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19.店
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店の前に着くと運転手より早くドアを開け、弥生を車からすこし離れた場所に連れて行くと、佐藤は車内で見せた雰囲気とはガラッと変わっていた。
「弥生さーん、なにしてんですか!?」
「何って何が?」
まだ熱い顔をパタパタと手で扇ぎながらなんとか赤い顔を元に戻そうと頑張る。
「中庭と車の中で会う約束を2つもしてますよ!気が付いてます!?」
佐藤に指摘されて考えてみるが、そんな約束をした記憶がない。
「してないと思うけど?」
「してるんです、中庭でカレーパンのお店に行く約束と普段着見せるって約束してたじゃないですか!」
え~、それは会う約束って言えば約束だけど、いけたらいいなくらいの、スルーされる口約束程度だよな。
佐藤の慌てる意味がわからない。
首をひねる。
「あのねぇ、いいですか?簡単に説明すると2つとも約束として生きてます。
どちらも時期を確定させてないので行くと言って会う約束を取り付けられたら、弥生さん、断れますか?」
「………無理かも。」
「でしょう!?パン屋は次会う約束を取り付けて、行かない様にすればまた次の約束として使えます。”いけなかったから今度こそどうですか”って具合に。」
「えっ?そんな姑息なことは。」
「するんです。」
真剣な佐藤に黙る。
「服なんて最悪ですよ。弥生さん持ってきてる服見せればいいとか思ってません?」
「まぁ、話の流れであって本気じゃないと思うけど、見せたとしても普通そうかな。」
「甘いですね。西園寺の中では弥生さんの家まで行く事になってますよ。」
「まさかぁ」
「そのまさかです。一応向こうにはデート期間今日を含めて3日と伝えてありますが、その3日目もしくは存在しない4日目を作る為に利用します。」
「?、そんな事流石にできないよね。」
「3日目に服見たいと言われて了承するとします。その足で空港、実家の順で家族に結婚報告が完了するか、それが4日目にずれ込むかの差です。」
「そんな事は」
ない、と言おうとしたが、あまりに真剣な佐藤に何も言えない。
「いいですか弥生さん、向こうは交渉のプロです。自分たちの有利になる様に誘導し答えを”自分の意思”で出したと思わせる事も出来てしまうんです。」
「どうすればいいの!?」
「はっきり断って下さい、どこかいきたい、いこうと言う会話はNGです。いいですね!」
「わ、わかった」
いや出来る気がしないけど。
「弥生さん。」
「はい!」
振り返ると蒼紫がにこにこして近くまでやって来ていた。
「少し気になったんですが」
「なんでしょう?」
「佐藤さんはいつも名前で呼ばれているんですか?」
「ええ、まぁ。」
「担当者ですから当たり前です。」
即答した佐藤に対して「おかしいですね。」と蒼紫は首をひねる。
「飛口さんは私の事を西園寺としか呼びませんが、ねぇ飛口さん。」
「ははは、はい!」
「佐藤さんのように名前呼びでいいんですよ?」
飛口は既に倒れそうなくらい真っ青だ。
ぶんぶんと首が取れそうな程振る飛口に佐藤は追い打ちを掛ける。
「そうですね、飛口さんも西園寺さんと友好を深めるべきだと思いますよ、心を通わせてこそよりよいマッチングができますから。」
にこにこしているが、不敵な笑みだ。
「で、」
「「「で?」」」
「できません~。」
蒼紫は望む答えが出て満足そうに「そうですね。」と佐藤をみる。
「適切な距離感こそ客観的に見る事ができるというものですしね。佐藤さんも見習われては?」
「都会の方は親身にならないと言うのは本当なんですね。こちらにはこちらのやり方がありますから。」
「おや、役場では”柊さん”と呼ぶ様にと再三注意されていると聞きましたが。」
「………覚えがないですね。」
「飯塚さんとおっしゃられる方に注意を受けていたのになおさないと聞きましたが。」
「チッ」
「あ、あの佐藤君は友達でもあるので!」
弥生が仲裁にはいると蒼紫は悲しそうな表情になる。
「弥生さん、そう言えと言われてますか?」
「いえいえいえいえ!本当に家族ぐるみのお付き合いなんです!」
「そうであっても、公私混同は避けたほうが佐藤さんの為では?」
正論。
誰だろう、この人をヘタレって言ってたのって。
いや、ここに女性は板垣さんしかいないからその点では強く出れるのか?
