ、お使いください」
「……これは?何か術が施してあるようだから、ただのペンダントではないのだろう?」
「はい!これは、特定の人物が接近しないようにするために、私が特別な結界を施したペンダントです。
 使える回数はそのままだと限りがあるのですが、まめに魔力を補充していただければ、継続して利用できます」
「小規模の結界か!
 凄いな、普通ならそんな簡単に作れないものだぞ。
 しかも、継続的に使えるとは助かる。
 ……本当にいただいていいのか?」
「はい、もちろんです!
 その、私のことでバーナルが仲間になったので、これでルイス様にとっての負荷が軽くなればと思いまして……」
「ありがとう!
   そういえば、私のことを様づけで呼んでいるが、呼び捨てでいいぞ?」
「え?いえ、そんな、上司であるルクレナ様と同様に上司と思っておりますから」
「私は上司ではないぞ?
 まあ、多少はこちらの仕事では私の方が先輩だが、魔法の能力的にはリーリア嬢の方が上だし、これからも頼りにすることがあると思うから、同僚として『ルイス』もしくは『ルイ』と呼んでくれ」
「えっと、良いのですか?
 では、その、ルイスさんとお呼びしますね。
 あ、私のことも『リーリア』か『リア』とお呼びください」
「ああ、わかった、リア。あと、私に敬語もいらないぞ?」
「そ、それは、大事な先輩なので、まだちょっと難しいです……」
 そういえば、私のことを様づけで呼んでいるが、呼び捨てでいいぞ?」
「……まあ、今はそれでいいかな。
 とりあえず、ペンダントをありがとう、リア!」

 ほのぼのとルイスとリーリアが仲良くしている横で、ニヤニヤするルクレナと反対に、バーナルは面白くなさそうにしていた。

「ちょっと~、ルクレナ~。
 あたしのルイスが、野猿ちゃんと急接近しているんだけど、ほっといていいの?
 野猿ちゃんは、第2王子の大事な婚約者でしょ?」
「元な。婚約破棄した元婚約者だから、もう野猿の好きにしていいんだよ。
 なあ、いいじゃないか!
 ルイスも野猿と仲良くなるという念願がやっと叶ったんだからさ。
 あの独占欲の塊のような第2王子のせいで、面識も持てなかったんだと」
「あら?あんた、あの二人を応援するつもり~?」
「……まあ、お前よりはまだ野猿の方がましだしな。
 あの二人の邪魔すんなよ、バーナル?」
「やだ~、邪魔するもん!」

 バーナルが「ルイス~!!」と言って、ルイスに抱き着こうとした。
 その時。

 バン!
 ドン!!

 バーナルを阻む強固な結界が、ルイスを取り囲むように突然、出現した。
 その出現の反動で、ぶつかったバーナルは少し飛ばされて、転んでしまった。

「いった~、痛た……。
 何これ!?」
「おお!さすがだな、リア!
 早速、役に立ったぞ」
「良かったです!これ、今は自動発動設定がされているので、ぐっすり寝ているところを襲われる心配もないですよ~。
 あ、でも、バーナルと組んで仕事される際は、その自動発動設定は変更できますので、その解除方法はですね……」

 無事に使えてよかったねっとリーリアとルイスが喜んで、バーナルを阻む結界のペンダントの使い方について、リーリアがルイスに詳しく説明する。
 しかし、結界に阻まれたバーナルは、当然、怒り出す。

「ちょっとー!どういうことなのよっ?
 その結界って、あたしに対する結界なわけ!?酷いわ!!」
「ふん、お前がむやみに私に近づくからだ。
 わかったら、無駄に接近するな」
「いやん!私もルイスと仲良くしたいのに、そんなもんあったら、できないじゃない~」
「お前と仲良くする必要はないからな」
「キィー!!」

