縁結びオメガと不遇のアルファ

くま

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17.見合い?

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「今日は見合いじゃなかったか?」
「そうだね、蒼紫氏と弥生のマッチングのはずなんだが。」
そこにはどう見ても親との顔合わせで席が組まれたようになっていた。
弥生の隣には蒼紫、その正面には両親、その後ろには、蒼紫氏の秘書が控えていた。

「それに、カフェでするような事でもないね。」
焦る気持ちはわからないでもないが、これはちょっと板垣が見てもあり得ないと思う。
「そうか?」
「おや、ダーリンは不思議に思わないのかい?」
「外で、その呼び方はやめてくれ……、過去の社長を見ているようですよ。」
「他人行儀な呼び方は好きじゃないんだが……、そうか、確かに私も必死だったな。」

何せ、しのぶはモテていた、高学歴に加え、高い鼻梁に引き締まった口元、体つきも程よく鍛えられた肉体は余計なものがいっさいなく、野性味を感じさせつつ品性も損なわれていない。
立っているだけでも虫が寄ってくるというのに、嫌みのないリーダーシップを発揮するものだから最初は煙たがっていた人間でさえ虜になってしまう。

そんなだから、仁に彼女のいない時期はなかったと思う。
本人にそれを言うとそんなことはないと否定するが、敵は女だけじゃなかった。
なんと、男さえ仁に惚れるのだ。

オメガかと思うほどの美貌を持ったベータの男と関係を持っていたことだって掴んでいるが、仁には言わない。
過去は過去、今現在妻の座を射止めたのは誰でもない自分自身なのだから。

蒼紫の両親を前にガチガチになっている弥生には悪いが、アルファの鬱陶しすぎる愛の深さを実感するいい機会だと思う。
板垣は心の中でエールを送りながら、周辺の警戒を続けた。



弥生は、初めての経験でどうしていいかわからず固まっていた。
通常、マッチングは担当者とセットで席に座り、お互いの担当者からの紹介から始まる。
が、今弥生の横にいるのは佐藤ではなく、蒼紫で正面にいるのは蒼紫の両親だった。

ちなみに担当者である佐藤は弥生に近いサイドに、蒼紫側の担当者の飛口は蒼紫側に控えていた。
本人の紹介は通常通り担当者が行ったが、他は予想していなくて弥生は恐縮し、質問に答えるのが精いっぱいという状況になっている。

「弥生ちゃんっていうのね!会えてうれしいわぁ」
満面の笑顔で話してくれる着物姿の夫人は下手をしたら弥生と同じくらいか少し年上程度に見える。
紹介の時に名前で呼んでいいか確認されたので了承したらすぐに名前で呼ばれ始めた。
社交辞令とばかり思っていたこともあって面食らってしまった。

「ありがとうございます。」
「蒼紫ったらいつも周りに流されるばかりで、それが、自分から初めて一緒になりたい人がいるって聞いた時には本当にうれしくて。」
そこは、お付き合いしたいじゃなくて?
「そ、そうなんですね。」
「そうなの、この間このホテルに来てからというもの、何事にも積極的になっちゃって。」
ホテルに来たというのは弥生と中庭であった日のことを言っているのだと気づき、顔がこわばる。
「母さん。」
「あら、ごめんなさい。弥生さんの事情は蒼紫から聞いているの、あなたを責めるつもりは一切ないのよ」
「は、あのすみません。」
どう答えていいのか分からずつい謝ってしまう。
それに丁寧語くらいなら出来るが伝統ある西園寺ともなったら敬語で話さないといけないんじゃないだろうか。

セレブな人と話をする機会なんて一般人の弥生にはない。
マッチングの相手はこちらの事情を納得のうえでお見合いに挑むので、敬語ができていなくても気にも留めないが、両親を連れてきたのは過去を振り返っても一人もいなかった。

そのままの弥生の言葉で話をして失礼に当たらないのかなどまったくわからない。
しかし、恐縮してうまく話せない弥生を気づかってくれたのは蒼紫の父だった。
「弥生さん申し訳ない、話しづらいのでしょう、気にせずご自分の言葉でかまいません、我々も場違いだということは重々承知しています。家族にもなるのだし言葉遣いを指摘するようなことはありませんよ。」
え?家族になるの?という違和感はこの際スルーすることにする。
「はい、その、ありがとうございます。」
なんだか、話が飛びすぎているような感じがする。
このマッチングが蒼紫の運命の人と出会うためのもの(弥生がそう思ってるだけ)なのに、この先蒼紫に運命の人が現れたらどうするのだろうか?
この優しい人たちから”お前じゃなかった”といわれたら、ほんと立ち直れる気がしない。
その後も、弥生の好きなものから始まり、近況など質問攻めにあっていると、佐藤が区切りをつけてくれた。
「あ~いろいろお話があるとは思いますが、そろそろお二人で庭の散策などはいかがでしょう?」
「そうだな、蒼紫、私たちはそろそろお暇しよう。」
「はい。」
二人が立ち上がったタイミングで弥生も立ち上がり「あの、今日は忙しい中時間をとっていただいてありがとうございました。」と、頭を下げる。

弥生としては、西園寺を担っている二人が突然だろうこの場に都合をつけてくれたことにお礼を言っただけなんだが、いきなり夫人に手を取られた。
その表情はさっきまでの笑顔ではなくとても真剣な顔つきだった。
「弥生さん、私たちはあなたの迎え入れる準備を進めているの。」
「あ、ありがとうございます。」
「こんなことを言われて驚くと思うけど、本当に本当に家族になるのを楽しみにしているの、だから、蒼紫のことよろしくお願いね。」
「はい、その…こちらこそよろしくお願いします。」
次の瞬間にははじけるような笑顔に戻った夫人「ふふ、楽しみだわぁ。」と旦那さんと一緒に帰っていった。

「さぁ、弥生さん場所を移動しましょう。」
いつものように弥生に触れようとした佐藤は突然消えた弥生に驚く。
弥生は蒼紫の胸のなかに引き寄せられていた。
顔を引き攣らせる佐藤に構うことなく「じゃあ、いきましょう。」と弥生をエスコートし始めた。
移動に合わせて佐藤の近くにきた板垣がポンと佐藤の肩に手を置いた。

先を行く弥生達を後からついていく5人、佐藤、板垣夫妻、飛口はそれぞれまったく違う様相をしていた。板垣夫妻については護衛として周囲を警戒しつつ、それでもどこか楽しそうに、飛口に至ってはおどおどとしてついて行っている。

カフェにいる時とまったく違う様子なのは佐藤だった。
弥生の姿がなくなった所で一気に雰囲気が硬質化した。
板垣夫妻以上の警戒心を持ち、表情は硬くピリピリしている。
「番犬君、もう少しオブラートに包んだほうがいいんじゃないか?」
「何がです。」
「ご同胞が怯えきっているようだが?」
「ああ、大丈夫だな。」
ギロリと睨みつけられた飛口は無言でうなずく。
「怖いね、何に警戒しているのか我々と共有する気はないのかい?」
「………もう少し時間を下さい。」
「ほお?」
「今回の事で方針が固まります。その時お話する事になるでしょう。」
「それは楽しみだ。」

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