佐藤の方を見ると顔を引きつらせていた。
いや、どうすればいいの?これ。
「悪いんだけど、営業妨害になってるの気がついてる?」
弥生がどうしていいか困っていると天の声が店の出入り口に立っていた。
青い髪に耳にはたくさんのピアス、身長は蒼紫と同じくらいで8.5等身、小顔に二重まぶたにすっととがった顎、細身でまるでモデルのような人だった。
「ああ、悪いサイガ。」
はぁと溜息をこぼすと「とりあえず、中に入ったら?」と先に中に入っていった。
「さあ弥生さん、行きましょう。」
腰に手を回されて誘導されて店内に入る。
店の中は白と黒を基調にしたシックな内装で、数人の店員が担当の客について接客していた。
あまりに場違い感が酷くつい服を掴んでしまった。
添えられた手に、はっと掴んだ手を離す。
しかし、蒼紫は嬉しそうに引っ込められた手をとるとギュッと握った。
「こっち来て。」
案内された部屋には、入って左手に全面鏡張りの壁に美容院で見る椅子や小物の乗ったカートが置かれていて、右手は服が並び、棚にはバッグやアクセサリー等が置かれていた。
一人綺麗な女性がいてその側にある椅子に誘導される。
「弥生さん、ご紹介しますね。彼女は美容師の早乙女さんです。あなたと同じオメガなので安心して下さい。」
オメガという言葉に納得する。
ここまで、弥生を特別扱いしてくれたが、ちゃんとお相手がいたらしい。
わかっていたはずなのに、どうして勘違いしてしまったのだろう、恥ずかしすぎる。
少し顔に出てしまったのか「どうしました?」と問われてどう答えていいか迷う。
今まではお目当ての相手がわかっても弥生には内緒でアプローチしてきた人達ばかりだった。
どうやら、蒼紫はそういった行動に慣れていないらしい。
「いえ、えーと美容師さんなんですね。」
「はい、今日はよろしくお願いします。」
「こちらこそよろしくお願いします。」
と頭を下げると頭上から「これ俺の嫁だから。」と声がした。
早乙女の横にサイガが不機嫌そうに立っていた。
「えっと」
「なんか勘違いしてそうだったから。」
「はぁ。」
「蒼紫の相手あんたなんだろ、不安そうな顔してんなよ。」
「不安そうでした?」
「そんな顔して何言ってんの?」
「弥生さん、すみません、何か不安になるような事がありましたか?」
不安、不安か……不安と言うより辛かったけど、元から縁結びが目的だから、俺が不安になろうと、辛くなろうとこの人には本来関係ないんだよなぁ。
「お前それ本気で言ってる?突然前置きもなしでオメガを紹介されて動揺しないパートナーがいるのかよ。」
「え? す、すみません、弥生さん、彼女はサイガの奥方で2人で有名なものですからいつも紹介しない事が多くて、本当にすみません!」
「いえ本当に気にしないでください。ほら、まだお付き合いまでいってもいないですし、ね?」
本当の事を告げると何故か蒼紫は絶句していた。
「はぁ?付き合ってないって?」
「ああ、はい、今日お見合いでしてまだお付き合いまではしてないですね。」
「蒼紫お前何やってんの?」
固まってしまった蒼紫がサイガの質問に答える事は出来なかった。
役に立たない蒼紫をほうっておいてサイガは後はよろしくと早乙女に託し、蒼紫を引っ張って部屋を出ていった。
「弥生、これを。」
板垣が持ってきてくれたのは抑制剤だった。
症状は出ていないが、用心に越したことはない。
「ありがとうございます。板垣さん。」
「いや、疲れてないかい?」
「大丈夫です、なんだか今日は驚きの連続で戸惑ってはいますけど。」
「そうか、辛くなったらすぐに言うんだよ。」
「はい。」
こちらの用事が終わったことを確認した早乙女がケープを掛けて、髪に触れて髪質を確かめていく。
「今日はよろしくお願いします。………少しパーマかかってます?」
「ほんの少しウェーブする癖があって、パーマ自体はかけたことはないんです。」
ストレートに近いくらいのウェーブがあるが今まで聞かれた事がないのでこの答えで合ってるか分からないが、早乙女はにこにこと髪をいじっているのでよかったんだろう。
「なるほど、こんな感じがいいとか何か希望はありますか?」
少し考えたが、こんな感じと指定できるほどの知識がなかった。
