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3.打ち合わせ
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弥生と佐藤は驚愕のマッチングが決まり、スケジュールを調整し、弥生の10日間の休みが決まってすぐに東京に飛んだ。
見合いは3日後だが、今回は状況が状況の為現地の担当者2人とM関係者との打ち合わせも入っていてなかなか忙しい、何事も下準備が大切だと知っているので手を抜くことはせず準備すが今回は不安しかない。
それに毎回、指定される日時さえ連絡が来ないのは異常で、一応休みの関係もありこちらから3日後を指定したが了承の返事は来ていない事も余計に弥生側を不安にさせた。
そしてMとの打ち合わせ前に会う予定だった担当者からその日は忙しいと、当日、約束の1時間後に連絡がきた。
マッチングの相手から始まった珍事はまだ終わりが見えない。
翌日の朝、相手側の担当者飛口、山田の2人に会う為に昨日待ちぼうけをくらわされたホテル内にある会議室に移動したが、やはり珍事は終わっていなかった。
部屋には若い男がふんぞり返って、中年男性は肩身が狭そうに椅子に腰掛けていた。
大抵の所はこちらが打ち合わせに行くと立ち上がり敬意を示してくれたが今回はそれもなさそうだ。
自分はいい。
オメガだからと侮られることは多いし、地元でも未だに揶揄されたり悪意を向けられることはあるから慣れていると言ってもいいだろう。
しかし、一歩前に立つ佐藤は明らかに怒っていた、いや、見た目は好青年のままだ、部屋に入った瞬間眉をひそめたが次のアクションで立て直せるといった雰囲気だった。
ところが、向こうは立ち上がることもせず、椅子に座ったまま無言で目の前の椅子を顎で示した。
その瞬間、空気が重くなった。
アルファの怒りは一気に空気を変える。にこやかな笑顔を浮かべ見た目は好青年、中身は立派なアルファだった。
但し、紳士。
一歩後ろにいる弥生のことを怖がらせないように、威圧を抑えてくれている。
佐藤は弥生を後ろにかばったまま、二人のうち小さくなっている男のそばに行くと名刺を2枚少しずらした状態で差し出した。
これは、向こう側に座る男には改めて挨拶しない意味で、”まとめて挨拶するから名刺渡しとけよ”という意味だ。
ふんぞり返っている方は相手にしないつもりなのだろう。
それでも、にこやかなのは崩さない。
「初めまして中国地方担当の佐藤一瑠と申します。」
挨拶をされた男はオドオドとした様子から変わらなかったが、挨拶をしようとしてくれたのだろう。椅子から腰を浮かせた時だった。
ガンッ!!と大きな音とともに男は椅子とともに倒れ込んだ。
佐藤は、すぐに弥生を抱き込み、後ろに飛び退いた。
外にいたMからのボディガードも飛び込んで佐藤と弥生の前に出る。
そんな状態になっても男はかまうことなくアルファへの威圧を強くした。
途端に胸が押さえつけられるような痛みと、息苦しさに無意識に大きく呼吸しようとしたがうまく息が吸えず失敗する。
佐藤はぐっと弥生を抱きしめると耳元で小さく「大丈夫です、弥生さん大丈夫ですよ、ゆっくり呼吸しましょう。大丈夫ですから。」とそっと背中をなでてくれた。
その間にも男の横暴はとまらない。
「何、へつらおうとしてるんです?飛口さん?」
隣に座っていた男は隣の椅子を蹴り、飛口と呼ばれた男に威圧を放っただけでは怒りが収まらないのか、椅子を戻し乱暴に倒した男を座らせる。
まるで、尋問するように髪を持ち顔を持ち上げさせると「いいか、勝手なことすんな。」といって乱暴に手を離した。
まるで、役場職員というよりヤクザである。
佐藤とボディガードにかばわれている弥生を一瞥すると「佐藤さんでしたっけ?まぁ座ってくださいよ。」と横柄な態度をとる。
