縁結びオメガと不遇のアルファ

くま

文字の大きさ
25 / 87

21.交際申し込み

しおりを挟む
蒼紫とサイガが部屋に入るとそこにはきたときとはガラリと変わった弥生がいた。

肩まであった髪はショートに切り揃えられ毛先を遊ばせて柔らかい雰囲気にかわり、装いもカジュアルでいて気負わないものへと変えた事で、冷たく見られがちな弥生の印象をやさしく変えていた。

蒼紫は弥生の前にひざまずくと手を取り
「弥生さん。私とけっこ」
結婚を言い終わる前にスパーンとスリッパならぬサイガの靴が蒼紫の頭に炸裂した。
サイガに首根っこを引っ掴んでひっぱられていき、なにやらこそこそと話をした後戻ってきた蒼紫は、今度は立ったまま弥生の手を取り、真剣なまなざしで「弥生さん」と名前を呼んだ。

弥生は覚悟を決め蒼紫を見返す。
とうとう、”お祈り”されるのかなと思っていた弥生次に続いた言葉に思考が停止した。
「私と恋人として、結婚を前提に、お付き合いしていただけませんか?」
「え?」
区切って強調された言葉があまりに都合がよすぎて信じられず
しばらくの沈黙の後、「お付き合い?」と小さく呟いた声を蒼紫は聞き逃してはくれない。

「そうです。私としたことがあなたに気持ちをお伝えすることなく話を先に進めてしまって、これでは戸惑ってしまうのは当然でした。気持ちは言葉にしないと伝わらないと言うことをここまで実感したのは初めてです。」
「………。」
「本当はこのまま式まで挙げてしまいたい位ですが、弥生さんの気持ちがついて行かないかもしれないと思いとどまりました。」
「えっと……、式ですか?」
「はい、結婚式です。」
すみません、今日一番理解できないかもしれない。
出会いのためのマッチングだって知らないんだろうか?
俺とじゃない別の誰かが彼の隣に立つ事になるのに。
まだ、出会ってないから理解出来ていない可能性もあるかも?

「さすがに、早いかも?」
「そうですね、ですからお付き合いから、からはじめていければと思います。」
「えっと、ですね。」
「はい!」
いい返事がもらえる前提なのだろうが、輝くような笑顔にくじけそうになるが、これだけははっきり伝えておかないと佐藤の言っていたように、両親に挨拶までいってしまう。。

「今日を含めた3日間はお互いを知る期間と言うことでどうでしょう?」
固まって何も言えなくなった事をいいことに一気にたたみかける。
「その後一定期間、間を空けてそれでもお付き合いしたいと言うことであればそのときに考えるというのはどうでしょう?」
そっと扉近くにいる佐藤を見ると、親指を立ててうなずいていた。
正解したらしい答えに満足していると、握られていた手がぐっとさらに力を入れられて握られた。

「駄目ですか?私ではいけませんか?弥生さんの嫌がることはしないと約束します。」
「ああ~そのですね、実はこんな状態になることが今までなくてですね。」
「はい!私がはじめてなんですね!嬉しいです。」
「気持ちがついていかないというか。」
「大丈夫です!気持ちは後からゆっくり追いついてきますから、先にいろいろ決めてしまいましょう。」
と言いきったところで蒼紫はまたサイガに首根っこを捕まれて連れて行かれてしまった。

逆に弥生の所には佐藤がきて「ナイスです。弥生さん。」と褒めてくれた。
「佐藤君、西園寺さん今回のマッチングの意味知ってる?」
あまりに先走っている蒼紫に疑問しかない弥生が改めて聞く
「もちろんですよ、散々説明して同意書にもサインしたのにまるっと無視ですよ、あの男。」
「彼の周りにいた恋愛対象者って婚約結んでた人達だけだったりする?」
「まさか、身辺調査の結果かなりの候補者がいます。今までは婚約者がいたこともあってアピールできなかったお姉様方だけじゃなく、公表してませんが男性のオメガも近くにいるという事がわかってますから。」
それにしては、蒼紫の目には弥生しか映っていないような気がするのは気のせいだろうか

「自分の運命にあって舞い上がってるんですよ、まったく。」
「そう、なの?」
「あれ、気付きませんでした?」
「ごめん、ここに来るまでにいた?」
胸に鋭い痛みが走って無意識に胸に手を当てていた、板垣に運命だと言われてその気になっていたのだと思い知る。
しかし、ここにくるまでに会っていたなんてまったく気付かなかった。
佐藤は顔を曇らせる
「あなたですよ、弥生さん。」
「何言ってるの?」
「西園寺蒼紫の運命はあなたです。」
おかしい、見合い前失恋の話に佐藤は乗かって来ていたはずだ。