「ん~、あんまりよくわからなくて、仕事に支障がなければいいのでお任せしてもいいですか?」
「わかりました、しゃあ、始めますね。」
「はい、よろしくお願いします。」
弥生は静に目を瞑った。
「弥生さーん、なにしてんですか!?」
「何って何が?」
まだ熱い顔をパタパタと手で扇ぎながらなんとか赤い顔を元に戻そうと頑張る。
「中庭と車の中で会う約束を2つもしてますよ!気が付いてます!?」
佐藤に指摘されて考えてみるが、そんな約束をした記憶がない。
「してないと思うけど?」
「してるんです、中庭でカレーパンのお店に行く約束と普段着見せるって約束してたじゃないですか!」
え~、それは会う約束って言えば約束だけど、いけたらいいなくらいの、スルーされる口約束程度だよな。
佐藤の慌てる意味がわからない。
首をひねる。
「あのねぇ、いいですか?簡単に説明すると2つとも約束として生きてます。
どちらも時期を確定させてないので行くと言って会う約束を取り付けられたら、弥生さん、断れますか?」
「………無理かも。」
「でしょう!?パン屋は次会う約束を取り付けて、行かない様にすればまた次の約束として使えます。”いけなかったから今度こそどうですか”って具合に。」
「えっ?そんな姑息なことは。」
「するんです。」
真剣な佐藤に黙る。
「服なんて最悪ですよ。弥生さん持ってきてる服見せればいいとか思ってません?」
「まぁ、話の流れであって本気じゃないと思うけど、見せたとしても普通そうかな。」
「甘いですね。西園寺の中では弥生さんの家まで行く事になってますよ。」
「まさかぁ」
「そのまさかです。一応向こうにはデート期間今日を含めて3日と伝えてありますが、その3日目もしくは存在しない4日目を作る為に利用します。」
「?、そんな事流石にできないよね。」
「3日目に服見たいと言われて了承するとします。その足で空港、実家の順で家族に結婚報告が完了するか、それが4日目にずれ込むかの差です。」
「そんな事は」
ない、と言おうとしたが、あまりに真剣な佐藤に何も言えない。
「いいですか弥生さん、向こうは交渉のプロです。自分たちの有利になる様に誘導し答えを”自分の意思”で出したと思わせる事も出来てしまうんです。」
「どうすればいいの!?」
「はっきり断って下さい、どこかいきたい、いこうと言う会話はNGです。いいですね!」
「わ、わかった」
いや出来る気がしないけど。
「弥生さん。」
「はい!」
振り返ると蒼紫がにこにこして近くまでやって来ていた。
「少し気になったんですが」
「なんでしょう?」
「佐藤さんはいつも名前で呼ばれているんですか?」
「ええ、まぁ。」
「担当者ですから当たり前です。」
即答した佐藤に対して「おかしいですね。」と蒼紫は首をひねる。
「飛口さんは私の事を西園寺としか呼びませんが、ねぇ飛口さん。」
「ははは、はい!」
「佐藤さんのように名前呼びでいいんですよ?」
飛口は既に倒れそうなくらい真っ青だ。
ぶんぶんと首が取れそうな程振る飛口に佐藤は追い打ちを掛ける。
「そうですね、飛口さんも西園寺さんと友好を深めるべきだと思いますよ、心を通わせてこそよりよいマッチングができますから。」
にこにこしているが、不敵な笑みだ。
「で、」
「「「で?」」」
「できません~。」
蒼紫は望む答えが出て満足そうに「そうですね。」と佐藤をみる。
「適切な距離感こそ客観的に見る事ができるというものですしね。佐藤さんも見習われては?」
「都会の方は親身にならないと言うのは本当なんですね。こちらにはこちらのやり方がありますから。」
「おや、役場では”柊さん”と呼ぶ様にと再三注意されていると聞きましたが。」
「………覚えがないですね。」
「飯塚さんとおっしゃられる方に注意を受けていたのになおさないと聞きましたが。」
「チッ」
「あ、あの佐藤君は友達でもあるので!」
弥生が仲裁にはいると蒼紫は悲しそうな表情になる。
「弥生さん、そう言えと言われてますか?」
「いえいえいえいえ!本当に家族ぐるみのお付き合いなんです!」
「そうであっても、公私混同は避けたほうが佐藤さんの為では?」
正論。
誰だろう、この人をヘタレって言ってたのって。
いや、ここに女性は板垣さんしかいないからその点では強く出れるのか?