弥生の状態なんてお構いなしに話を続けようとするその男に従うつもりは弥生側の人間にはなかった。
佐藤に至っては「どうやら部屋を間違えたようです。」といい、Mから今回のボディーガードに選ばれた八重垣は早く部屋から出るようにとドアまで開けて待ってくれている。
弥生は二人を止めた。
呼吸を整え「打ち合わせやってしまいましょう。」といったが、もちろん、二人はいい顔をしなかった。
アルファの威圧を無遠慮に出してくるこの男を怖くないとは言わない。
それでも、先延ばしにしてまたこの男に会わなければいけないという事のほうが弥生には嫌だった。
「でも……。」
「頼むよ、できれば今日中に終わらせたい。」
ぐっと言葉を飲み込みうなずいた佐藤は弥生を自己紹介もしない男から避けるように椅子をひき座らせると、自分は男の正面に座った。
ドアが閉まる音とともに八重垣は弥生の斜め後ろ、一歩引いた場所ではなくぴったりと位置取り睨みを利かす。
「へーさすが、オメガ様ですね。アルファを従わせるなんて国が一目置くわけだ。」
何が目的かわからないが、この男は弥生を同等として扱う気はないらしい。
ただ、こんな挑発に乗るほど愚かではなかった。
弥生は基本的に交渉に口出ししない。
よほど、要求があるとき以外は進行をスムーズにするために何も言わないようにしている。
だから、今回も挨拶と要求があるとき以外は口を出さない。
弥生が無言を貫くと舌打ちをされたが、両脇のアルファが自分より上位、同等と気がついているのだろう、それ以上の挑発はなかった。
「それでは、打ち合わせをさせていただきたいと思いますが、その前にお名前をお伺いしても?」
「はぁ?なに、資料読んで来なかったんですか?」
「拝見した資料の方には担当者に飛口、山田とありましたが、大変申し訳ないのですがどちらでお呼びすれば?」
はっきり口に出さなくても、自己紹介もできないのかよ。と顔に大きく書かれているのが弥生にはわかった。
男は仕方なさそうに山田と名乗った。
「では、山田さん今回の相手のことですが、PR部分に書かれている事は問題ないと返答を受けていますが?」
「ああ、何か問題でもあります?」
問題だらけと思っているのは弥生側だけの様な言い方だった。
「元々、マッチングはアルファの為のものなんですよ、最近はオメガに媚びへつらう様な事を書くアルファも多いが、彼は自分の要求を素直に表現してあるだけでしょう。何の問題もありません。」
「では、今回のお見合いについては理解されていますか?」
山田は怪訝な顔で「もちろん」と答えた
「そこのあばずれオメガの相手を見つける為にアルファを斡旋しているんでしょ。」
「斡旋?」
「今まで相手にしたアルファを焚き付けて特別枠を設けて、いいアルファを斡旋させてるんでしょ。そこのオメガ離婚歴どれくらいあるんですか?成婚率100%って、あげまんだから相手してもらってるんでしょうけどね。」
なんというか、怒りを通り越して残念な担当者だった。
佐藤と八重垣が笑顔と無表情で怖い。
「失礼ですが、マッチングの別枠が設けられた意味ですが、本当にそう思っておられますか?」
「他にないでしょ。アルファの中にはオメガ至上主義もいますから。」
佐藤は小さく息を吐き出すと、「山田さん」と極めて冷静に努めるように感情を出さないように呼びかけた。
「研修は受けられましたか?」
「研修?」
「はい、特別枠だからこそ研修があったはずです。」
「ああ、あれですか。」と、鼻で笑った。
「あれ、ですか。」
「あの無意味な研修。いや、あながち無意味でもなかったかな。」
「無意味と?」
「失礼、失礼、阿呆擦れオメガを擁護して、アルファを斡旋してるだけだって分かりましたから無意味ではなかったですね。でもね、あんな都市伝説みたいな内容おかしいでしょ、会うだけで相手のアルファに運命を引き寄せるって、しかも、1週間以内に?」