弥生自身も彼に寄せる思いは、自分自身を見て優しくしてくれたことに対する勝手な恋慕だと押し付けてはいけないと自制していた。

「弥生さん、彼の運命はあなたなんですよ。」
なのにここではっきり佐藤は断言する。

もう一度言われた言葉を咀嚼し、理解と同時にきたのは恐怖だった。
「そんなことは。」
確かに板垣さんが言っていた。でも、
「俺からは言えないですよ、あなたに期待してる”縁結び”を邪魔する可能性があるんですから。」
そうだ、もし蒼紫と恋人になる事で他のアルファの縁結びが出来なくなったら。
「彼はどうなる?」
「今のところどうともなりません、あなた次第です。」
「……どうして今教えてくれたの?」

「黙っていて彼がこちらの予定通りに進めてくれれば問題なかったんですが、それも期待できそうになかったので教えておこうと思っただけです。」
「どうしたら」
「どうもしなくていいです。あなたと彼が出会ってしまった、既にあなたが彼に惹かれているのはどうしようもない事実です。」
指摘された本当の事にぎくりと体が強ばる。
「そのうえで、縁結びの効果が出ればいい方向に向かうでしょうね。」
「ほんとに?」
「いいですか、弥生さん我々を信じちゃいけない。頼る所を間違えないでください。」
まるで、突き放すような事をいう佐藤はこの上なくつらそうだった。
だからこそ、余計にこれ以上蒼紫にのめり込んではいけないと強く思う。

誰かを不幸にしてまで縁結びして幸せになるんだろうか?
経験した事がないからこそ、分からず、
酷く不安だった。



弥生から離れて元いた場所に帰ると板垣がじっと佐藤を見ていた。
「番犬君、君馬に蹴られるどころか牛にも押しつぶされて死んでしまうんじゃないか?」
「うるさいですよ、板垣さん。」
「まったく弥生に何の恨みがあるのやら」
「恨みなんてないですよ。」
佐藤は板垣のポケットに1枚の紙を忍ばせ、1つため息をはく。
「あの男のせいでこっちもバタバタですよ。」
板垣は面白そうに佐藤を見て「それは大変そうだ。」とにんまり笑った。
しおりを挟む
感想 22

あなたにおすすめの小説

塩対応の同室αが実は俺の番を狙っていた

雪兎
BL
あらすじ 全寮制の名門学園に入学したΩの俺は、入寮初日から最悪の同室相手に当たった。 相手は学年でも有名な優等生α。 成績優秀、運動もできる、顔もいい。なのに—— めちゃくちゃ塩対応。 挨拶しても「……ああ」。 話しかけても「別に」。 距離も近づけないし、なぜか妙に警戒されている気がする。 (俺、そんなに嫌われてる……?) 同室なのに会話は最低限。 むしろ避けられている気さえある。 けれどある日、発情期トラブルで倒れた俺を助けてくれたのは、 その塩対応αだった。 しかも普段とは違い、必死な顔で言われる。 「……他のαに近づくな」 「お前は俺の……」 そこで言葉を飲み込む彼。 それ以来、少しずつ態度が変わり始める。 距離は相変わらず近くない。 口数も少ない。 だけど―― 他のαが近づくと、さりげなく間に入る。 発情期が近いと察すると、さりげなく世話を焼く。 そして時々、独占欲を隠しきれない視線。 実は彼はずっと前から知っていた。 俺が、 自分の運命の番かもしれないΩだということを。 だからこそ距離を取っていた。 触れたら、もう止まれなくなるから。 だけど同室生活の中で、 少しずつ、確実に距離は変わっていく。 塩対応の裏に隠されていたのは―― 重すぎるほどの独占欲だった。

その首輪は、弟の牙でしか外せない。

ゆずまめ鯉
BL
養子ゆえに、王位継承権を持たないオメガで長男のレイン(24)は、国家騎士団として秘密裏に働き、ただ義弟たちを守るためだけに生きてきた。 第一継承権を持つアルファで次男のリオール(19)は、そんな兄に「ごく潰し」と陰口を叩く連中を許せなかった。自分を犠牲にしてまで守る価値はないと思っていた。なにかと怪我の多い国家騎士団を辞めさせたかった。 初めて訪れた発情期のとき。約束をすっぽかされたリオールが不審に思い、兄の部屋へ行くと、国家騎士団の同僚──グウェンソード(28)に押し倒されるところを目撃して激高する。 「今すぐ部屋から出ろ!」 独占欲をあらわにしたリオールは、グウェンソードを部屋から追い出し、兄であるレインを欲望のままに抱いた。 翌朝、差し出されたのは特注の首輪──外せるのはリオールのみ。 「俺以外に触らせるな」 そう囁かれたレインは、何年も首輪と弟の執着に縛られ続けてきた。 弟には婚約者がいるのに、こんな関係を続けてもいいのか。 本当にこのままでもいいのか。 ひたすら執着して独占したがる弟と、罪悪感に苛まれる兄。 その首輪は、いつか弟の牙で血に染まるのか──。 どうにかしてレインを落としたいリオールと、弟との関係に悩むレインのオメガバースです。 リオール・グランケット(19)×レイン・グランケット(24) ※この作品は2015年頃に本文を書き、2017年頃にオメガバースに改稿、さらに2026年に手直しした作品になります。読みにくいかもしれません。ご了承ください。 三人称ですが攻めだったり受けだったり視点がよくかわります。攻め視点多めです。

