野猿な悪役令嬢

ルナルオ

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その後の友人たち エドワードの場合

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 エドワード・ノーレンの父親はこのランダート王国の宰相をしていて、公爵位を持っている。
 そのため、息子で長男でもあるエドワードが公爵家を継ぎ、将来は宰相になるのではと周囲から期待されており、エドワード自身も、学院卒業後の進路は宰相補佐になることを希望していた。

 アリーシアに騙されて、リーリアにセリウスとの婚約解消を勧めるまでは……。

 セリウスは、エドワードがアリーシアのためにリーリアへ婚約解消をすすめた翌日にすぐ、エドワードにリーリアへ土下座で謝らせていて、エドワードの処分を保留にしていた。

 そして、しばらくして隣国の王子サリューとアリーシアの婚約が決定し、とうとう公式に発表になった翌日、セリウスはエドワードの処分を伝えるべく、謹慎していたエドワードの部屋を訪れた。

「やあ、エドワード!」とセリウス殿下が冷たく微笑みながらエドワードに挨拶する。

「で、殿下……。その節は、大変申し訳ございません!」

「ふふふっ。君は交渉事が本当に得意だよねー!あのリーリアをその気にさせてしまってね。
 なんてたって、僕との婚約解消をすすめる君のフォローは素晴らしくよかったようで……」

「本当にとんでもないことをしでかしました。大変申し訳ございません」

 ひたすら反省し、謝るエドワードにため息をつくセリウス。

「今日は謝罪させるためではなく、君の今後について決定したので、伝えにきたんだよ。
 正直に言うとね、あの女狐レベルに惑わされた君を将来、宰相のような要職にすることは難しいね。
 この王宮では、あれよりもっと厄介な輩を相手にした仕事は少なくないから、きちんと真実を見抜ける力がないとね。
 そこで、そんな君にやってもらいたい仕事があるんだ。
 南のアレース地域は知っているよね?」

「アレース地域ですか……?野猿の生息する?」

「そうだよ。リーリアじゃない、本物の野猿がいるところだよ」

「そのアレース地域がなにか?」

「今、そこの開拓を推進する担当を探していて、なかなか開拓が進まないんだ。
 南の方は豊かでのんびりした地域のためか、きちんと指揮をとれる人材がいなくてね。
 でも、君なら成し遂げてくれると思っている!
 だから、君にアレース地域担当開拓長官として、正式に辞令をだす予定だよ」

「アレース地域の開拓ですか……」とエドワードにとっては、明らかな政治中枢からの排除に、予想はしていたが、これは流刑宣告だ!と少なからずショックを受けていた。

「まあまあ、そんなに落ち込むことはないよ。
 ノーレン公爵も君がアレースに行くことを承諾しているけど、廃嫡はまだされていないのだしね。
 万が一、君がアレースでの仕事が長引いて、なかなか帰れなかったとしても公爵家の跡取りとして、君にはしっかりした弟がいるから、心配ないでしょう?
 そうそう、アレースはね、気温は暖かく、植物がよく育つ環境だから、人はそんなに必死に働かなくても生きていけて、食べ物も豊富でいいところなんだよ。
 ランダート王国の南の楽園って呼ばれるだけのことはあるよ。
 あんなことをしでかした君だけど、僕は友人として君にそんな良いところに行ってもらうように手配したんだけどね」

「……そうですか。寛大な処置をありがとうございます」

「ああ、食べ物で思い出したけど、そういえば、君がリーリアに勝手に餌付けしているのは、知っているよ」

 そう、確かにエドワードは、リーリアにちょっとしたおやつなどを時々、与えることがあった。
 なぜならば、おやつをセリウスに制限されたリーリアがお腹を鳴らしているのをたまたま何度も見かけていたからである。
 もっとも、おやつを食べたリーリアの輝く笑顔が子供もみたいなため、微笑ましく思っていたが、他の男性陣のような下心は一切なかった。

「餌付けって……。仮にも婚約者でしょう?」と苦笑しながらエドワードは(あなたがリーリア嬢に対してそんな愛玩動物のような態度だから、勘違いしてしまって、アリーシアの言うことに騙されたのですよ)と心の中で文句を言っていた。