「……おかしい……ね、しかも、都市伝説ですか。」
佐藤の笑顔は消え失せ、八重垣の前で組まれていた手は今はすぐに動けるようにほどかれていた。
これ以上発言させるのはやばいと感じた弥生は「日取りはどうなるか聞かせていただいても?」
と切り出した。
しかし、山田はまるで黙ってろと睨みつけてきた、佐藤も日取りを決めるつもりがないのか話を続けようとする。
「お相手の方は今回のマッチングはご了承されているのですか?」
「かわいそうですけど、了承はされてますよ。」
「あの希望で?」
「当然でしょう。そこのオメガのように思い上がっているのも多いですから、あの条件でも甘い位ですよ。子供だけ作ってあとは大人しくしてればいいんです。なのに、結婚だ、認知だ、金をよこせだと、相手にさせられるアルファは気の毒で仕方ないですよ。」
まったく、理不尽だと言いたげな山田に、とうとう佐藤が切れた。
ガタンと立ち上がると山田を睨みつけ「今回のマッチングは成立しませんでした。」と、言い放った。
「はぁ??」
「弥生さん、行きましょう。」
「ああ、うん。」
流石にあそこまで言われるとこれ以上進める気にならず、佐藤に従う。
立ち上がりやすいように八重垣も椅子を引く。
「国主導ですよ!断るなんて出来ると思ってるんですか!」
自分の主導権がなくなった事に気が付き山田は脅しとも取れる事を言って引き止めようとする。
「できますよ。」
背を向けた山田に顔だけ振り返る。
「このマッチングはアルファの為です。」
「なら!」
「相手と巡り会えないアルファの為に、特別にこちらの方が尽力してくださっているんです。」
「はぁ?」
「ようはボランティアですよ。」
「そんな事は…」
「国は一切の費用を出さず、マッチングの為に時間をあけさせているにも拘わらず、賃金発生もしない、ボランティア以外なんと言うんです。」
「質のいいアルファを紹介してもらってるんです!」
「それの何の意味が?」
「え?だって…」
「必要ない事を押し付けられても迷惑なだけです。」
いつもの温厚な佐藤が幻だったとさえ思わせる程、冷たい声で突き放し、弥生を促し部屋を後にした。
見合いは3日後だが、今回は状況が状況の為現地の担当者2人とM関係者との打ち合わせも入っていてなかなか忙しい、何事も下準備が大切だと知っているので手を抜くことはせず準備すが今回は不安しかない。
それに毎回、指定される日時さえ連絡が来ないのは異常で、一応休みの関係もありこちらから3日後を指定したが了承の返事は来ていない事も余計に弥生側を不安にさせた。
そしてMとの打ち合わせ前に会う予定だった担当者からその日は忙しいと、当日、約束の1時間後に連絡がきた。
マッチングの相手から始まった珍事はまだ終わりが見えない。
翌日の朝、相手側の担当者飛口、山田の2人に会う為に昨日待ちぼうけをくらわされたホテル内にある会議室に移動したが、やはり珍事は終わっていなかった。
部屋には若い男がふんぞり返って、中年男性は肩身が狭そうに椅子に腰掛けていた。
大抵の所はこちらが打ち合わせに行くと立ち上がり敬意を示してくれたが今回はそれもなさそうだ。
自分はいい。
オメガだからと侮られることは多いし、地元でも未だに揶揄されたり悪意を向けられることはあるから慣れていると言ってもいいだろう。
しかし、一歩前に立つ佐藤は明らかに怒っていた、いや、見た目は好青年のままだ、部屋に入った瞬間眉をひそめたが次のアクションで立て直せるといった雰囲気だった。
ところが、向こうは立ち上がることもせず、椅子に座ったまま無言で目の前の椅子を顎で示した。
その瞬間、空気が重くなった。
アルファの怒りは一気に空気を変える。にこやかな笑顔を浮かべ見た目は好青年、中身は立派なアルファだった。
但し、紳士。
一歩後ろにいる弥生のことを怖がらせないように、威圧を抑えてくれている。
