縁結びオメガと不遇のアルファ

くま

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5.再会

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ラインを知らせる通知に目を覚ます。
マッチングがなくなり、部屋で惰眠を貪っていた時だった。

スマホを手に取りラインを開くと、佐藤から一言『激ウマとんかつ!!』と入っていて、何の脈絡も無い一言にぶっと吹き出した。
「これじゃわかんねぇ」
『うまかった?』
『まだ食べてないです~~~』
さすが若者。短文だと早い、秒で返事が返ってきた。
まるで打った後に返事がきてすぐ送信を押した位早かったが。
昨日の事もあるからモンモンと過ごしていたのかもしれないと思うと、とんかつ位奢ってあげようという気になる。
Mのラインに昼食を外で食べたい旨を送る。
今日担当の護衛役のアルファが迎えに来てくれるまでに、出かける準備をする為にシャワールームに飛び込んだ。

今日はずっと、部屋で過ごすつもりだったのに、まんまと、とんかつを餌に釣られてしまった感が拭えないがが気分が上向いているのに気がついた。
さすが、ムードメーカー佐藤である。

»»»»»»

シャワーから出ると、佐藤は八重垣と一緒に部屋に来ていた。
「昨日メンバーですね。」と、明るく言う佐藤に陰りはないように見えるが、そういった部分が見えないようにしている可能性も捨てきれないので、そのあたりを指摘はしない。

これから行く、とんかつ専門店はホテル内ではなく外のオフィス街の路地の方にあるらしく、一旦外に出ないといけない。きれいなホテル内はそれだけで気持ちいいが、従業員の指導が徹底されていることもあって不躾な視線をよこす人間もいない事も昨日の事を夢だったんじゃないかと思わせた。

3人でエントランスに差し掛かった時だった。
「いい加減にしていただけます!」
聞いたことのある甲高くよく通る女性の声に視線を移すと、ピンクピンクした服装の女性と対峙しているキャリアウーマン風のキリっとした女性がいた。

見知った顔に「あ」っと声が漏れると、八重垣が弥生を隠すように移動した。
「柊さん、先を急ぎましょう。」
にっこり微笑む八重垣に圧されて「ソウデスネ。」と棒読みで返すがあまり距離がなかったこともあり女性はいつの間にか佐藤の正面にまで迫っていた。
「気がついていて声をかけないのは失礼じゃなくて!」
通る甲高い声に圧倒的な存在感。
自慢の美脚を惜しみなくさらすその女性。
以前、もらい事故で顔に傷がついたときにお世話になった美容外科クリニックの女性医師、砂紋さもん麗華れいかが立ち塞がっていた。

後ろの方でなんだか声が聞こえるが砂紋は「さぁ、いきますわよ!」といって歩き出す。
トラブルに巻き込まれる臭いがプンプンするが、ここで逆らえば後々面倒なことになりかねないので弥生は二人を促し砂紋について行くことにした。

砂紋が入ったのは予約必須のホテル内の日本料理店だった。
親族の系列らしく通常の個室ではないだろう豪華な部屋に通される。
ゴテゴテしているのではないけれど、豪華という言葉がぴったりと来る内装に圧倒されていると、「砂紋家専用の部屋ですの。」と、誇らしげだった。
メニューなし、注文はなし。
椅子に座ると自動的に飲み物が運ばれて来る、セレブなお店は毎回驚かされる。
「俺のとんかつ……。」と呟いた佐藤には気の毒だがとんかつはお預けである。
「それで、あなたはまたお見合いですの?いいえ、愚問でしたわね、あなたがこんな所にいることがそうでありますのに。」
「はは、まぁ、その通りです。」
ふと、弥生の後ろにぴったりと張り付く八重垣に目をやると不快そうに眉間にしわを寄せる。
「そんな所に立っていられるとうっとうしいですわ。」
「これが仕事ですから。」
「はっ、この部屋であなたのお仕事とやらが必要になるとでも?」
「何事もイレギュラーがありまして。」
視線で火花を散らす二人をよそに佐藤はそっと弥生に耳打ちする。
「知り合いなんですか?」
「事故で残った傷跡を消して貰った美容外科のお医者さんなんだ、口調の割にすごく思いやりがあって優しい人だよ。」
佐藤は疑わしいと顔に出しながら「ヤサシインデスネ。」と片言で言った。小さく話していたつもりだったが聞こえていたのかゴホンと咳払いが聞こえたので砂紋を見るとほんのり赤くなっている。
口調と態度で勘違いされやすい事で貶される事が多いらしい砂紋は、褒められて照れているようだった。