「いいんだよ。僕が誰よりもリーリアを愛しているのは、確かだからね。
 そもそも、僕のことをよく理解していたら、僕がリーリアからあの女狐に乗り換えるなんて、絶対するわけないってわかるはずなんだけどね。
 まったく!
 僕がリーリアの食べ物に関して、健康(と調教)のためにコントロールして、色々と気遣って苦労しているのに、ひとの苦労も知らずに勝手に餌付けして。
 まあ、もうアレース地域に行ったら、餌付けできないか。
 そうだ!本物の野猿にでも、餌付けしておいでよ!
 実はアレースへは、僕とリーリアの新婚旅行のついでに寄る予定だから、もし僕たちが行くまでに野猿を捕まえて手懐けられたら、また王宮で働いてもらうことになるかも。
  頑張ってくれたまえ!」

「……承知いたしました」

 こうして、それまでは将来、宰相になるとも言われていたエドワードは、南のアレース地域にて、野猿ハンターとなった。もちろん、開拓の仕事もしたうえでだ。

 しかし、エドワードは幸運であった。
 彼の婚約者のエレノラ・ドース伯爵令嬢は、学院卒業後、予定通り彼と結婚し、共にアレース地域まで来てくることになった。

「エレノラ……。君は本当に私と共に、アレースまで来てくれるのかい?」

「はい!もちろんです、エドワード様」

「無理はしなくてもいい。これは私が判断ミスをしたためにかせられた罰だ。
  君まで背負う必要はない。
 つ、つらいけど、君の将来のためにも婚約は解消してくれても……」

「いいえ。私は幼い頃からエドワード様を婚約者としてお慕いしておりましたし、もしエドワード様がお嫌でなかったら、どうか妻として共に背負わせてください。
 それとも、もしや、エドワード様はアリーシア様を憎からず想っていらっしゃったのですか?」

「まさか!
 アリーシアを女性としてみたことはないよ。ただの友人だよ。
 でも、アリーシアは聡明だと思っていたため、まさか今回のようなことをしでかすとは思わず、彼女の話を鵜呑みにしてしまった。
 あと、セリウス殿下の態度も、勘違いさせるような言動がみられたのは確かなんだか……」

「まあ、そうだったのですね。
 でも一言、私に相談していただければ、そんなことは起こらなかったかもしれませんよ。
 確かにセリウス殿下はリーリア様をよく野猿扱いをなさっていますが、目や態度をみれば、溺愛されているのは一目瞭然でしたわ」

「そ、そうなのか?てっきり飼い猿……いや、妹のように思っているのかと……」

「いえ、そんな感じは一切、いたしません。
 本当はきちんと伴侶として目にいれても痛くないくらい大事にされておりましたよ」

「そうか。ではやはり私が浅慮だったね。
 アレースに行ったら、君と何でもよく相談するように心がけるよ。
 でも、貴族の令嬢である君にとって、まだ開拓のすすんでいない場所では色々な意味でも、とても苦労かけることになるのに、本当に良いのかい?」

「はい!南のアレース地域は温暖で、食べ物も豊富で人々もおおらかな性質のため住みやすいところと聞いております。
 だから、アレースに行くことはそれなりに楽しみでもあります。
 もし向こうで苦難があるならば、共にそれを乗り越えて行きたいと存じます」

「ありがとう、エレノラ!」とエドワードは気持ち的に弱っていたため、エレノラの言葉に感動し、涙ぐんだ。

「私は本当に幼い頃からエレノラを愛していたんだ!!
 だから、君には誰よりも幸せになって欲しくて、婚約解消もつらいけど、君の幸せのためならと覚悟していたが……。
 こうなったからには、たとえアレースだろうと、どこだろうと私が君を必ず幸せにするよ!」

「まあ、嬉しいですわ!エドワード様」

「エレノラ。何でも希望があったら、遠慮なく言っておくれ。
 君のためなら、できる限りのことをするよ!」

「まあ、ありがとうございます。
 では、ひとつ、私の弟の件でお願いがございます。
 実は弟はひどい喘息持ちで、南の気候の良いところで療養するように医師から言われておりまして……。
 丁度、私がアレースに行くことになったので、その際、弟を療養のために一緒に連れていきたいのですが、よろしいでしょうか?」

「もちろんだよ!私にとっても大事な義弟だし、好きなだけいてもらってかまわないよ」とエドワードは快く承諾した。

(よかった!お互いの気持ちの確認ができたことや弟のことを承諾してもらえたことはもちろん、エドワード様の転任先が南アレースであることが本当によかった!!
 もし北の寒い地域だったら、弟のこともあるし、今みたいに迷わず着いて行くと決められたか自信ないわ)とエレノラは、エドワードが聞いたら泣いてしまうかも知れない本音をただあえて言わず、共にアレース地域へ赴くのであった。
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