英雄の奥様は…

ルナルオ

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英雄の奥様と息子

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 マリロード王国の英雄、サイラス将軍に第2子が生まれた。

 今度は、髪の色こそスーザンに似て茶色であったが、全体的にサイラスによく似た男の子であった。

「あら……。魅惑肌の生まれる確率は二分の一なのかしら?
 綺麗な肌だけど、タチアナのような肌ではないわ。
 でもまあ、アバード公爵家を継ぐ立派な跡継ぎが生まれてよかったわ!
 小さい頃のサイラスに似ていて、とっても可愛いしね~」とちょっとがっかりそうであったが、一応、誕生を喜んでくれる姑、カーラ。

 もちろん、サイラスは「髪がスーザン似だね、とても可愛いよ!」と言ってくれたし、前アバード公爵(サイラスの父親)も「元気な子を産んでくれてありがとう!」と言ってくれたが、今回の子は、タチアナのような魅惑肌でなかったため、それを期待していた周囲のテンションは低かった。

 せっかくの男の子なのに……。

 一方で、マリロード王国内の多くでは、英雄のジュニアが生まれたと、大喜びであった。

 この子には、父親が英雄のサイラス様ということで、無駄なプレッシャーがかかってしまうかしら……?
 心配だわ……。

 と生まれて早々、息子の将来を心配するスーザンであった。

 レオナールと名付けられたサイラスとスーザンの息子は、とても賢く、すくすく育った。

 ある日のこと。

 家族団欒を4人でしている時であった。
 まだ3歳のレオナールが両親に告げてきた。

「ねえ、父様、母様。僕はタチアナ姉様と結婚するね!」とレオナール。

「いえ、駄目よ。姉弟では結婚できないのよ、レオナール」とさとすように教えるスーザン。

「タチアナは例えレオナールにでも渡さん!」と厳しく言うサイラス。

「だって、お母様はお父様と結婚してしまっているでしょう?だから、まだ結婚していないタチアナ姉様と結婚する!結婚していない女の子の中では一番、タチアナ姉様が好きだもの。いいでしょう、タチアナ姉様も?」と言ってくるレオナール。

 実は、レオナールはわずか3歳にして、将来有望ということで、大変モテていた。
 貴族間での幼い子供達同士の交流会に出席しようものなら、年上の女の子であろうと関係なく女の子達に取り合いをされて、もみくちゃにされるほど、モテた。
 そして、毎日のように「誰を結婚相手に選ぶの?私を選んで!!」というような幼くして既に肉食系の貴族令嬢達からの手紙が数多く届いていた。
 そこで、レオナールは早く本命を決めようと考えてしまった。

 一番好きな女性は母様!

 でも、あのやっかいな父親であるサイラスが夫にいるから、無理かとあきらめてみた。
 そして次に好きなのがタチアナのため、今回の発言に至った。

「えっと、うーん。今のところ、男の子の中では私もレオナールが一番好きだからいいかな?」ともうすぐ5歳のタチアナも返答に困りながらも、一応、OKする。

「駄目だ!そもそも法で姉弟では結婚できないことになっている」とサイラスもまともに止める。しかし……。

「ええ~。だって、クリスティーナ王妃もカーラお婆様も『あら、いいわね!そうしたら魅惑肌の出産確率がグッと上がるわね!!』と言ってくれたよ?」と強い味方をいつの間にかつけているレオナール。

 王妃さま!お義母様!
 そんなことに賛同しないでください!
 しかも、3歳の子に、魅惑肌の出産率の話って……。
 ただでさえ、レオナールがサイラス様のように肌依存症にならないか心配しているのに~。
 そういう時は、「姉弟同士は結婚できない」ときちんと教えてください!!

 とちょっと心の中で怒るスーザンであった。

「それに、王妃様が、昔の王族は姉弟で結婚することもあったし、僕達が結婚する年になるまでにいくつかの前例を作れば、法は変えやすいって言っていたよ~。だから、大丈夫!」

 なぜ、そんな法の改正方法まで教えて、姉弟で結婚できないということを教えないの!?
 そんなにこの肌を生み出したいの?
 私、いっぱい子供を作るべきかしら……。

 とレオナールの発言から色々と悩むスーザン。

「駄目だと言っているだろう!あの毎日、お前に手紙を寄越す貴族令嬢達から選びなさい!!」

「嫌だよ。あの中に好きになれる子、いなかったもん。
 母様や姉様のように触って気持ちのいい子はいないことがわかったんだもん。
 ずるいよ、父様は!
 母様を独り占めしているんだから、タチアナ姉様は僕のものだよ!!」

「絶対に駄目だ!私を超える程の男になってから出直せ!!」と3歳児と大人気なく喧嘩する英雄サイラスに、スーザンとタチアナの2人は、ため息をついた。

 英雄の奥様は、息子の将来も、とってもとっても心配する!

 レオナールを、魅惑肌大好きなサイラスのようにならないように気をつけて育てているのに、今日の発言から「蛙の子は蛙」だから無理かしらと日々、悩むスーザンであった。
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