佐藤の方を見ると顔を引きつらせていた。
いや、どうすればいいの?これ。
「悪いんだけど、営業妨害になってるの気がついてる?」
弥生がどうしていいか困っていると天の声が店の出入り口に立っていた。
青い髪に耳にはたくさんのピアス、身長は蒼紫と同じくらいで8.5等身、小顔に二重まぶたにすっととがった顎、細身でまるでモデルのような人だった。
「ああ、悪いサイガ。」
はぁと溜息をこぼすと「とりあえず、中に入ったら?」と先に中に入っていった。
「さあ弥生さん、行きましょう。」
腰に手を回されて誘導されて店内に入る。
店の中は白と黒を基調にしたシックな内装で、数人の店員が担当の客について接客していた。
あまりに場違い感が酷くつい服を掴んでしまった。
添えられた手に、はっと掴んだ手を離す。
しかし、蒼紫は嬉しそうに引っ込められた手をとるとギュッと握った。
「こっち来て。」
案内された部屋には、入って左手に全面鏡張りの壁に美容院で見る椅子や小物の乗ったカートが置かれていて、右手は服が並び、棚にはバッグやアクセサリー等が置かれていた。
一人綺麗な女性がいてその側にある椅子に誘導される。
「弥生さん、ご紹介しますね。彼女は美容師の早乙女さんです。あなたと同じオメガなので安心して下さい。」
オメガという言葉に納得する。
ここまで、弥生を特別扱いしてくれたが、ちゃんとお相手がいたらしい。
わかっていたはずなのに、どうして勘違いしてしまったのだろう、恥ずかしすぎる。
少し顔に出てしまったのか「どうしました?」と問われてどう答えていいか迷う。
今まではお目当ての相手がわかっても弥生には内緒でアプローチしてきた人達ばかりだった。
どうやら、蒼紫はそういった行動に慣れていないらしい。
「いえ、えーと美容師さんなんですね。」
「はい、今日はよろしくお願いします。」
「こちらこそよろしくお願いします。」
と頭を下げると頭上から「これ俺の嫁だから。」と声がした。
早乙女の横にサイガが不機嫌そうに立っていた。
「えっと」
「なんか勘違いしてそうだったから。」
「はぁ。」
「蒼紫の相手あんたなんだろ、不安そうな顔してんなよ。」
「不安そうでした?」
「そんな顔して何言ってんの?」
「弥生さん、すみません、何か不安になるような事がありましたか?」
不安、不安か……不安と言うより辛かったけど、元から縁結びが目的だから、俺が不安になろうと、辛くなろうとこの人には本来関係ないんだよなぁ。
「お前それ本気で言ってる?突然前置きもなしでオメガを紹介されて動揺しないパートナーがいるのかよ。」
「え? す、すみません、弥生さん、彼女はサイガの奥方で2人で有名なものですからいつも紹介しない事が多くて、本当にすみません!」
「いえ本当に気にしないでください。ほら、まだお付き合いまでいってもいないですし、ね?」
本当の事を告げると何故か蒼紫は絶句していた。
「はぁ?付き合ってないって?」
「ああ、はい、今日お見合いでしてまだお付き合いまではしてないですね。」
「蒼紫お前何やってんの?」
固まってしまった蒼紫がサイガの質問に答える事は出来なかった。
役に立たない蒼紫をほうっておいてサイガは後はよろしくと早乙女に託し、蒼紫を引っ張って部屋を出ていった。
「弥生、これを。」
板垣が持ってきてくれたのは抑制剤だった。
症状は出ていないが、用心に越したことはない。
「ありがとうございます。板垣さん。」
「いや、疲れてないかい?」
「大丈夫です、なんだか今日は驚きの連続で戸惑ってはいますけど。」
「そうか、辛くなったらすぐに言うんだよ。」
「はい。」
こちらの用事が終わったことを確認した早乙女がケープを掛けて、髪に触れて髪質を確かめていく。
「今日はよろしくお願いします。………少しパーマかかってます?」
「ほんの少しウェーブする癖があって、パーマ自体はかけたことはないんです。」
ストレートに近いくらいのウェーブがあるが今まで聞かれた事がないのでこの答えで合ってるか分からないが、早乙女はにこにこと髪をいじっているのでよかったんだろう。
「なるほど、こんな感じがいいとか何か希望はありますか?」
少し考えたが、こんな感じと指定できるほどの知識がなかった。
「ん~、あんまりよくわからなくて、仕事に支障がなければいいのでお任せしてもいいですか?」
「わかりました、しゃあ、始めますね。」
「はい、よろしくお願いします。」
弥生は静に目を瞑った。
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