「えっと、ご紹介させて貰いますね、俺の横の彼は佐藤君、専属のマッチング担当者で、こちらの彼はMからボディガードとしてきてくれている八重垣さんです。佐藤君、八重垣さんこちら以前お世話になったクリニックの砂紋麗華さんです。」
八重垣は軽く頭を下げ、佐藤は「テーブルを挟んで失礼いたします。」と、名刺を砂紋に差し出し砂紋も自分の名刺を差し出した。
紹介が終わってほっとしてお茶を飲む。

「でも、今日は珍しい所でお会いしましたね。」
「そうですわね、あの女に絡まれなければお互い気が付かなかったでしょうし。」
「そう言えばあのピンクの人よかったんですか?」
「ふっふふ、あなたピンクって」
他に形容の仕様がなく目に痛いピンクの装いが的を射ていたらしい。
今後、あの女性はピンクで統一される事になる。
「んんっ、で、あなたはいつお見合いですの?」
弥生は言っていいものか佐藤を見ると弥生の代わりに答えてくれた。
「今回はマッチング事態がなくなりました。」
「あら、そんな事ありますの?」
”国主導=断れない”というのは無意識に皆思うことらしい。
医者という職業柄なのか話を引き出す事が上手く、弥生から色々聞き出し国主導とお見合いの実態を知って随分怒ってくれた。

「はい、今回は向こうの要望も納得いかない部分がありましたし、あちらも会う気がないようでしたのでキャンセルとなりました。」
「まぁ、大変でしたのね。でも、お見合いがキャンセルになる程の要望ってどんなものでしたの?」
ここからは独り言ですが、と前置きして相手の書いていたPR部分のみだが、一言一句正確に復唱する。
聞いていくうちに表情がなくなり聞き終わると一拍おいて紅茶を一口飲みそっとカップを置き、しんと静まっていた部屋に突然バンッと大きな音が響いた。
「なんですの、その男は」
いつもの甲高い声ではなく地を這うような声が砂紋の声と認識するのに間が開いた。
「あなた、そんな男と会う予定でしたの?」
「まぁ。」
曖昧に答えるとチッと舌打ちされた。
怖い。
「そこのスーツ」
この部屋には2人(佐藤と八重垣)います。とは恐ろしくて言えないので、心のなかで佐藤にエールを送ることにする。
佐藤はせっかくよかった顔色がすでに青ざめ、自分に向けられた視線にそっと目をそらせた。
ちなみに八重垣さんは顔色1つ変えてない。

目を合わせない様にしている佐藤のとなりにくると、テーブルに手を付き覗き込む様にして問いかける。
「誰ですの?」
「え~と。」
「おっしゃい」
「守秘義務がですね、ありましてですね。」
あまりの迫力に押されながらも、公務員の意地なのかアルファの気質なのか簡単には屈しない。
が、弥生はハラハラしっぱなしですぐにでも言ってしまいそうになっていたのだが、佐藤が胸ぐらを掴まれ口が滑った。

「西園寺蒼紫」

砂紋はぱっと掴んでいた胸ぐらを離し「西園寺?」と聞き返した。
弥生はコクコクと頷く。
「あのヘタレの事ですの?」
ヘタレ?と疑問符が飛ぶ。
おそらくそれは佐藤も同じだった。
八重垣は変わらずなのでわからないが。

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