佐藤は弥生を後ろにかばったまま、二人のうち小さくなっている男のそばに行くと名刺を2枚少しずらした状態で差し出した。
これは、向こう側に座る男には改めて挨拶しない意味で、”まとめて挨拶するから名刺渡しとけよ”という意味だ。
ふんぞり返っている方は相手にしないつもりなのだろう。
それでも、にこやかなのは崩さない。
「初めまして中国地方担当の佐藤一瑠と申します。」
挨拶をされた男はオドオドとした様子から変わらなかったが、挨拶をしようとしてくれたのだろう。椅子から腰を浮かせた時だった。
ガンッ!!と大きな音とともに男は椅子とともに倒れ込んだ。
佐藤は、すぐに弥生を抱き込み、後ろに飛び退いた。
外にいたMからのボディガードも飛び込んで佐藤と弥生の前に出る。
そんな状態になっても男はかまうことなくアルファへの威圧を強くした。
途端に胸が押さえつけられるような痛みと、息苦しさに無意識に大きく呼吸しようとしたがうまく息が吸えず失敗する。
佐藤はぐっと弥生を抱きしめると耳元で小さく「大丈夫です、弥生さん大丈夫ですよ、ゆっくり呼吸しましょう。大丈夫ですから。」とそっと背中をなでてくれた。
その間にも男の横暴はとまらない。
「何、へつらおうとしてるんです?飛口さん?」
隣に座っていた男は隣の椅子を蹴り、飛口と呼ばれた男に威圧を放っただけでは怒りが収まらないのか、椅子を戻し乱暴に倒した男を座らせる。
まるで、尋問するように髪を持ち顔を持ち上げさせると「いいか、勝手なことすんな。」といって乱暴に手を離した。
まるで、役場職員というよりヤクザである。
佐藤とボディガードにかばわれている弥生を一瞥すると「佐藤さんでしたっけ?まぁ座ってくださいよ。」と横柄な態度をとる。
弥生の状態なんてお構いなしに話を続けようとするその男に従うつもりは弥生側の人間にはなかった。
佐藤に至っては「どうやら部屋を間違えたようです。」といい、Mから今回のボディーガードに選ばれた八重垣は早く部屋から出るようにとドアまで開けて待ってくれている。
弥生は二人を止めた。
呼吸を整え「打ち合わせやってしまいましょう。」といったが、もちろん、二人はいい顔をしなかった。
アルファの威圧を無遠慮に出してくるこの男を怖くないとは言わない。
それでも、先延ばしにしてまたこの男に会わなければいけないという事のほうが弥生には嫌だった。
「でも……。」
「頼むよ、できれば今日中に終わらせたい。」
ぐっと言葉を飲み込みうなずいた佐藤は弥生を自己紹介もしない男から避けるように椅子をひき座らせると、自分は男の正面に座った。
ドアが閉まる音とともに八重垣は弥生の斜め後ろ、一歩引いた場所ではなくぴったりと位置取り睨みを利かす。
「へーさすが、オメガ様ですね。アルファを従わせるなんて国が一目置くわけだ。」
何が目的かわからないが、この男は弥生を同等として扱う気はないらしい。
ただ、こんな挑発に乗るほど愚かではなかった。
弥生は基本的に交渉に口出ししない。
よほど、要求があるとき以外は進行をスムーズにするために何も言わないようにしている。
だから、今回も挨拶と要求があるとき以外は口を出さない。
弥生が無言を貫くと舌打ちをされたが、両脇のアルファが自分より上位、同等と気がついているのだろう、それ以上の挑発はなかった。
「それでは、打ち合わせをさせていただきたいと思いますが、その前にお名前をお伺いしても?」
「はぁ?なに、資料読んで来なかったんですか?」
「拝見した資料の方には担当者に飛口、山田とありましたが、大変申し訳ないのですがどちらでお呼びすれば?」
はっきり口に出さなくても、自己紹介もできないのかよ。と顔に大きく書かれているのが弥生にはわかった。
男は仕方なさそうに山田と名乗った。
「では、山田さん今回の相手のことですが、PR部分に書かれている事は問題ないと返答を受けていますが?」