 横で心配そうにみているリーリアの方へ、ぐるんっと向きをかえ、標的を変えるバーナル。

「ちょっと、野猿ちゃん!酷いじゃない!?
 今すぐ、解除して!」
「ひぅ!えっと、その、もうルイスさんに渡したので、無理です」
「む~、解除しないと、野猿ちゃんのリクエストに応えてあげないんだからね!いいの?」
「ええー!それは駄目です!困ります!!」
「じゃあ、解除して!」
「うーん、それが、今、もう管理者をルイスさんの設定にしてしまったので、私でも難しいんです。
 ごめんなさい。謝るので、ご飯だけは……」
「謝っても駄目よ!ルイスと接触できるようにして!」
「代わりに、バーナルにはこれをあげます」

 ぷいっと横を向いたバーナルに、リーリアは可愛いデザインの細めの腕輪を渡す。

「あら、可愛い!もしかして、これも結界?」
「はい!それも、私が作った一時結界のアクセサリーになります。
 命を奪われるレベルの攻撃を1度だけなら自動発動で防げます。
 ただ、作動すると切れてしまうので、切れたら修理しますね」
「……こんなものでごまかせると思ってんの?」
「えっと、いらないですか?」
「いるわよ!1本じゃなくて、もっと欲しいくらい!!
 だってこれから、間違いなく物騒になりそうだもの」
「その、バーナルにはもっとあげたいとろこですが、これ以上はルクレナ様の許可がないと……」

 リーリアは困ったようにルクレナをみるが、当然、バーナルを鼻であしらうルクレナ。

「お前は自分の役割と今の立場を自覚しろ、バーナル」
「あらら、随分と上からなのね、ルクレナ?」
「野猿の餌付けはお前の重要な仕事のひとつだ。
 一時的とはいえ、お前が私の仲間になった時点で、それはもう交渉の札には使えないぞ。
 あまり我が儘をいうな。
 それに、その結界アクセサリーは、魔法の発達したこのランダード王国でも作れる奴は3~4人と限られている代物だ。それを簡単に作る野猿の価値はわかるよな?
 その腕輪は、こんな裏家業の人間にとっては、生き残れる命綱としても、お前の料理や暗殺の腕よりもはるかに価値がある。
 それを仲間になったからこそ、野猿の好意で、特別にお前へ1個やるんだ。
 忠誠を誓いこそすれ、職務怠慢をするつもりならすぐに取りあげるぞ?」
「きぃー!わかっているけど、むかつく、あんた!!」

 今度はルクレナにぷりぷり怒るバーナル。

「バーナル、怒らないで?」と慰めるリーリア。
「やだ、野猿ちゃんの上目遣い、かぁわぁいい~。
 あ、でも、もとはといえば、野猿ちゃんのせいよね?」と怒りの矛先がぶれるバーナルであったが、「それより、この腕輪のデザイン、ちょっと可愛過ぎね。私にはもっと華麗なのが似合うと思うの」と注文をつけだす。
「そうですか?あまり目立つのは良くないかと思うのですが、確かにバーナルに似合うものの方が、違和感なく、結界とばれにくいですね。
 バーナルに似合うデザインにかえましょう!
 薔薇のモチーフがいいですかね?」
「あら、わかっているわね~。
 そうねえ、私は紅色をよく使うから紅の薔薇をあしらっているのが良いかしら」
「おい!早速、野猿に注文つけてんなよ、料理人!
 あと、あんまり華美にすると、結界としてではなく、アクセサリーとして狙われんぞ!」と忠告するルクレナ。
「ああ、そうですね。うーん、地味でバーナルに似合うデザインか……」と悩みだすリーリア。

 何だかんだと騒ぎながらも、4人は無事に街に一緒に入ることになった。
 宿泊する予定の宿に入り、一緒に夕食をとって落ち着いた後、ルクレナ達は宿屋の部屋に集まり、防音の結界を施して、バーナルから情報を聞き出すことにした。