私だけが愛して1度も笑ったことの無い夫が、死んだはずの息子を連れてもどってきた

まつめ
恋愛
夫はただの一度も私に笑いかけたことは無く、穏やかに夫婦の時間をもったこともない。魔法騎士団の、騎士団長を務める彼は、23年間の結婚生活のほとんどを戦地で過ごしている。22歳の息子の戦死の知らせが届く。けれど夫は元気な息子を連れて私の元に戻って来てくれた。

手の届かない元恋人

深夜
BL
昔、付き合っていた大好きな彼氏に振られた。 元彼は人気若手俳優になっていた。 諦めきれないこの恋がやっと終わると思ってた和弥だったが、仕事上の理由で元彼と会わないといけなくなり....

運命の番は僕に振り向かない

ゆうに
BL
大好きだったアルファの恋人が旅先で運命の番と出会ってしまい、泣く泣く別れた経験があるオメガの千遥。 それ以来、ずっと自分の前にも運命の番があらわれることを切に願っていた。 オメガひとりの生活は苦しく、千遥は仕方なく身体を売って稼ぐことを決心する。 ネットで知り合った相手と待ち合わせ、雑踏の中を歩いている時、千遥は自分の運命の番を見つけた。 ところが視線が確かに合ったのに運命の番は千遥を避けるように去っていく。彼の隣には美しいオメガがいた。 ベータのような平凡な見た目のオメガが主人公です。 ふんわり現代、ふんわりオメガバース、設定がふんわりしてます。

普通のβだった俺は

りん
BL
普通の大学生として過ごす白瀬凪が、αの先輩に絡まれる話 凪は普通の大学生だ。βで、容姿も中身も平均値ぐらいだと認識している。ある日、大学でもよく噂されている先輩に声をかけられる。先輩の独特の雰囲気と空気に、次第に巻き込まれていく凪。 ※オメガバ系で結構ご都合な設定ありかもです!地雷だったらごめんなさい!!

ヒートより厄介な恋をα後輩に教え込まれる

雪兎
BL
大学三年のΩ・篠宮湊は、何事も理屈で考えるタイプ。 ヒート管理も完璧で、恋愛とは距離を置いてきた。 「フェロモンに振り回されるのは非合理的」 そう思っていたのに――。 新学期、同じゼミに入ってきた後輩は、やたら距離の近いα・高瀬蒼。 人懐っこくて優秀、なのに湊にだけ妙に構ってくる。 「先輩って、恋したことないでしょ」 「……必要ないからな」 「じゃあ俺が教えますよ。ヒートより面倒なやつ」 余裕のあるα後輩と、恋に不慣れなΩ先輩。 からかわれているはずなのに、気づけば湊の心は少しずつ乱されていく。 これは、理屈ではどうにもならない “ヒートより厄介な恋”を教え込まれる物語。

元ヤンオメガは平穏に生きたい!〜中華風異世界に転生したら、過保護な最強生徒会長に溺愛されて番にされました〜

水凪しおん
BL
現代日本で喧嘩ばかりしていた不良の青年は、交通事故から子供をかばって命を落とした。 目を覚ますと、そこは中華風の文化が息づく架空の国「龍凰帝国」。 彼は、名門校・天耀学舎に通う華奢なオメガの少年「飛燕」として転生していた。 亡き祖母との「今度こそ真っ当に生きる」という約束を守るため、波風を立てずに平穏な学園生活を送ろうと心に誓う飛燕。 しかし、理不尽な身分制度がはびこる学園で、弱者が虐げられるのを黙って見過ごすことはできなかった。 「オメガだからって、舐めんじゃねえぞ」 我慢の限界を迎え、前世で培った喧嘩の腕と無意識に発現した気の力で、アルファの不良たちをぶっ飛ばしてしまった飛燕。 退学を覚悟するが、その現場を学園の絶対的支配者である生徒会長のアルファ「蒼龍」に見られてしまう。 怒られるかと思いきや、蒼龍は飛燕の強さと真っすぐな瞳に強烈に惹きつけられ、彼を生徒会役員に任命。 そこから、冷酷無比と噂される生徒会長による、異常なまでの激甘・過保護な溺愛生活が始まってしまった! 「お前は俺の宝だ。髪の毛一本すら、誰にも触れさせはしない」 最高級の食事を与えられ、少しの怪我でも大騒ぎされ、休日は密室に閉じ込められて甘やかされる日々。 理不尽な身分制度を壊そうとする最強の生徒会長と、彼に愛されすぎている元不良のオメガ。 喧嘩上等の華奢な少年が、最強の番として絶対君主の隣で幸せを掴む、中華風異世界オメガバース開幕!

処理中です...