縁結びオメガと不遇のアルファ

くま

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22.申し出

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サイガに引っ張られてきた廊下で蒼紫はサイガに不満を口にした。
「何も、変な事は言ってないだろう。」
「いやいや、お前最初はよかったよ、ただ後半の部分だって。」
「後半?」
「”気持ちは”の後からだ。」
蒼紫は不満げに口をとがらせる。
「いまからいろいろ決めたら駄目なのか?」
最初の忠告はそこへやれ、先に進めるのが早いとは思わないらしい。
「勇み足過ぎ!!」
どんだけ切羽詰まってるんだよ!
蒼紫の肩に手を置き、再度心得を説く。
「いいか、さっきから、ずっと言ってるが彼はシャイなんだ焦ってグイグイ進めると引かれるんだよ。」
しかし、さっきはアドバイスに従う素振りを見せていた蒼紫は彼を前に控えめにするのが嫌になったのか、首を横に振った。
「この見合いの期間は今日を含めてたった3日しかないのに。やっぱり悠長にはしていられない。」
「はぁ?見合いの初日は出会いで、あと付き合うのは自由だろう。」
「彼との見合いは違うんだ。」
深刻そうな蒼紫にそれ以上深く追及する事も出来ず肩に置いていた手を下ろす。
「はぁ、なんかよくわからないが今日を入れて3日しかアプローチ出来ないってことでいいか?」
「ああ」

3日目までに彼が蒼紫に気持ちが向く策があればいいが、今日もあと半日で時間も少ない。
それに加えてあまりにも彼の情報がなさすぎて全く思い浮かばない。
どうしたものかと頭を悩ませていると一緒に来ていた男に「失礼。」と声をかけられた。

「あなたは?」
「私は柊さんの護衛を務めている板垣といいます。」
「はぁ」
そういえば、良家の令息なのか彼には護衛が付いていたが、一体なんの用なのか。
「はい、西園寺様にお伝えしたい事がありまして。」
「俺にですか?」
サイガは蒼紫の方をみるが表情が読めない。
「はい。」
「どういったご要件でしょうか?」
板垣の前に進み出た蒼紫は先程とは違って表情が硬かった。
「こちらを」
出されたのは一通の手紙だった。
その場で、中を読み怪訝そうな表情になる。

「応じられるかどうかはお任せします。」
「こういった事はいいんですか?」
Mの規約では弥生に関することで他のMに不必要に接触することは禁止されていたはずだ。
仁をじっと見ていたが何もいうつもりがない様子に深く追及する事なく、蒼紫は「わかりました。」と手紙を懐にしまった。

「ああ、それと」
「?」
「彼は今かなり動揺しています、今後行動に不自然な点が見られる様にになりますが、追及はされない方がいいですよ。」
「俺がいない間に一体何があったんですか?」
「少々、担当者に釘を刺されたようです。」
蒼紫の目が鋭くなる。それを受けてそのまま去るべきだとわかっていても板垣は一言言ってしまった。

「……あなたはご自分が何をなさっているのかわかっていますか?」
「なにとは?」
「担当者から渡された資料を読まれた上での今回の行動ということなら、それによって彼がどんな立場に立たされるのか想像出来たはずですが。」
蒼紫の行動はどう見ても弥生の囲い込みで、弥生を手に入れればもう外に出さない可能性が高いことを示唆している。
こんなマッチングを企画進行している側からしたら大事な商品をかっさらわれるのと同じなのだ。
だからこそ、目を光らせどこかに行ってしまわないように本人に気付かせないように囲い込む。
それを蒼紫は根本に近いところに接触して、決して否が言えないように調整して今回のマッチングをねじ込んだ。
西園寺の会長が任せて大丈夫と手を引いたのも、本気になった蒼紫を見たからだろう。

「私は”お見合い”という定義の元動いていますが。」
「なるほど、どんな理由をつけようと彼の立場を微妙なものへと変えているのは間違いない。」
「私が彼と結ばれることがそんなに不都合ですか?」
「さぁ、我々と、彼らの立ち位置はまったく違うとだけ言わせていただきましょう。」
仁は話すことはもうないとばかりに去っていった

「蒼紫、一体何の事?」
「サイガ、頼みたい事がある。」
「いやいや、今の意味深な会話の内容を教えてくれないとちょっと協力出来ないかも。」
おふざけ程度の拒絶も今は受け流す余裕がないのか、蒼紫は感情の見えない目でサイガを見た。
背筋がぞっとして思わず姿勢を正す。
「彼は、いろいろな方向から搾取の対象にされている。」
サイガが息をのみ「搾取って」と呟く。
「自由も許されず、延々とアルファの相手をさせられているんだ。意味はわかるだろう?」

かつてあったオメガへの搾取。
それは奴隷に等しかった。
オメガ達は逆らうことは許されないのは当然、言葉の自由すら許されなかった。
それが、ほんの5年前民間の保護施設がやっていたのだ。
保護されたオメガ達は国の施設に移され手厚く保護を受けているはず、なのに。
「確か、国主導のマッチングじゃなかったか?」
「そうだ。」
許されるのか、それは
「どうしてそんな事になってるんだ?」
「彼の特殊性故だな。」
「特殊性?」
「そうだ、それゆえに彼の自由は許されていない。」
何が特殊なのかは、オメガという点を考えれば想像がつく。
サイガの妻も施設出身だ。
ボランティアに参加した時に知り合った。

もし、その施設も搾取対象だとしたら?

その事実にぞっとした。
オメガの数は減る一方だ。
施設にいたというだけで連れ戻される可能性だって否定出来ない。

「俺は彼と一緒になりたいが、それを心よく思わない連中がごまんといるということだ。」
彼と蒼紫が一緒になる事でどんな不都合があるかはわからない。
国、それに準ずる組織から目をつけられる恐れるだってある。
それでも、サイガの気持ちは決まっていた。
「一枚噛ませろ。」
「それがなにを意味するのかわかってるのか?」
「オメガ全体が搾取対象になり得る可能性があるなら、ゆいだって対象になる。」

「彼がという事で、オメガ全体ではない。お前が思ってる事にはならないとおもうが」
「たとえそうだとしても不利になるような可能性は潰しておきたいっていうのが、俺たちアルファだろう。」

悪そうな顔でにっと笑う悪友を巻き込む事に罪悪感は、蒼紫にはない。
それを引き出す為にわざと誤解を招く言い回しをしたのだから。
「分かった、じゃあとりあえず」
サイガは告げられた蒼紫の要求に目を丸くするが、心よく応じた。

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感想 22

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