「ああ、何か問題でもあります?」
問題だらけと思っているのは弥生側だけの様な言い方だった。
「元々、マッチングはアルファの為のものなんですよ、最近はオメガに媚びへつらう様な事を書くアルファも多いが、彼は自分の要求を素直に表現してあるだけでしょう。何の問題もありません。」
「では、今回のお見合いについては理解されていますか?」
山田は怪訝な顔で「もちろん」と答えた
「そこのあばずれオメガの相手を見つける為にアルファを斡旋しているんでしょ。」
「斡旋?」
「今まで相手にしたアルファを焚き付けて特別枠を設けて、いいアルファを斡旋させてるんでしょ。そこのオメガ離婚歴どれくらいあるんですか?成婚率100%って、あげまんだから相手してもらってるんでしょうけどね。」
なんというか、怒りを通り越して残念な担当者だった。
佐藤と八重垣が笑顔と無表情で怖い。
「失礼ですが、マッチングの別枠が設けられた意味ですが、本当にそう思っておられますか?」
「他にないでしょ。アルファの中にはオメガ至上主義もいますから。」
佐藤は小さく息を吐き出すと、「山田さん」と極めて冷静に努めるように感情を出さないように呼びかけた。
「研修は受けられましたか?」
「研修?」
「はい、特別枠だからこそ研修があったはずです。」
「ああ、あれですか。」と、鼻で笑った。
「あれ、ですか。」
「あの無意味な研修。いや、あながち無意味でもなかったかな。」
「無意味と?」
「失礼、失礼、阿呆擦れオメガを擁護して、アルファを斡旋してるだけだって分かりましたから無意味ではなかったですね。でもね、あんな都市伝説みたいな内容おかしいでしょ、会うだけで相手のアルファに運命を引き寄せるって、しかも、1週間以内に?」
「……おかしい……ね、しかも、都市伝説ですか。」
佐藤の笑顔は消え失せ、八重垣の前で組まれていた手は今はすぐに動けるようにほどかれていた。
これ以上発言させるのはやばいと感じた弥生は「日取りはどうなるか聞かせていただいても?」
と切り出した。
しかし、山田はまるで黙ってろと睨みつけてきた、佐藤も日取りを決めるつもりがないのか話を続けようとする。
「お相手の方は今回のマッチングはご了承されているのですか?」
「かわいそうですけど、了承はされてますよ。」
「あの希望で?」
「当然でしょう。そこのオメガのように思い上がっているのも多いですから、あの条件でも甘い位ですよ。子供だけ作ってあとは大人しくしてればいいんです。なのに、結婚だ、認知だ、金をよこせだと、相手にさせられるアルファは気の毒で仕方ないですよ。」
まったく、理不尽だと言いたげな山田に、とうとう佐藤が切れた。
ガタンと立ち上がると山田を睨みつけ「今回のマッチングは成立しませんでした。」と、言い放った。
「はぁ??」
「弥生さん、行きましょう。」
「ああ、うん。」
流石にあそこまで言われるとこれ以上進める気にならず、佐藤に従う。
立ち上がりやすいように八重垣も椅子を引く。
「国主導ですよ!断るなんて出来ると思ってるんですか!」
自分の主導権がなくなった事に気が付き山田は脅しとも取れる事を言って引き止めようとする。
「できますよ。」
背を向けた山田に顔だけ振り返る。
「このマッチングはアルファの為です。」
「なら!」
「相手と巡り会えないアルファの為に、特別にこちらの方が尽力してくださっているんです。」
「はぁ?」
「ようはボランティアですよ。」
「そんな事は…」
「国は一切の費用を出さず、マッチングの為に時間をあけさせているにも拘わらず、賃金発生もしない、ボランティア以外なんと言うんです。」
「質のいいアルファを紹介してもらってるんです!」
「それの何の意味が?」
「え?だって…」
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