「それで?野猿を狙う敵は、ランダード王国の貴族あたりか?
 確か、旧セリウス派と呼ばれていた奴らがまだ残っていたか?」
「あらん~。直球ねえ、ルクレナ。
 でも、貴族も含まれるけど、そういう政治関連の貴族ではないわ」
「……というと、あの『アレースの魔女』を拝む厄介な新興宗教団体の方か?」
「その通り!その愚かな宗教団体、『リアレース教会』の奴らよ」
「いや、でも、あいつらなら、大した資金力も統率力もなく、『アレースの魔女』に頼って自分の欲望を叶えてもらおうっていう他力本願な奴らだろう?所詮、小物だ。
 わざわざお前が知らせる程の話か?」
「それがねぇ……」

 首を傾げるルクレナに、バーナルは深いため息をつく。

「リアレース教会は、今まではくずの集まりだったんだけど、ある日突然、その宗教団体に1人の統率者が現れて、無関係だった貴族共に次々と資金を出させて、今や国としても無視できない程の資金力を持ち、厄介さが増したのよ」
「なるほど。まあ、よくあることだな。
 口が上手い詐欺師みたいなトップが立つと、無駄にでかくなる愚か者団体って、よくあるもんだ。
 それが、資金も豊富になったから、その金で『アレースの魔女』を取り込もうとしているってことか?」
「うーん、ただお金で取り込んだり、勧誘で仲間にしたりという真っ当な手段ではないみたいよ。
 それより、強制的、かつ脅迫みたいな暴力チックな手段にでるつもりよ」

 それを聞いたルクレナもルイスも眉間のしわを深くし、リーリアはちょっとショックを受けた。

「……暴力に訴えるってことは、おそらく相手側に野猿の詳しい事情が知られているのかもな」
「そうでなきゃ、そんな手段にでないでしょうね~」
「なあ、バーナル。
 この情報は、お前がフリーになったから暗殺者としての仕事を引き受けようとして、得た情報だろう?」
「ふふっ、一応、守秘義務があるから言えないけどねぇ」

 そう言って、肯定するように微笑むバーナルに、ルクレナは深いため息をつく。

「そのリアレース教会のトップの情報はあるか?」
「中年の女よ。容姿は特徴的でね、桃色の髪に水色の瞳をしているらしいわ」
「桃色の髪に水色の瞳……。隣国セリクルドの王族の特徴だな。
 ルイス、どう思う?」
「確かにセリクルド王国の王族の特徴だが、その両方の特徴を持つ女性王族は、今のところ2人しかいない。
 そのうち1人は、まだ10歳にも満たない子供で、もう1人は、60歳を超えている高齢のご婦人だ。
 いずれも、そのトップではないはずだ」とセリウスの影武者をしていただけあって、他国の王族情報に詳しいルイスが答える。
 皆で、そのトップは何者かと悩んでいるところ、リーリアがふと思い出した。

「あの、そういえば、義妹のアリーシアもセリクルド王国の王族の血を引くので、その特徴ですが、中年ではなくまだ若いから関係ないですかね?」
「まあ、若くてもなめられないように変装している可能性はあるな。
 でも、お前の義妹の場合、王宮で厳重に捕縛されているから、その可能性もほぼないぞ。
 奴が洗脳できないように、声がでないようにされているし、逃げたという情報も今のところはない。
 しかも、管理しているのは、洗脳の効かないメナード公爵だしな」
「そうですか……」

 あらためてアリーシアの現状を聞いて、少々、胸が痛むリーリア。
 そのアリーシアの現状は、アリーシアにとって自業自得な結果である。
 しかし、リーリアは、前世の記憶が残る自分がもっと上手く立ち回れば、自分自身のアウスフォーデュ修道院行きのバッドエンド回避はもちろん、前世の乙女ゲームの主人公であるアリーシアも幸せになれる方法が他にあったのではないかと密かに後悔し続けている。
 そして、またリーリアに試練のような厄介ごとが降りかかろうとしている。
 リーリアも、バーナルの情報を聞いてから、嫌な予感がしてしょうがなかった。
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